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平野流佳&清水さらが銀、戸塚優斗&小野光希が銅メダル獲得。世界選手権ハーフパイプ詳報
2025.03.30
スイス・エンガディンで開催されているFIS(国際スキー・スノーボード連盟)世界選手権ハーフパイプが行われ、男子は平野流佳が銀、戸塚優斗が銅メダルを獲得。女子も清水さらが銀、小野光希が銅メダルを獲得し、公式練習中のケガにより棄権した北京五輪金メダリストの平野歩夢は不在だったものの、ハーフパイプ大国・日本の強さを世界中に知らしめた。
決勝当日は降雪などの影響により2時間遅れてスタート。ひとり2本のランを行い、どちらかのベストポイントで争われた。先に始まった女子1本目、さらはBS900ウェドル→FS720インディ→CAB720ウェドル→FS900テール→BSコーク540インディを決めて90.75ポイントを記録。両サイドでの900に加え、すべてのヒットでエアの高さを生み出し、グラブの確実性、そして美しいスタイルが高評価を得たのだろう。弱冠15歳ながら、堂々たるライディングを披露した。
光希は2本目、FS900テール→BS540ウェドル→FS720インディ→CAB900スイッチメロン→スイッチBS540ウェドルを決めて1本目の自身のポイントを更新し、88.5ポイントを獲得。今シーズン、よりクリエイティブな滑りが求められているという意識を持ち、CAB900からスイッチBSスピンというスイッチスタンスでの連続技にこだわってきただけに、それをクリーンに決められたことが来シーズンへの弾みになったはずだ。
優勝は、五輪ハーフパイプ2連覇中の女王、クロエ・キム(アメリカ)。1本目のファーストヒットから女性スノーボーダーではクロエにしか操れないCABダブルコーク1080ステイルフィッシュを決めると、FS900テール→BS900ウェドル→FS720インディ→CAB1080ステイルフィッシュを成功させて93.5ポイント。ケチをつけるとしたら、BS900がワンローテーションで回し切れていないため、ウェドルグラブが短かったことくらいか。やはり、女王は強かった。
さらと光希以外で決勝にコマを進めた工藤璃星は4位、冨田せなは5位と、2〜5位の上位を日本人が占める結果に。FIS大会ではオリンピックに次ぐ世界選手権でのこの結果は、日本人スノーボーダーとして誇りに感じられる。
男子は、上位3人全員が1本目のスコアを上回ったうえでの激戦となった。予選3位だったスコッティ・ジェームス(オーストラリア)が流佳と優斗よりも先の出走となり、スイッチマックツイスト・ジャパン→CABダブルコーク1080ウェドル→FSダブルコーク1260ステイルフィッシュ→BSダブルコーク1080ステイルフィッシュ→スイッチBSダブルコーク1080ウェドルという独創性の高いルーティンを披露し、95ポイントを獲得。このまま逃げ切った格好で、金メダルを手繰り寄せた。
予選2位だった流佳の出走はスコッティの次なので、スタート地点で待機していた。その滑りを目の前で見ていた流佳は、拍手喝采。今シーズン行われたワールドカップで彼は、すべてのライダーたちがベストランを出したうえで勝たないと意味がない、という趣旨の発言をしていたのだが、まさしくその心境だったに違いない。いつものようにスイッチスタンスでドロップインすると、流佳のシグネチャートリックであるスイッチBS1080ジャパンからルーティンをスタートさせ、BS900ウェドル→FSダブルコーク1440インディ→CABダブルコーク1440ウェドル→FSダブルコーク1260インディにつなぎ、92.25ポイントをマーク。スコッティには届かなかったが、親友でありライバルの同級生、優斗のポイントを上回り2位につけた。
97ポイントというハイスコアで予選をトップ通過していた優斗が最終走者となり、スイッチBSダブルコーク1260ウェドル→CABダブルコーク1440ウェドル→FSダブルコーク1260インディ→BS900ウェドル→FSダブルコーク1440インディというルーティンに成功。優斗らしい、高難度スピンを異なる回転方向でルーティンに入れ込むバランスのとれた滑りで逆転を狙った。しかしポイントは92となり、流佳にわずか0.5及ばず3位でフィニッシュ。この瞬間にメダルの色が決定した。
降雪の影響によりスピードが出なかったためか、上位3人ともトリプルコークを封印する形で幕を下ろした世界選手権ハーフパイプ決勝。マックツイスト1080などを含む奇想天外なルーティンが武器の山田琉聖も決勝進出を果たしていたが、2本とも決めることができず15位で終わった。
冒頭で本大会を棄権した歩夢について言及したが、左肋骨の骨折がその理由だ。今大会の決勝が行われている最中に自身のSNSを更新し、ケガをしたときの衝撃映像を公開。「段差でやっちゃいました」とは本人から聞いていたのだが、トランジションでその段差に引っかかってしまい、左腕を巻き込むようにして硬いハーフパイプのボトムに叩きつけられる危険な転倒だった。「早く雪上に戻れるよう治療とリハビリに集中します」とコメントを残しているだけに、歩夢の早期回復を祈りたい。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
女子結果
1位 クロエ・キム(アメリカ)
2位 清水さら(日本)
3位 小野光希(日本)
4位 工藤璃星(日本)
5位 冨田せな(日本)
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男子結果
1位 スコッティ・ジェームス(オーストラリア)
2位 平野流佳(日本)
3位 戸塚優斗(日本)
15位 山田琉聖(日本)
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