BACKSIDE (バックサイド)

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世界選手権ビッグエアで日本人5名が表彰台獲得の快挙。女子は心椛&麗楽&茉莉が独占。男子は椋真と帝勝がワンツーフィニッシュ

2025.03.29

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我が国は雪がなくても通年練習することができる人工芝を活用したジャンプ施設の先進国であり、初代にあたるのが、2020年に最後となった伝統の一戦「BURTON US OPEN」スロープスタイルを制した角野友基を輩出した神戸KINGSだ。その誕生が2003年。あれから20年あまりの歳月が流れ、語弊を恐れずに言えば、横乗りスポーツ以外も含めた全競技の中でも、特に日本人の強さが際立っているのがスノーボードのビッグエア競技だ。
 
その強さはスイス・エンガディンから改めて、世界中に発信された。2年に一度開催される、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)スノーボード世界選手権において、女子は村瀬心椛が金、岩渕麗楽が銀、深田茉莉が銅メダルを獲得。男子は木俣椋真が金、長谷川帝勝が銀メダルを獲得し、日本人ライダー5人が表彰台に上がったのだ。
 
ひとり3本のランを行い、回転数の異なるベスト2本の合計点で争われる、FISではおなじみのルール。優勝した心椛は3本目を必要とせずに、2本のジャンプで優勝を決めた。1本目からスピンの途中に前足をポークさせ、グラブしていない右手を天高くしっかりとかざす、超絶スタイリッシュなスイッチインディを繰り出しながらCAB1260に成功。メンズライダーでもここまでスタイリッシュに3.5回転を操れるライダーは少ないのかもしれない。85.75ポイントを獲得した。
 
続く2本目も、左手でノーズをしっかりとつかみ、思いきり背中方向へ右手を開きながらかざすという表現力を重視したBS1080をクリーンにメイク。76.75ポイントを記録し、計162.5ポイントとした。男女ともにスピンの回転数は年々増え続けているが、「ニーグラブ」という言葉が存在するようになったのも近年の話。ニーグラブとは、グラブしていない手でヒザを抱え込むアクションのことで、より身体を縮めて空気抵抗を少なくすることで、回転数を増やしやすくしているのだろう。それほどまで限界に近いレベルで高回転スピンを繰り出すライダーが多い中、心椛は1440を操るなど高回転時代を牽引しながらも、そこに表現力を加えながらライディングスタイルを重視したうえで戦っているのだ。
 
銀メダルを獲得した麗楽は、1本目にBS1260メロンで83ポイント、2本目にFS1080ウェドル・トゥ・テールを決めて73ポイントをマークし、合計156ポイント。3本目はDNI(Did Not Improve: 得点を更新できなかった)となり、心椛にはトータルで6.5ポイント及ばなかった。両者ともに、回転方向とグラブは異なるものの1260と1080を放ったわけだが、先述したように表現力の部分で心椛が勝った格好だろう。
 
3位の茉莉は1本目、BS1080ジャパンを決めて78ポイント。これは、心椛の2本目のBS1080ノーズを超える高評価を得ている。2、3本目は、得手不得手はあれど4方向でもっとも難しいとされているスイッチBSスピンで勝負に出た。高回転スピンになると、リップからテールが抜けきる前に回転方向へずらしてしまう、いわゆる“早抜け”になりやすいにもかかわらず、スイッチのテールをしっかりとリップに残した状態でオーリーして踏み切っているため、スイッチBSスピンとは思えないほど大きな放物線を描いた。スイッチBS1080トラックドライバーを見事に決めたのだが、ポイントは75.25と想定よりも伸びず。しかし、6位から3位へとジャンプアップした。

今大会の決勝に名を連ねていたゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)とアニカ・モーガン(ドイツ)は欠場となったため6名で争われていたのだが、4位には鈴木萌々が入った。メンズライクなスリービースタイルでクールさと強さを兼ね備えるミア・ブルックス(イギリス)、そして、五輪ビッグエアで2連覇中のアンナ・ガッサー(オーストリア)を従えて、1から4位までを日本人が独占したということだ。
 
男子は、まずは帝勝が2本目にCAB1800インディで87ポイントを、3本目にFS1800インディを決めて87.5ポイントを獲得し、トータル174.5ポイントでトップに躍り出る。FISのルールにはないが世界最高峰の大会のひとつ「X GAMES」では以前まで、右回り(レギュラーのBSとCAB)と左回り(レギュラーのFSとスイッチBS)で回転方向を分け、それぞれの回転方向から1種のスピンしかポイントに採用されない。それはスノーボーダーの特性上、右回りと左回りのどちらかの回転方向が得意な傾向が強いからだ。そのうえで、帝勝は、右回りと左回りでどちらもフロントサイド方向へ5回転しながら後ろ手でトウサイドをつかみ、前足をポークするという、まるでミラーに映し出したかのような2トリックを決めたのだ。
 
椋真は1本目にFS1800ダブルテールを決めて81.75ポイントをマークし、2本目にBS1980メロンにトライして失敗。顔面を強打する激しい転倒で流血する中、後がなくなった3本目。痛みはもちろん、大きなプレッシャーをはねのけ、同トリックを完璧に決めて今大会最高ポイントとなる95ポイントをたたき出した。計176.75ポイントとし、帝勝をわずか2.25ポイント上回り大逆転を果たしたのだ。世界選手権ビッグエアの頂点に立ち、Ryoma Kimataの名が世界中に知れ渡った瞬間だ。
 
3位にはBS1800インディとFSトリプルコーク1800ウェドルをそろえたオリバー・マーティン(アメリカ)が食い込んだ。椋真と帝勝以外で決勝進出を果たしていた日本人ライダーの結果は、宮村結斗が5位、荻原大翔が10位に終わった。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

 
女子結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 岩渕麗楽(日本)
3位 深田茉莉(日本)
4位 鈴木萌々(日本)
5位 ミア・ブルックス(イギリス)
6位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
7位 ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)
8位 アニカ・モーガン(ドイツ)
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男子結果
1位 木俣椋真(日本)
2位 長谷川帝勝(日本)
3位 オリバー・マーティン(アメリカ)
4位 ロメイン・アルマンド(フランス)
5位 宮村結斗(日本)
6位 エンゾ・ヴァラックス(フランス)
7位 イアン・マッテオリ(イタリア)
8位 ヤン・ウェンロン(中国)
9位 モンス・ロイズランド(ノルウェー)
10位 荻原大翔(日本)
11位 木村葵来(日本)
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