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世界初の大技「トリプルムースフリップ」ってナンダ? 日本人4名が表彰台を射止めたW杯ビッグエア最終戦
2025.02.07
米コロラド州アスペンで行われたFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)ビッグエアが幕を下ろし、日本人ライダーは長谷川帝勝が2位、宮村結斗が初のW杯表彰台となる3位を獲得。女子は村瀬心椛が2位、新星の鈴木萌々が3位となり、4名が表彰台を射止める素晴らしい結果を残した。
その中身がすごかった。決勝が始まった時点で気温が17℃と、2月上旬としては異例のアスペン。言うまでもなくアプローチからランディングにかけて雪が緩み、バーンは荒れた状態。アプローチではエッジがとられ、バンピーなランディングに合わせなければならないという、とても危険なコンディションだった。
そうした中、ファイナルはひとり3本のジャンプを行い、女子は回転数の異なる2本の合算、男子は左回り(レギュラーのFSとスイッチBS、グーフィーのBSとCAB)と右回り(レギュラーのBSとCAB、グーフィーのFSとスイッチBS)の合計得点で争われるおなじみのルール。まずは男子優勝を飾った17歳、カナダのエリ・ブシャールが操る奇想天外なトリックについて触れたい。
エリは予選を1位で勝ち上がったトリックをファイナル2本目で放った。初見では何がどうなっているのかまったくわからないほど複雑な、その名も「トリプルムースフリップ」に成功。どうやら3つのトリックを融合させているようで、BS方向にコークよりも縦軸を強く回す3Dスピン、ミスティフリップの回転軸で2ロールさせている途中にグラブを離して伸身にすることで回転をリセットし、エアのピークにいる状態ですかさずFS180でスタンスをスイッチ。そこから間髪入れずにスイッチクリップラーを入れる動きだ。このポイントと1本目に決めたBS1800ノーズの合計得点で、2本目を終えた時点でエリがトップにつけた。
ラストランは2本目までの合計得点の下位からのスタートとなるため、エリは最終滑走。その直前にスタートするのは、必勝トリックであるCAB1800スイッチインディとFS1800インディを決めていた帝勝だ。帝勝が逆転を狙って放ったFS1980インディは大きな放物線を描き、パーフェクトストンプ。クールな彼が渾身のガッツポーズを見せるほど完璧だった。ポイントは95ポイントを叩き出し、見事逆転。誰もが帝勝の優勝を確信した瞬間だったに違いない。
それを目の前で見ていたエリは不敵な笑みを浮かべながらスタート台に立ち、焦る様子もなくドロップイン。本大会をライブ配信しているJ SPORTSで解説を務めさせていただいていた筆者は、さすがに諦めの表情だと受け止めていた。しかし、エリが放ったBS1980ノーズは、まさか初成功だったとは思えないほどクリーンにメイク。96ポイントを記録して大逆転を果たし、エリのW杯初優勝が決まったのだ。今シーズンから本格的にW杯に参戦し始めたばかりだが、帝勝や今大会では振るわなかったものの「X GAMES」で世界初のBS2340(6.5回転)を決めた荻原大翔ら、2005年生まれの世代が主役になると目されていたミラノ・コルティナ五輪の1年前に、2007年生まれのエリが彗星のごとく現れた。
3位の結斗は1本目にBS1800メロン、3本目にFS1620インディをクリーンに決めた。これまでSNOW JAPANの仲間たちが数々のメダルを獲得しているのを横目に虎視眈々と狙っていただけに、感慨もひとしおだったことだろう。
女子はゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)と心椛の一騎打ち。1本目にゾーイは特大のスイッチBS1260インディを決めると、心椛はCABトリプルコーク1260ウェドルで後ろ足をポークさせ、高回転スピンとは思えないほど超絶スタイリッシュな演技を披露。2本目はともにBSダブルコーク1080で、グラブはゾーイがトラックドライバー、心椛がウェドルを入れて決め、合計得点でわずか2ポイント、ゾーイが上回った。
2度目の表彰台となった萌々は、FS1080メロンとBS1080メロンを揃えての3位。どちらのジャンプも高さ、飛距離とも申し分なかった。今後のさらなる飛躍に期待したい。
ビッグエアは今大会が最終戦だったため、総合優勝者に贈られるクリスタルグローブも決定。男子は長谷川帝勝、女子はミア・ブルックス(イギリス)が栄冠に輝いた。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: FIS SNOWBOARD
男子結果
1位 エリ・ブシャール(カナダ)
2位 長谷川帝勝(日本)
3位 宮村結斗(日本)
9位 木村葵来(日本)
17位 木俣椋真(日本)
25位 飛田流輝(日本)
44位 荻原大翔(日本)
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女子結果
1位 ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)
2位 村瀬心椛(日本)
3位 鈴木萌々(日本)
7位 深田茉莉(日本)
8位 鬼塚 雅(日本)
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