BACKSIDE (バックサイド)

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トップライダーたちのスタイルバトルに魅了された多くの若者たちが社会貢献「東京雪祭SNOWBANK PAY IT FORWARD」

2024.12.04

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東京・渋谷の代々木公園では毎年11月に、雪が降る2日間がある。まだ本格的なシーズンインとはならないこの時期だからこそ、日本中から血気盛んなスノーボーダーたちがこの日を目がけて都市部に集い、「楽しいから始まる社会貢献」を体現すべく、観衆にアツいライディングを披露する2日間だ。

100万にひとりの難病を患い、骨髄移植により命を救われたスノーボーダー、DAZEこと荒井善正が主催する「東京雪祭SNOWBANK PAY IT FORWARD(以下、SBPIF)」が今年も開催された。その狙いは横乗りの楽しさを通じて、普段献血ルームに足を運ばない若者を集結させ、献血と骨髄バンクについて知ってもらい、行動するキッカケを作ること。今年度も会場に集まった人々へその想いは届き、11月9、10日の2日間で献血実施人数が463名、骨髄ドナーへの登録者も100名という結果となった。これは過去最高となった2022年度開催時(献血実施数471名/骨髄ドナー登録数102名)に肉薄する数字である。

骨髄バンクへのドナー登録は献血と違い、18歳以上54歳以下の間に一度データベース上に登録すれば、再登録の必要はない。SBPIFは14回目の開催となったわけだが、第1回から開催場所は毎年、代々木公園である。開催場所は変わらないのにドナー登録数が増えているということは、毎年新しい人がこの場に訪れて、ドナー登録を行っているということ。DAZEも楽しむための仕掛けをアップデートし続けることに余念がなく、一例として今年は「SNOWBANK COIN」を導入。来場者はこのコインを通じて、会場内でのフード購入やアクティビティへの参加を楽しむというわけだ。会場には外国人観光客や家族連れまでもがみなで楽しめるように、音楽ライブやアート、フードに至るまで多岐に渡るコンテンツが用意されている。本記事ではSBPIFの目玉イベントであり、スノーボーダーにとってはシーズン開幕の風物詩「JIB STYLE BATTLE」の模様をお届けする。

1日目は一般応募のスノーボーダーたちによる予選が行われ、男女それぞれ上位3人とキッズ部門の優勝者は、2日目の本戦に挑む権利が与えられる。本戦はコンペティションを主戦場に世界と戦う競技者からストリートに生きる表現者たちまで、実力者が揃い踏みとなるため、下剋上を果たすにはもってこいのイベントである。男子ではスケートライクなスタイルで観客を沸かせた小沼悠と、昨年度予選を1位通過していた松岡秀樹の2名が本戦決勝までコマを進め、存在感を放っていた。

 

小沼が決勝で放ったスタイリッシュなBSリップスライド

 

DAZEはイベント中、「これは大会ではなくセッション。出場ライダーのみなさんは、思いっきり楽しんで盛り上げてください! それが何よりの貢献になります」と語っていた。彼の目論見どおり、2日目の本戦ではライダーみなが自身のスタイルにこだわったライディングを披露し、会場全体が大いに盛り上がることとなった。

小雨が散らつくコンディションで始まった女子本戦。特筆すべきは坂本妃菜乃と花田雫のデッドヒートだろう。まずは坂本がリードする形で決勝の幕が上がった。中央のシングルレールにてFSノーズスライド270プレッツェルオフやBSリップスライド270オフをメイクし、後続のライダーにプレッシャーをかける。しかし、午前中に行われた予選で6本すべてのランを成功させるという脅威的なメイク率を誇った花田が、そこに追随する。決勝2本目からダブルダウンレールでBSボードスライド270プレッツェルオフをメイクし、4本目には中央のシングルレールで完璧なFS180オン・スイッチBS360オフも決めた。坂本を追いかける形となった。

勝負が分かれたのは残り時間もわずかになった最終滑走、花田がBSボードスライドからポップしてFSボードスライドの形へ乗せ替えるトリックを、またもダブルダウンレールにて披露し、優勝を確実なものにしたのだ。ふたりに並んで3位となった高森日葵はメイク率こそ伸び悩んだものの、終始攻めの姿勢を崩さず、SBPIFの勝ちパターンでもある両側のダブルダウンの攻略に成功。テールにすべての重心を預けたスタイル抜群のBSボードスライド270オフには、観客からひと際大きい歓声が上がっていた。

 

花田が自身の最終滑走で押し込んだ、BSボードスライド→FSボードスライドの形への乗せ替えトリック

 

坂本が見せたFSノーズスライド270プレッツェルオフ

 

高森は最後までスタイルにこだわった。BSボードスライド270オフ

 

本戦のジャッジを務めた石川敦士、田栗賢治、関功の3名いわく、男子の1位と2位が非常に悩ましかったとのこと。玄人を唸らせるようなトリックが頻出していた男子本戦は、例年どおりの大混戦となった。まず口火を切ったのは岡嶋大空。予選の最終ランをBSリップスライド450オフで締めくくっていた彼は、決勝1本目で同トリックをさらにブラッシュアップし、お手つきなしのパーフェクトな演技を見せた。続くオリンピアン・濱田海人もライダーズライトのダブルダウンでのFS180オン・スイッチノーズマニュアル・スイッチノーリーBS180オフを魅せ、追随する。さらに、スタンスとマニュアルは違うものの同じ動きを反転させたような形となる、CAB180オン・テールマニュアル・BS180オフを逆側のダブルダウンで立て続けにメイク。両側のダブルダウンを両方のスタンスで攻略するあたり、彼のトリックバリエーションの豊かさが垣間見える。

中盤はこれまでの激しい着地や転倒のため、ランディングがかなり荒れてきており小康状態となったが、またも濱田が流れを作る。5本目にハードウェイ・スイッチBS180オン・FS360オフをメイクすると、さらにFSボードスライドから乗せ替えてBSボードスライドの形にし、そこから270オフで返すお得意のトリックも完璧にメイクし、計4本の独創的なトリックチョイスで優勝をもぎとったのだった。岡嶋は中盤、ハードウェイのBS180オンが上手くハマらず万事休すだったのだが、8本目にして同トリックをCAB360オフまで添えてパーフェクトに披露。周囲のクールな動きに触発されたのだろうか、3位となった長羅文晄もその後の自身の最終滑走でCAB270オンからBSボードスライドに乗せ替え、270オフを返すという妙技で応戦した。

 

この技を放ったのは2日間通して濱田だけ。FS180オン・スイッチノーズマニュアル・スイッチノーリーBS180オフ

 

岡嶋のBSリップスライド450オフ。リップスライドの形からオフ時の返し方まで、非の打ち所がないスタイルを決勝1本目で披露した

 

長羅が最後に決め切ったCAB270オン・BSボードスライド・270オフ

 

また、ジャッジ時間内の最終滑走者となった鈴木冬生は、土壇場でダブルダウンへのCAB270オン・フェイキーオフをコスり切り歓声を浴びていたのだが、ここで終わらないのがジャムセッションの見どころでもある。ジャッジ時間外に突入したが、すでにスタート位置についていた長澤颯飛が反対側のダブルダウンで、FS270オン・フェイキーオフをメイク。続けて濱田もBSリップスライドから始まる脅威的な乗せ替えトリックをメイクするなど、出場ライダーたちがお互いの健闘をたたえあう格好で、JIB STYLE BATTLEは幕を閉じたのだった。

 

SBPIFの締めくくりとなった鈴木のCAB270オン

 

ジャッジ時間外まで会場を盛り上げ続けた長澤。直後、濱田と抱き合ってお互いの健闘をたたえあうシーンが印象的だった

 

決勝進出を果たしたライダーはみな、本格的なシーズンが始まれば世界中のフィールドに散ってしまうようなトップライダーたち。彼らの白熱したバトルが観客を集め、それが社会貢献につながっているわけだ。いかにもストリート育ちな出立ちの若者が献血ブースに並んでいる姿は、SBPIFならでは。素晴らしいライディングを披露してくれたすべてのライダーたちへ、拍手を送りたい。
 

 

 
男子結果
1位 濱田海人
2位 岡嶋大空
3位 長羅文晄
 
女子結果
1位 花田 雫
2位 坂本妃菜乃
3位 高森日葵

photos: Yoshiro Higai, Ryo Hiwatashi

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