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エルニーニョ発生時でも暖冬とはかぎらない。寒冬になる理由を新発見
2024.06.03
九州大学の研究グループが、エルニーニョ現象の進行速度によって日本の冬が暖冬になるか寒冬になるかが決まることを発見したと、「大学ジャーナルオンライン」が5月末に発表した。スノーボーダーにとっても重要な解明結果だけに、本記事ではその中身に迫りたい。
エルニーニョ現象は赤道東部太平洋の海面水温が異常に高くなる現象で、世界中の天候に影響を与えることで知られている。日本ではエルニーニョが発生する年は暖冬になる傾向が強いとされているが、寒冬だった年もある。しかし、その理由は明らかにされていなかった。
今回の九州大学の研究は、大規模な数値シミュレーションを使って過去61年間の天候を100通り再現し、エルニーニョ現象が与える影響を詳細に解析したことで、次のことがわかった。エルニーニョ現象が早く進行し、持続時間が長い場合、日本は暖冬になりやすい。具体的には、赤道東部太平洋の海面水温が6月には基準値を超えており、翌年の2月まで高温が続くと、インド洋の海水温が上昇し、フィリピン沖の降水活動が抑えられる。よって、日本の南東沖に高気圧が形成され、偏西風が北に曲がることで、寒気が日本に流れ込みにくくなるため暖冬になると結論づけた。
また、エルニーニョ現象が遅く進行して持続時間が短いとき、日本は寒冬になりやすい。赤道東部太平洋の海面水温が11月に初めて基準値を超えると、インド洋の海水温上昇が小さく、フィリピン沖の降水活動の抑制も弱くなる。この結果、日本南東沖に高気圧が形成されず、北太平洋のアリューシャン低気圧が強まり、寒気が日本に流れ込みやすくなるため寒冬になるそうだ。
この研究結果により、エルニーニョが発生する年の冬の予測精度が向上し、3ヶ月予報などの長期予報にも役立つことが期待されている。スノーボード業界も恩恵にあずかる研究結果になるはずだ。
photo: Delphine Ducaruge