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まるでビデオパートのような偉大な滑り。地球最強ライダー決定戦「NATURAL SELECTION TOUR」最終章
2024.04.05
「(この素晴らしいコンディションは)魔法でも使ったのか」
カナダ・ブリティッシュコロンビア州にそびえ立つセルカーク山脈を越えるロジャーズ峠西側のセルカーク・タンジャーにて、地球最強スノーボーダー決定戦「NATURAL SELECTION TOUR」のファイナルが開催。レベルストークで行われた初戦を勝ち抜いた男子8名、女子4名が、標高1,600m付近に位置するアルパインボウル、通称「モスキートボウル」と呼ばれる決戦の舞台に立った。
男子の準々決勝から行われたのだが、その第1走者だったトースタイン・ホーグモ(ノルウェー)が1本目を滑り終えた直後、冒頭の言葉を発した。その後に登場するライダーたちも滑り終えると口を揃えて、「雪がめちゃくちゃよかった!」と興奮している様子。世界中の山々を滑り倒してきたトッププロたちにそこまで言わせるほどのコンディションのもと行われたのだが、実のところ、初戦を終えた翌日に開催されていた。数週間もの間、このストーリーはトップシークレットとされており、ようやく日本時間の4月5日深夜未明に解禁されたわけだ。
初戦のレベルストークは人工的に造られた地形に雪が降り積もり、トリックが仕掛けやすいロケーションだった。しかし、この会場はまさに手つかずの大自然そのまま。パウダースノーが敷き詰められたノール地形でオーリーを仕掛ける難しさを想像しながら、3時間あまりの熱戦をご覧いただきたい。今大会もRED BULL TVで放映されており、各対戦やポイントごとに早送りできるので効率よく観ることが可能だ。
NATURAL SELECTION TOURの特徴でもあるトーナメント方式で行われているため、準々決勝、準決勝、決勝へ展開していくほど面白くなるはずだが、バックカントリーフリースタイル頂上決戦の場合、一概にそうは言えない。今大会は前半がかなり面白い。男子の準々決勝は前出のトースタイン VS セージ・コッツェンバーグ(アメリカ)、オースティン・スウィーティン(アメリカ)VS マイキー・シサレリ(カナダ)、ジャレッド・エルストン(アメリカ)VS ニルズ・ミンドニッチ(カナダ)、トルゲイル・バーグレム(ノルウェー)VS トラビス・ライス(アメリカ)の4戦、女子の準決勝はヘイリー・ラングランド(アメリカ)VS マリオン・ハーティー(フランス)、ジェイミー・アンダーソン(アメリカ)VS マリー・ランド(アメリカ)の2戦となっている。こうした豪華な対戦カードを、フレッシュスノーの状態で観れるからだ。
タイトルに綴ったように、まるでビデオパートを観ているかのような錯覚にさえ陥る。先に女子の結果をお伝えしてしまうが、優勝したマリオンは、「私はコンテストに出ているのではなく、ビデオパートに出ているのよ」と語っていた。NATURAL SELECTION TOURは、“競技”と“表現”を絶妙に融合させた稀有なイベントなのだ。
男子の準決勝へコマを進めたのは、テクニカルかつスタイリッシュな総合滑走力が光ったトースタイン、スロープスタイル仕込みのテクニカルなスピントリックを武器に持つマイキー、常軌を逸したスイッチライディングでの走破力を披露したニルズ、そして、豪快さと繊細さを兼ね備えた上手さを誇るトラビスだ。トースタイン VS マイキー、ニルズ VS トラビス、どちらも甲乙つけがたい見応えあるバックカントリーフリースタイルバトルだった。
そして、初の決勝進出を果たしたマイキーとニルズは、両名ともにそれぞれの個性を遺憾なく発揮した。特大のCAB540からアーリーウープBS720につなげる高難度なラインを制するフリースタイルスキルで勝負に出たマイキー、そして、スイッチBS360やCAB360を組み込みトップ・トゥ・ボトムすべてをスイッチスタンスで駆け抜けたフリーライド力抜群のニルズ。軍配はマイキーに上がるのだが、正直、どちらのランが優勝でもおかしくなかった。準決勝に進んだ4人のうち、誰が勝っても納得いくほどハイレベルな熱戦となり、地球最強スノーボーダー決定戦は幕を下ろしたのだった。
優勝したマイキーとマリオンには、10万ドル(約1,512万円)を超えるRIVIANの新型電気自動車が贈られた。色違いの2台が用意されており、表彰式の会場に着陸する前にマリオンが「私は赤いクルマがほしい!」と言ってことで、マイキーに選択肢はなかったんだとか(笑)
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
男子結果
1位 マイキー・シサレリ(カナダ)
2位 ニルズ・ミンドニッチ(アメリカ)
3位 トラビス・ライス(アメリカ)
女子結果
1位 マリオン・ハーティー(フランス)
2位 マリー・ランド(アメリカ)
3位 ジェイミー・アンダーソン(アメリカ)