BACKSIDE (バックサイド)

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W杯スロープスタイル最終戦は岩渕麗楽が今季初優勝。2位に長谷川帝勝と村瀬心椛

2024.03.24

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FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)スロープスタイル最終戦がスイス・シルヴァプラーナで行われ、岩渕麗楽がビッグエアを含めて今季初優勝を飾った。麗楽に次いで村瀬心椛が2位、男子は長谷川帝勝が同じく2位に入った。
 
キッカーやジブセクションのみならず、ヒップやクォーターパイプが用意されたことで、より総合滑走力が問われるコースがセットアップされていた。悪天候が予想されていたため、予定よりも2時間前倒しで行われたファイナル。ひとり2本のランが許され、ベストポイントで争われた。
 
1本目でミスしていた麗楽は2本目、ダウンレールでFS270オン270オフを決めるとヒップでのスイッチBS540ステイルフィッシュへとつなぎ、3連キッカーではFSダブルアンダーフリップ900インディ→CAB900メロン→BSダブルコーク1080メロンを完璧に決めた。そして、続くクォーターパイプではFSメロン、最後のジブセクションではFS50-50・トゥ・FS180オフを決めるも、滑走直後は「ダメだぁ」とテレビカメラの前で吐露。クォーターパイプのアプローチで減速してしまい、エアの高さを生み出すことができなかったことを受けての発言だったのかどうかはわかりかねるが、ポイントを79.62として1本目でトップだった心椛を抜き去り、暫定1位に。結果として、このまま逃げ切った格好だ。
 
「シーズン最後のW杯で、再びこの場所で優勝することができて本当にうれしいです。自分の中では完璧と思えるランではなかったんですけど、難しいコースを攻略できたことは今後の弾みにしていきたいと思います」と、大会を終えたばかりの麗楽はコメントを残してくれた。すでに来シーズンを見据えている発言がほかにも目立っていたことからも、彼女の強さがうかがい知れる。
 
心椛は2本目、1本目でスイッチBS180を放っていた2セクション目のヒップで、男子でも720程度だったところ、なんとスイッチBS900をチョイス。しかし、着地に嫌われてしまい万事休す。最後のジブセクションでミスしていたが、FS900トラックドライバーやBSダブルコーク1080ウェドルなどを決めた1本目のポイントが採用され、2位でフィニッシュした。納得のいかないランで優勝した麗楽と、2本とも決めることができなかった心椛が、ビッグエア女王のアンナ・ガッサー(オーストリア)を従えてワンツーフィニッシュを飾ったのだった。
 
「今日は2位で、2本目を滑り切ることができず悔しかったんですけど、オーバーオールとスロープスタイルの総合で優勝できて、すごくうれしいです」とは心椛の大会直後のコメントだが、スロープスタイルの年間女王の証であるクリスタルグローブを手にし、さらに、フリースタイル競技の年間王者を決める「PARK & PIPE」でも頂点に輝いた。ビッグエアは2戦に出場し2勝、スロープスタイルは3戦のうち優勝1回と2度表彰台を射止めていただけに、文句なしの結果だ。
 
帝勝は1本目から会心のランを披露。ハードウェイFS270オン270オフからCAB1260ウェドルを成功させると、FS1440テール→BS1620ウェドル→スイッチBS1800インディをクリーンに決めた。続くクォーターパイプはレギュラーのフロントサイドウォールであり、帝勝にとってはスイッチスタンスでのバックサイドウォールへのアプローチとなるため、非常に難易度が高い。そこで彼がチョイスしたトリックは、スイッチメソッドだった。高回転スピンが続くルーティンだけに、メリハリが利いているように感じた。ラストのジブセクションはCAB270オン450オフとして、85.52ポイントをマーク。トップに躍り出た。
 
このまま帝勝が逃げ切るかと思いきや、スイス・ラークスで行われたスロープスタイル初戦を制したリアム・ブレアリー(カナダ)が魅せる。ダブルダウンレールをBSボードスライドからFSボードスライドに乗せ替えて完璧に抜き切ると、ヒップではFSダブルコーク900トラックドライバーを決め、3連キッカーへ。すると、スイッチBS1260ステイルフィッシュ→BS1620メロン→CAB1440ノーズでスイッチ着地してクォーターパイプに進入していくと、CAB720ステイルフィッシュ・トゥ・メロンの2グラブを美しくメイクし、最後のジブセクションはFS270オンをクリーンに決めた。88.1ポイントを叩き出して帝勝を抜き去り、トップに立ったのだ。クォーターパイプで帝勝は5.26ポイントだったところ、リアムは8.01ポイント。全体で2.85ポイント差があるわけだが、クォーターで2.75ポイントの差がついていた。このR系セクションが明暗を分ける結果に。
 
このリアムの滑りを受けて、再び頂点を狙う帝勝の2本目。1本目とルーティンを変えてきてセクション1のジブではダウンレールでスイッチBSリップスライドを繰り出すと、ヒップではCAB540と回転数を一気に落としてきた。この瞬間、帝勝は勝負していないということが理解できた。
 
「1本目で今の自分ができる最高のランを決めて、結局2本目で抜かれて2位になったんですけど、正直、あれ以上のランを自分は出すことができなかったので、2本目はスタイルを魅せるランをしました」
 
このように大会後に帝勝はコメントしてくれているのだが、リアムへのリスペクトを込めて、己を表現する滑りで今シーズンのW杯を締めくくった。
 
これにて、23-24シーズンのW杯は閉幕となる。2022年に北京五輪を終え、2026年にミラノ・コルティナ五輪が開催されるわけだが、オリンピックの開催から逆算した2シーズン前からW杯が本格化するのが通例だった。しかし、今シーズンはハーフパイプで平野歩夢が異例とも言える、五輪開催の3シーズン前から参戦。他国の強豪ライダーたちも積極的に出場していた。プロ大会が減ったことも一因だろうが、W杯がこれまで以上に盛り上がりをみせている。
 
ミラノ・コルティナ五輪へ向けて来シーズン、より熾烈なるバトルが展開されることは間違いない。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: FIS SNOWBOARDING

 
女子結果
1位 岩渕麗楽(日本)
2位 村瀬心椛(日本)
3位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
5位 鬼塚 雅(日本)
13位 深田茉莉(日本)
全結果はこちら
 
男子結果
1位 リアム・ブレアリー(カナダ)
2位 長谷川帝勝(日本)
3位 ヴァレンティノ・ギュゼリ(オーストラリア)
12位 荻原大翔(日本)
41位 木村葵来(日本)
45位 國武大晃(日本)
50位 木俣椋真(日本)
58位 宮村結斗(日本)
全結果はこちら

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