BACKSIDE (バックサイド)

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村瀬心椛と木俣椋真が優勝。日本人5名が表彰台に立つ快挙を遂げたW杯スロープスタイル

2024.03.16

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幾多の逆境を乗り越えて、日本人ライダーたちが大躍進した。FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)スロープスタイル第2戦はフランス・ティーニュで行われ、女子は表彰台を独占。優勝は村瀬心椛、2位に鬼塚雅、3位に岩渕麗楽という快挙を成し遂げたのだ。男子は木俣椋真が優勝、3位に長谷川帝勝が入った。
 
世界的に雪不足に見舞われる中、W杯スロープスタイルは、予定されていたアメリカ・カリフォルニア州マンモスマウンテン大会、そして、カナダ・アルバータ州カルガリー大会は悪天候などの影響も重なり、キャンセルとなっていた。当初は4戦目に予定されていたチェコ・スピンドレルフ大会は急遽、ティーニュに会場を移して開催。3月中旬とシーズンも終盤戦に突入しているが、まだ2戦目ということなのだ。
 
スロープスタイルに出場しているライダーたちは、スケジュールが過密だ。2023年内にビッグエア4戦を終え、年末年始を楽しむ余裕もないまま気持ちを切り替え、1月中旬のスイス・ラークス大会からスロープスタイルの初戦が始まる。そして、ライダーによっては「X GAMES」に招待され、SAJ(全日本スキー連盟)の全日本選手権大会などが組み込まれるため、スケジュール管理がとても重要だ。
 
今シーズンはそのスケジュールに振り回されてしまったが今大会、日本人の出場ライダー8名が全員ファイナルに進出。筆者は今大会もJ SPORTSのライブ放送で解説を務めさせていただいていたのだが、コースのセットアップを見て驚いた。ジャンプセクションが2連、ジブセクションが3連と続き、ラストヒットはジャンプで締めるという流れなのだが、最後のキッカーへのアプローチが右にカーブしているではないか。スノーボードは言うまでもなくレギュラーとグーフィーでスタンスが分かれるため、W杯に出場しているレベルのライダーはノーマルスタンス、スイッチスタンス、4方向の回転方向を巧みに使い分けるとはいえ、必ず得手不得手がつきまとう。会場が変更になった影響なのかはわかりかねるが、こうした状況下で行われた。
 
そうした中、ひとり2本のランを行いベストポイントで争われる。女子からスタートし、1本目は風の影響もあったようでクリーンなランは少なかったが2本目、まずは雅が魅せた。BS720ウェドル→FS900メロンで2連ジャンプを攻略すると、スイッチBSボードスライドからFSボードスライド270オフへのつなぎで完全に抜き切ることはできなかったが、ラストヒットで伝家の宝刀、CAB900ステイルフィッシュを決めて81.75ポイントをマーク。トップに躍り出た。
 
この直後、X GAMESスロープスタイル銀メダリストであり、ビッグエアでは3方向のトリプルコーク1440を操る無双状態の心椛が、勝負強さを発揮して素晴らしいランを披露。風やハードパックされた雪質という難しいコンディションをものともせず、ファーストジャンプはFS1080トラックドライバーから入りBS720ウェドルにつなげると、FSリップスライド270オフやスイッチBSボードスライド270ステイルフィッシュなど、誰よりも高難度かつスタイリッシュなトリックで5つのセクションを攻略し、ラストヒットはCABダブルコーク900ウェドルをクリーンに成功させ、文句なしの90ポイント。すかさず雅を逆転した。

予選を下位で通過したライダーから順に決勝は出走しているのだが、2本目の途中から天候が急変。大粒の雪が舞い始めた。予選を2位で通過していたアニカ・モーガン(ドイツ)が出走する頃には、おそらく湿雪だろう降雪が強まり、ゴーグル越しの視界がさえぎられるほど。トップ通過していた麗楽が出走するタイミングは、さらに悪化していた。
 
アイシーな雪面を粘るような湿雪が覆い、ボードは走らない状態。麗楽は思い切り加速させながら、ファーストヒットで見事なCAB900ステイルフィッシュを繰り出してBS720ウェドルへつなぐと、ラストヒットのジャンプに向けて失速が避けられない状況。彼女本来の実力よりもジブセクションでは難易度を落としたルーティンを組み逆転を狙うも、ゴーグルについた雪を拭いながらアプローチしたラストジャンプはスピードに乗り切れず、FS720インディ。右に曲がりながらアプローチしているので、トウサイドに乗って緩いフロントサイドターンを切りながらテイクオフの瞬間はヒールサイドに乗せているため、ラインどりとしてはヒールサイドに乗ったままCABスピンを仕掛けている心椛や雅よりも回転方向の難易度は高くなる。麗楽は1本目のラストヒットでFS1080を仕掛けていただけに、悔しい結果になってしまった。
 
そのままの流れで、間髪入れずに男子2本目が始まった。女子の状況を見ていて続行可能と判断したことに疑問を抱きながら見ていると、やはり、誰もまともに滑れない状態。2本目にドラマが生まれることはなく、1本目の結果がすべてとなった。
 
椋真は1本目から極上のルーティンを成功させていた。スイッチBS1260ステイルフィッシュからBS1620メロンと4回転半の大技をルーティンに組み込むと、スイッチBSボードスライドから前宙するように450回しながらロールオフしてノーマルスタンスに戻し、オーリーギャップからのFSリップスライド270プレッツェルオフ、キャノンレールではスイッチFSボードスライド810オフ、そしてラストジャンプはラインどりに逆らった回転方向をチョイスし、FS1440ダブルテールグラブをストンプ。ドライブしそうになったボードをしっかりと制御して、高難度ルーティンを完璧に成功させたのだ。ポイントは93.75として、このまま逃げ切った。

椋真は予選2位、そして、トップ通過していた帝勝が1本目の最終出走となる。椋真のランを見守った直後、BS1260メロン→CAB1440ノーズとつなげると、CAB270オン270オフやFSボードスライド810オフでキャノンレールを攻略し、ラストヒットはスイッチBSトリプルコーク1440インディとラインどりの流れに逆らったうえで、4方向でもっとも高難度とされるスイッチバックサイドスピンの4回転を披露。85ポイントとして、2本目での逆転を目論んでいた。
 
だが、先述したように、まともに滑ることが許されないほどのバッドコンディション。最終出走だった帝勝はファイナル進出者15人が全滅したのを見たうえでドロップインするも、諦める様子は画面越しからはまったく伝わってこない。思い切り腰を落とした状態で加速させながらアプローチし、この状況下にもかかわらずファーストジャンプはBS1260メロン、セカンドジャンプでCAB1440ノーズと、1本目と変わらず高難度スピンをそろえてきた。しかし、湿雪と格闘しながらのライディングは、いつもとは違うリズムだったのだろう。ジブセクションで転倒してしまい、万事休す。3位でのフィニッシュとなった。
 
こうして、日本人ライダー5名が表彰台を射止めるという素晴らしい結果となった。大会レポートの前にプロローグとしてお届けしたが、超多忙なスケジュールのもと、度重なるリスケにもコンディションを合わせ、さらに、風の影響や湿雪によりボードが走らないという難しいコンディションの中でのこの結果。日本人ライダーたちの上手さだけでなく、どのような状況下にもアジャストさせられる基礎力の高さ、そして、精神力の強さを垣間見ることができたW杯となった。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: FIS SNOWBOARD

 
女子結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 鬼塚 雅(日本)
3位 岩渕麗楽(日本)
全結果はこちら
 
男子結果
1位 木俣椋真(日本)
2位 ロメイン・アルマンド(フランス)
3位 長谷川帝勝(日本)
5位 荻原大翔(日本)
6位 宮村結斗(日本)
12位 國武大晃(日本)
全結果はこちら

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