BACKSIDE (バックサイド)

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異次元のジャンプを連発した村瀬心椛がビッグエアの歴史を大きく塗り替えてX GAMES金メダル獲得

2024.01.29

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村瀬心椛は現在、世界トップクラスの中でも2、3ステージ上のレベルにいると言える。今回は出場せずにメダルのプレゼンターとして活躍していた地球最強の女性ライダー、ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)が仮に出ていたとしても、この結果は変らなかったはずだ。心椛がスロープスタイルの銀、ナックルハックの金に続いて今大会ではふたつ目、X GAMES通算で3個目となる金メダルを手繰り寄せた。ひとつの大会で3個のメダルを獲得するのは、1997年からの歴史を誇るX GAMES史上、女性スノーボーダーとして初の快挙だ。

男子同様、30分のジャムセッションで5本のランが許され、最初1本目はトリックの難易度ではなく表現力、いわゆるスタイル勝負。残り4本で右回り(レギュラーのBSとCAB)と左回り(レギュラーのFSとスイッチBS)それぞれのベストポイントの合算で争われた。スタイルは10点、右回りと左回りは各45ポイントずつとなるので、トータル100ポイントとなる。

心椛の全ランを紹介しよう。1本目から格の違いを魅せつけた。ステイルフィッシュしながらFS450までわざとオーバーローテーションさせたうえで90リバートさせるという、心椛ファンなら彼女のInstagramでチェックしていたことだろう。超絶スタイリッシュなFS360を放つと、満点となる10ポイントを獲得した。

2本目以降も異次元レベルだった。前足をポークしながらメンズライクなFS1080インディ(左回り)で32ポイントをマークすると、続く3本目。同じくコロラドに位置するカッパーマウンテンで昨年末に行われたワールドカップ(以下、W杯)において、コンテスト史上初成功となったBSトリプルコーク1440ウェドル(右回り)をX GAMESの舞台でも完璧に決め、ほぼ満点となる43ポイントをマーク。計85ポイントとして、この時点で金メダルはほぼ手中に収めている流れだった。

だが、ここからさらに、心椛が世界中のスノーボーダーたちに衝撃を与える。先述のW杯で、彼女はCABトリプルコーク1440スイッチインディを放っていたことは記憶に新しい。言うまでもなく、このトリックも大会史上初成功だった。W杯を主催するFIS(国際スキー・スノーボード連盟)とはルールが異なり、今大会ではBSスピンとCABスピンは同じく右回りとなるため、どちらかのポイントしか採用されないという厳しい条件下で行われていた。なので、ここまでで心椛のベストトリックは出尽くしていると思っていたうえで放たれた4本目。なんと、FSトリプルコーク1440インディ(左回り)をメイクしたのだ。ややオーバーローテーションでヒールサイドで着地したため完璧とはいかなかったが、それでも41ポイントを叩き出した。またもコンテスト史上初となる超大技を、心椛が決めたのだった。

トータルポイントを94として、最終ランはどうするのか。FSトリプルコーク1440の完成度を高めてくるのだろうと固唾を呑んで見守っていると、筆者の想像をはるかに超える常軌を逸したトリックを選択。まさかのBSトリプルコーク1620ウェドル(右回り)だ。コンテスト史上初となる4.5回転スピンが、世界中のスノーボーダーがもっとも注目している大舞台、X GAMESで放たれたのだ。転倒はしたものの、あと一歩で完成というところまで到達しているクオリティの高さだった。

数々のコンテストを執筆してきたが、ここまで優勝したライダーに対して綴ったことはないのかもしれない。それほどまでの“心椛劇場”だった。ここからは銀メダリストに輝いた岩渕麗楽について触れていきたい。1本目のスタイルジャッジではBS360ステイルフィッシュで6ポイントを獲得すると、2本目で伝家の宝刀であるFSトリプルアンダーフリップ1260インディ(左回り)で40ポイントをマーク。3本目でBS1260の着地に嫌われると、4本目はBS1080メロン(右回り)と難易度を下げて29ポイントとして、この時点で76ポイントで2位につけた。さすが、麗楽は試合巧者だ。

そして、最後の5本目は3本目で失敗していたBS1260で勝負に出ると誰もが思っていたことだろう。だが、麗楽は世界中のスノーボーダーたちの期待をいい意味で裏切り、BS1440を放ったのだ。転倒はしたものの、ライバルであり親友の心椛に負けじと、4回転スピンの扉をこじ開けたのだった。

もうひとりの日本人、鬼塚雅はCAB1260で勝負に挑むも3本連続転倒。スタイルジャッジでもミスしていたため、この時点で戦線離脱となった。

今大会のスロープスタイルで金メダルを獲得するなど大きな期待が寄せられていたミア・ブルックス(イギリス)は、女性コンテスト史上初の4回転スピンを成功させた張本人。しかもビッグエアではなく、スロープスタイルでCAB1440を成功させていた。2本目でCAB1260ステイルフィッシュ(左回り)を決めたのちに同トリックに挑むも、初出場となったX GAMESで成功することはできなかった。

銅メダルを獲得したアンナ・ガッサー(オーストリア)が心配だ。スタイルジャッジで9ポイント、彼女の十八番であるCABトリプルアンダーフリップ1260インディ(右回り)で39ポイントの計48ポイントだったため、左回りでの高得点が必要だ。ビッグエア女王として心椛に負けられない。

4本目にアンナがチョイスしたトリックは、麗楽の持ち技であるFSトリプルアンダーフリップ1260だった。着地がスイッチになるため、CABスピンよりもリスクが高いわけだが、アンナの放ったトリプルアンダーフリップは回転が90ほど足りずにトウサイドから雪面をとらえてしまし、逆エッジの状態でアイシーなバーンに叩きつけられてしまったのだ。メダルセレモニーに顔を出していたので大事には至らなかったのだろう。

ナイトイベントのためこうしたハイリスクがつきまとう状況の中、心椛は異次元のトリックを連発して金メダルを手中に収めた。今大会で成功したBSトリプルコーク1440とFSトリプルコーク1440、そして、先述したW杯で決めたCABトリプルコーク1440の3種を世界で初めて成功させたということだ。紛れもなく、ビッグエアの新女王に君臨した瞬間だった。
 

 
女子ビッグエア結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 岩渕麗楽(日本)
3位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
8位 鬼塚 雅(日本)

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photo: X GAMES

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