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村瀬心椛が「X GAMES」初の女子ナックルハックで6年ぶりとなる悲願の金メダル獲得
2024.01.28
米コロラド州アスペンで開催されている世界最高峰の一戦、招待ライダーのみが参戦できる「X GAMES」は2日目を迎え、大会史上初となる女子ナックルハックが行われた。男子では2019年大会から採用されているのだが、改めてコンテストの概要を説明しておこう。
ビッグエアのジャンプ台を利用するのだが、キックは使わない。キックを設置している土台のフラットになっているテーブル部分を滑走し、ランディングバーンにかけて急激に斜度をつけているポイントをナックルと呼ぶのだが、その斜度変化を利用してトリックを繰り出すというもの。テイクオフのキッカケを生み出すことが難しいため、トリックを仕掛けづらいということは想像に難くないはずだ。だからかなのか、これまでは男子のみで行われてきた。
しかし、近年の女性ライダーたちのレベルアップを踏まえたうえで、満を持して今大会から女子ナックルハックがX GAMESデビュー。世界一過激でクリエイティブな大会として知られる「DIYX STRT JAM」を主宰しているイーサン・モーガンを兄に持つアニカ・モーガン(ドイツ)や、そのDIYXに出場してベストトリック賞を獲得したイーガン・ウィント(アメリカ)、ワールドカップのビッグエアではファイナルの常連であるジャスミン・ベアード(カナダ)ら6名のクリエイティブライダーたちが参戦する中、見事、村瀬心椛が大逆転優勝を飾り、初代女王に輝いた。
20分間のジャムセッションで行われ、結果としてひとり5本のランが許された。ベストポイントではなくオーバーオールジャッジング、全体の総合点で争われる。心椛は1本目、挨拶代わりとばかりにナックルのギリギリまでテイクオフを我慢して放ったBS360は、ランディングからフラットに切り替わる直前までの巨大エア。1本目で3位につけると、2本目はスタイリッシュなメソッド・トゥイーク。心椛はオーリーのスキルが高いのだろう。ここまで見ているかぎり、ほかのライダーたちよりも圧倒的にエアが大きい。
3本目はFS360インディ、4本目はBS180メロンと、ここまですべてメイク。最終走者だったため、5本目のラストランはコンテストの大トリでもある。この時点で3位。何を繰り出すのかと固唾を呑んで見守っていると、大きなフロントサイドターンを描きながら後ろ手を雪面につき、トウサイドに思い切り倒しながらアプローチしてきた。すると、テイクオフした直後に前手をハンドドラッグさせてBS540を繰り出し、完璧にストンプ。これまで6人のライダーにより29個のトリックが披露されてきたが、それらを圧倒するものだった。大逆転で金メダルを獲得したのだ。
最後の最後までトップにつけていたアニカは心椛のもとに駆け寄り、逆転されたにもかかわらず自分事のように喜びながら抱き合って喜んでいるシーンは、勝敗だけでは決して語ることができない横乗りスポーツの素晴らしさを感じることができた。
心椛は自身のSNSに、「最初で最後の金メダルを13歳で手にしているので、6年ぶりです。長い道のりでした」と、笑顔とハートの絵文字を交えてポストしている。ただただひたむきに滑り込み、BSダブルコーク1260を世界で初めて成功させたあどけない少女時代から、勝ちにこだわったうえで滑りの表現力やクールさにも妥協しないうえでX GAMESの金メダリストに返り咲いた心椛。大会3日目に行われるビッグエアも大いに期待できそうだ。
女子ナックルハック結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 アニカ・モーガン(ドイツ)
3位 イーガン・ウィント(アメリカ)
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)