BACKSIDE (バックサイド)

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女子ビッグエア史上初のトリプルコーク3種を全ランで決めた村瀬心椛が圧勝。男子は國武大晃がW杯初V

2023.12.16

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2023年12月16日、米コロラド州カッパーマウンテンで行われていたFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)にて、女子ビッグエアの歴史が塗り替わった。ひとり3本のジャンプを行い、回転方向の異なるベスト2本の合算で争われるルールはおなじみだが、その3本すべてで女子ビッグエア史上初となるトリプルコークの超大技を村瀬心椛が決めたのだ。言うまでもなく圧勝。その中身をお届けする。
 
1本目、予選で繰り出していたCABトリプルコーク1260ウェドルをメイクすると、いきなり97.25ポイントというハイスコアをマーク。アンナ・ガッサー(オーストリア)はCAB1260をアンダーフリップやダブルコークで操るが、トリプルコークで成功させたのは心椛が初である。
 
続く2本目、今年9月にニュージーランド・カードローナで決めた女性初となるBSトリプルコーク1440ウェドルを、コンテストで初披露。完璧に成功させたのだ。当然だが、女子ビッグエアのコンテスト史上初の快挙であり、ポイントは99.75を記録。「X GAMES」であれば100点満点を出していたことだろう。
 
カードローナで決めたときは撮影中だったのだが、やや後傾で着地しておりクリーンなメイクではなかった。そのため、今シーズンのW杯ビッグエア初戦のスイス・クール大会で優勝を飾った心椛は、この大技を仕上げるべく2戦目の中国・北京、3戦目のカナダ・エドモントンのビッグエアを回避していたと想像していた。
 
しかし、優勝が決まりウイニングランとなった3本目、想像を絶する超ド級の大技が飛び出した。CABトリプルコーク1440をスイッチインディグラブで繰り出したのだ。着地時にやや潰されて手をついてしまったが、しっかりメイク。むしろ完璧じゃなくてよかったとジャッジ陣は思ったに違いない。2本目のBSトリプルコーク1440よりも高難度であり、その差を0.25ポイントで補えるトリックではないからだ。結果、96.25ポイント。ビッグエア競技において3本とも95ポイント超を記録するのは、男女を通じて史上初だろう。

さらに言えば、ウイニングランで史上初となるトリックを繰り出した前例はないはずだ。勝利が決まっている状況で、ケガなどのリスクを鑑みてもトライする必要がないから。果たして、どのような気持ちで臨んでいたのか。J SPORTSの生放送で解説を務めさせていただいてた筆者は、大会直後の心椛と話す機会に恵まれた。
 
「大会を想像しながら今まで練習をいっぱいしてきたので、自分のやりたいベストの技を全部出しきれて本当に最高です。ウイニングランでも攻めた滑りをみなさんにお届けしたいと思っていたし、自分の中で絶対に立てるという想像もできていたので(CABトリプルコーク1440を)やりました」
 
このように心椛は力強く語ってくれた。13歳のときにBSダブルコーク1260を「X GAMES NORWAY」の大舞台で決め、初の国際大会で優勝を飾った心椛は、中学生ながらいきなり、世界中のコンペティターたちから追われる立場となった。その後、フィジカルもメンタルも成長していく中で大会の結果には苦しみながらも、初出場となった北京五輪ビッグエアでは銅メダルを獲得。しかし、心椛はまったく納得していなかったことだろう。負けん気が強い彼女の目に映っているのは、いつでも表彰台の一番高いところしかないからである。
 
そして今シーズン、紛れもなくその頂点に返り咲いたと断言しよう。ビッグエア女王として君臨している前出のアンナと、前回のエドモントン大会を制したゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)が今大会に出場していなかったが、仮に出ていたとしても結果は変らなかったと言い切れるからだ。
 
心椛に次いで2位には、16歳の深田茉莉が入った。今シーズンこだわり続けていたBS1260メロンを2本目に決めて、3本目にはFS1080メロンをメイク。昨シーズンの同大会でW杯初出場し初優勝を飾るというシンデレラストーリーを描いていた茉莉は、今シーズンのビッグエア最終戦で2度目となる表彰台を射止め、有終の美を飾った。そして、同じく16歳のミア・ブルックス(イギリス)が3位を獲得し、今シーズンのビッグエア総合優勝の証である、クリスタルグローブを手にした。
 
男子は、2大会連続オリンピックに出場している國武大晃が、意外にもW杯初優勝。CAB1800インディ・トゥ・ノーズの2グラブとFSクワッドコーク1800ウェドルを揃えての結果である。「今までやってきた努力が報われました。2位と3位は獲ったことがありましたけど1位はなかったので、本当に最高です」と、表彰式直後のリモートインタビューで話してくれた。

男女ともに日本人が優勝を飾り、ビッグエアは全4戦が終了。その結果、男子は木村葵来がクリスタルグローブを獲得、W杯を転戦し始めて2シーズン目にしての快挙達成だ。男子総合3位は長谷川帝勝、女子総合2位は茉莉、同3位には岩渕麗楽が輝いた。
 
来年1月17日(水)に開幕するスロープスタイルに向けて、ビッグエアを戦い抜いたライダーたちは年末年始も休むことなくトレーニングに明け暮れる日々が続く。日本人ライダーたちのさらなる飛躍に期待したい。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

男子結果
1位 國武大晃(日本)
2位 サム・ヴェルマート(オランダ)
3位 レッド・ジェラード(アメリカ)
7位 宮村結斗(日本)
10位 木俣椋真(日本)
14位 長谷川帝勝(日本)
17位 荻原大翔(日本)
20位 木村葵来(日本)
47位 大塚 健(日本)
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女子結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 深田茉莉(日本)
3位 ミア・ブルックス(イギリス)
5位 岩渕麗楽(日本)
6位 鬼塚 雅(日本)
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