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新進気鋭の若手たちが下剋上を狙うマジバトル「東京雪祭SNOWBANK PAY IT FORWARD 2023」
2023.11.21
このイベントのために寒気が日本中を覆ったのかもしれない。11月に入ってからも都心部で夏日を3日間記録するなど、きたる23-24シーズンの先行きに不安が募る毎日だったが、集まったスノーボーダーたちの願いが通じたかのように一気に冷え込んだ週末となった。さる11月11日、12日に、東京・渋谷の代々木公園にて開催された「東京雪祭SNOWBANK PAY IT FORWARD 2023(以下、SBPIF)」。シーズンインを控えた全国各地のジバーたちが一堂に会するわけだが、ほかにも音楽イベントやトークショーなども行われ、スノーボーダー以外も集う毎年恒例のイベントだ。
その目的は、普段献血ルームに足を運ばない若者たちを集客することで献血と骨髄バンクについて知ってもらい、行動するキッカケを作ること。自身が100万にひとりの難病を患い、骨髄移植により命を救われたDAZEこと荒井善正が「楽しいから始まる社会貢献」をテーマに掲げて開催しているSBPIFは13年に渡り続けられており、その結果として今年、社会貢献活動に励むアスリートを称える「HEROs AWARD 2023」の受賞を果たした。そのDAZEがシーンを盛り上げるべく続けているSBPIFの目玉イベント、シーズン開幕の風物詩「JIB STYLE BATTLE」の模様をお届けする。
1日目は一般応募のスノーボーダーたちにより予選が行われ、見事勝ち抜いた男女それぞれ上位3人とキッズ部門の優勝者が、2日目に開催される本戦に挑む権利が与えられる。下剋上を目論む若手ライダーたちにとってJIB STYLE BATTLEは、名を馳せるための登竜門だ。本戦は実力者が揃うインビテーションライダーたちの胸を借りて、自らのライディングを披露するまたとないチャンス。運営サイドによると、今年度は一般募集開始から24時間を待たずして、エントリーが定員に達したそうだ。
2日目の昼下がりからジャムセッション形式で始まった女子決勝、自身1本目からFSボードスライド・プレッツェル270オフをメイクした榊原仁菜が着実にメイクを重ねていく中、序盤は拮抗状態が続く。沈黙は6本目、芳家里菜が中央ダウンレールでのBS180オン・ハーフCABオフをパーフェクトメイクしたことによって破られた。一気に上がった会場のボルテージをライダーたちも感じとったのだろう、7本目の滑走では榊原がCAB270オンを、SUICAこと石原晴菜はダブルダウンでBSボードスライドを繰り出し、スタイリッシュにコスりきった。会場に自ら吹かせた追い風を完全につかんだ芳家は勢いそのまま、8本目でダブルダウンのキンク部分から飛び出すFS50-50・トゥ・FS360ノーズタップオフ、9本目でダメ押しとばかりにFS270オン・フェイキーオフをメイク。見事、女子優勝の座に輝いた。
男子決勝はダイナミックなトリックの応酬となり、25分の間、会場から歓声が鳴り止むことはなかったと言っても過言ではないだろう。まず特筆すべきは予選から勝ち上がってきた大木風輝のライディングだ。1本目から果敢に大技に挑み続け、2、3本目には派手なスラムも見せたものの、4本目に今大会のベストトリックに選ばれたBS450オン・270オフを決めると、会場は大きな歓声に包まれた。それを見て闘争心を掻き立てられたのだろう、それまでにもポップの利いたBSリップスライド・プレッツェル270オフなどをメイクしていた藤谷瞭至は自身5本目に、ダウンレールへのフロントフリップオンを見せる。惜しくもレールに乗りきれずメイクとはならなかったが、彼らふたりの攻めたライディングにより、会場の盛り上がりは最高潮に達した。
ここで、着々とメイクを重ねていた今野颯心がさらに流れをつかむ。ダブルダウンでスイッチBSボードスライド・270オフをパーフェクトに決めて見せたのだ。ランディング部分がフラットになっているため、ここまで270オフを見せたライダーたちの中にはボードを返す時間を稼ぐため、少し早めにレールオフする者もいたのだが、今野は最後までコスり切ったうえで見事270返し切り、完成度の高さを見せつけた。続く6本目、本記事のトップを飾る写真のとおり、今度は反対側のダブルダウンでFS270オン・270オフをメイクし、これが決め手となって男子優勝の座を勝ちとったのだった。
滑走順で今野の次となっていた若手の中でも注目の16歳、渡辺雄太はBSリップスライド・プレッツェル270オフなど高難度トリックを負けじとメイク。今野とのデッドヒートを繰り広げ、2位に輝いた。ジャッジタイム終了のカウントダウンが終わり、見どころ満載だった男子決勝は終わりを告げたが、時間外となった最終滑走、藤谷が再びフロントフリップオンを繰り出して見事にレールをとらえたのだ。記録には残らない一本だったが確実に、代々木公園に集まったスノーボーダーたちの記憶に焼きついたことだろう。
スタート位置に立つライダーたちは次に繰り出すトリックチョイスに頭を悩ませながらも、ライバルがクールなトリックを魅せると、まるで自分のことのように喜んでいる姿が印象的だった。お互いにプッシュし合い、代々木公園を歓声の渦に巻き込んだ出場ライダーたちへ、拍手を送りたい。
男子結果
1位 今野颯心
2位 渡辺雄太
3位 藤谷瞭至
ベストトリック 大木風輝
女子結果
1位 芳家里菜
2位 石原晴菜
3位 榊原仁菜
text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: Yoshiro Higai, Yoshito Yanagida, Ryo Hiwatashi