BACKSIDE (バックサイド)

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室内パイプ育ちの岡嶋翔空がその施設を守るべく多くの人々をつなげた「MEET」

2023.10.25

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「これからみさかに向かう」という趣旨のInstagramストーリーズが日中から多く見られた。仲間たちとのひさびさの再会に心躍らせていた者も多かっただろう。10月7日の夜から翌8日の早朝にかけて、山梨・笛吹に位置するインドアハーフパイプ施設「カムイみさか」は、近年最高の盛り上がりを見せた。同施設で開催された一夜限りのオールナイトセッションイベント「MEET」に、計200人以上のスノーボーダーたちが集ったのだ。

昨年度の屋内ハーフパイプ営業期間中は月に2回ほど行われていたオールナイト営業。夜通しスノーボードを楽しむという非日常感漂うセッションは人気で、日本が誇るハイクオリティなインドアパイプにコアなスノーボーダーたちが集まっていた。しかし、今年からオールナイト営業は廃止されていたため、仲間たちが集まる機会が減ってしまっていたと語るのは、小さい頃からハーフパイプのコンペティターとしてカムイみさかで練習を重ねてきた岡嶋翔空。同施設を第2のホームゲレンデのように想う若手ライダーであり、MEETのオーガナイザーを務めた。

 

盛り上がりをカムイみさかローカル風に表現するなら、常に「6列15人」といったところか。アイスクラッシャーが作った氷の山の裏まで列は伸びていた

 

「日中営業の1st、2ndは練習!っていう感じのかっちりした雰囲気なんですが、オールナイトはもう少しファンな感じ。みんなでワイワイ遊ぶフィールドっていう、みさかの別の姿がありました。コンペティションに出なくなった昨シーズンから、僕にとってもみさかは練習施設というより“遊び場”になっているので、このまま人が来なくてなくなるようなことになったらイヤなんです。だからどうにかして人を呼びたくて、MEETを開催するに至りました」

翔空があげたこの声は、多くのスノーボーダーが秘めていた言葉を代弁したものだったのだろう。21時半ごろに始まったイベントだが、夜が深まるにつれて来場者は増加。ゲストライダーとして参加した平岡卓、片山來夢、今井郁海の3人も、それぞれの言葉で「みさかを残したいという気持ちがあるなら、ぜひ手伝いたかった」と語ってくれた。

 

「僕もみさかには小さい頃から来ていたし、これからもたまに滑りに来たい。翔空の残したいっていう気持ちには共感できるので、ゲストライダーという形で今回参加させてもらいました」──平岡 卓

 

「純粋に楽しみに来ました。みさか自体はめっちゃいい施設だし、ここで練習しているキッズたちも多いですよね。ただ、だからこそ入りづらさを感じている人も一定数いるのかな、とは思っていて……。そういうことを気にせず遊べる今回のようなイベントはやっぱりいいですね!」──今井郁海

 

昨年、『FLEETING TIME』の撮影のために来日したBURTON(バートン)クルーのベン・ファーガソンやダニー・デイビス、さらに天井をタップしたことで話題を集めた平野海祝とともにカムイみさかでシューティングを行った來夢は、誰よりも同施設の可能性を信じているライダーでもある。

「狭い島国だからこそ、こういうイベントのときにはいろんなスタイルのアツいライダーたちが全国から集まってくるんですよね。この熱は北米のシーンにも負けていないから、日本のインドアシーンをもっと海外に知らしめたいと思っています。ベンやダニーもみさかには注目しているし、そもそもひと晩中滑るイベントなんて、海外にもないですしね!」

 

この日はシューティングも兼ねていた來夢。彼が滑るたびに会場に歓声がこだました

 

來夢がイベント序盤から繰り出していた特大のフロントサイドエアや、卓&郁海のスタイリッシュなライディングを目の前にして、会場のボルテージはマックス。普段はドロップインの順番を譲り合うなど“治安がいい”カムイみさかだが、この日はみなが競い合うようにして滑っている姿が印象的だった。

 

大躍進の若手、渡辺雄太はクールなハンドプラントでカメラマンの注意を引いていた

 

若くしてバックカントリーでの撮影経験を積む柿本優空のフロントサイドエア。スタイリッシュなメランコリーを披露

 

カムイみさかでは今年からオールナイト営業がなくなった代わりに、1ヶ月に2回ほど、夕方〜夜にかけて3rd営業が行われていた。営業前に壁の整備をしない代わりにボトムにジブアイテムが設置され、フラットバーンに見立ててグラトリで遊ぶこともOK、という時間帯。その影響か、MEETにもボトムでグラトリを楽しむスノーボーダーたちが来場しており、様々なスタイルが交差する場と化していた。パイプから飛び出しエアタイムを楽しむ者、リップトリックで魅せる者、ボトムでキレのあるグラトリを披露する者もいる。その場にいる全員が余すことなく、カムイみさかというフィールドを遊び尽くしたのだった。

翔空をサポートする立場でイベント開催に向けて尽力した“マイケル”こと嶌崎将太は、山梨・甲府に居を構えるプロショップ「STEEZ CREATIVE STAND」のオーナーという視点から、今回のイベントを振り返ってくれた。

「スノーボードのひとつのカテゴリーだけを楽しむ仲間同士で固まってしまうと、彼らのスノーボードがそこで完結してしまう。それはやっぱり寂しいことだと思うんです。でも、今回のMEETみたいなイベントで、パイプランがめっちゃ上手いライダー、ラインどりがスタイリッシュなライダー、グラトリがカッコいいライダーたちが同じ空間で滑ることで、その垣根を越えてお互いの魅力に気づくことができますよね。本当にいろんなスタイルのスノーボーダーが来場してくれたおかげで、そうした想いが伝わったんじゃないでしょうか。おかげでみんなのライディングを見ているだけでも面白いイベントになりました! 同じ山梨に住むスノーボーダーとして、日本で唯一残ったインドアハーフパイプを盛り上げたい気持ちは強いので、このような形で人を集められたのはうれしいですね」

 

マイケル(写真左)と翔空が今回言葉にした「インドアパイプを残したい」という想いはきっと、多くのスノーボーダーに共通するのだろう

 

「ライダーの滑りを見てテンションが上がって、カメラマンがいるからみんな画を残そうと気合いが入る、みたいな感じで、あの場にいた全員でお互いに高め合うようなイベントになったかなと思います。僕にとっても、例えば來夢くんは滑りがカッコよくて憧れていたライダーですし、卓くんもCALMっていうブランドをやったり映像を出したりしていて、表現者としてカッコいいな、と思っているライダーです。まだ僕がコンペティションに出ているときに、郁海くんがバックカントリーで残した映像を観て衝撃を受けたことも覚えています。コンペティターではなく表現者として、そういう先輩たちとコラボできてよかったです」

このように語る翔空は、多くのスノーボーダーたちをつなげるだけでなく、自身も数々の先輩たちと関わったことでライダーとしての進化を遂げたに違いない。

 

コンペティションで勝つためにカムイみさかで鍛えたライディングスキルは、これから表現者として生きていく翔空の武器になっていくだろう

 

大盛況のうちに幕を閉じたMEET、23-24シーズンの幕開けを告げるにふさわしいイベントだった。当日の熱気が感じられる映像がフィルマーチームよりアップされているので、ぜひチェックしてみてほしい。

 

 

text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: HOLY

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