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スノーボード連盟がフリースタイル競技のポイントシステムをスキー連盟に譲渡
2023.06.15
近年はオリンピックがコンテストの頂点とされる風潮が強いので、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)に対してとやかく言う風潮は少なくなっているが、元来はISF(国際スノーボード連盟)がスノーボード競技のすべてを統括していた。話が長くなってしまうので簡潔に説明すると、スノーボード競技をオリンピック種目化する際、IOC(国際オリンピック委員会)の傘下にあったFIS(当時の国際スキー連盟)に対して、ISFの了承を得ることなくオリンピックを頂点としたスノーボード競技のハンドリングの権限が委ねられたのだ。スキーヤーがスノーボード競技を運営してきたことでこれまでにあらゆる紆余曲折があったわけだが、現在まで続いているこの競技の“ねじれ”の発端はここにある。
その後、長野五輪をボイコットした当時のハーフパイプ王者だったテリエ・ハーカンセンが中心となり、主要なイベント主催者やブランドの代表者たちによって、世界中のもっとも権威ある独立したスノーボードイベントを橋渡しする革新的なツアーを目的としてTTR(Ticket to Ride Tour)が誕生。WSF(世界スノーボード連盟)とともに、ハーフパイプ、ビッグエア、スロープスタイル各競技における信頼性のあるランキングシステムであるWSPL(世界スノーボードポイントリスト)が開発された。その後、TTRとWSFが合併したことにより、2017年からWSFがWSPLの管理を引き継いでいた。
そしてついに、WSFはWSPLの権限をFISに引き渡すことを発表したのだ。これがどういうことなのか説明すると、これまでいわゆるプロ大会と呼ばれている「X GAMES」や「DEW TOUR」、2020年を最後に終わりを告げた伝統の一戦「BURTON US OPEN」などは、WSPLのポイントとして換算されていた。筆者(編集長)のような立場の人間は、スノーボードのすべての大会結果を調べるために、WSPLを参考にする。WSPLはWSFとFISが推進するスノーボードの単一的な世界ランキングリストだったからだ。オリンピックスポーツとしてのスノーボードはFISが運営しているものの、FIS大会もプロ大会も含めた全スノーボード競技の結果を包括的にポイント化していたのはWSPLだった。北京五輪ハーフパイプで金メダルを獲得している平野歩夢は昨シーズン、X GAMESとDEW TOURのみに出場。よって彼の場合、FISポイントはゼロになるが、WPSLではポイントを獲得していた。
「WSPLと国際的なスノーボードの管理をWSFとFISを代表して6年間担当してきた私たちにとって、これは歴史的な瞬間です。この数年間は新型コロナウイルスと変革のプロセスにより、大きな影響を受けていました。涙を流しながら、旧TTRの経営陣やすべての仲間たちに感謝の意を表したいと思います。20年以上に渡って、国際的なスノーボーダーたちのランキングと、もっとも包括的なフリースタイルイベントのスケジュール管理を担ってきたことで、ライダーやオーガナイザー、そしてファンたちをサポートできたことにとても感謝しています。この素晴らしいスノーボードコミュニティの一員にさせていただき、ありがとうございました」
WSF経営会議議長のドミニク・クーンは今回の件を踏まえて、このように語っている。
かつてX GAMESやUS OPENで活躍し、現在「NATURAL SELECTION TOUR」を主宰しているトラビス・ライスは、WSFからの発表を受けてSNSで「今日は半旗を掲げます……」とコメントしている。2022年5月に、FISが総会で正式名称を「国際スキー・スノーボード連盟」と変更したことでスノーボードはスキーのいち種目ではなく“いちスポーツ”として扱われるようになったわけだが、ISFから始まりWSFに受け継がれたスノーボーダーによるスノーボーダーのための連盟は今後、どのような道をたどるのか。
WSPLのランキングは2023年6月30日(金)まで表示され、WSFの今後については数週間以内に発表されるとのことなので、続報を待ちたい。
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