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平野歩夢の偉業からちょうど1年後に平野流佳&小野光希がW杯3連勝の快挙達成
2023.02.11
本日2月11日は、日本スノーボード界にとって特別な一日である。昨年の今日、北京五輪ハーフパイプの舞台で平野歩夢が大逆転劇を演じて金メダルを獲得し、世界中を感動の渦に巻いた日である。
その歩夢は不在だが、カナダ・カルガリーで開催されているFISワールドカップ(以下W杯)ハーフパイプ大会で日本人が快挙を達成した。平野流佳と小野光希が3大会連続のアベック優勝を飾ると同時に、両名ともに年間王者の証であるクリスタルグローブを手にしたのだ。さらに、新進気鋭の17歳、重野秀一郎が3位とW杯初となる表彰台を射止めた。
強風が吹き荒れており30分間のディレイが強いられていたので、今シーズン第2戦のLAAX OPEN同様に決勝がキャンセルかという雰囲気も漂っていたが、なんとか女子からスタート。筆者はJ SPORTSの解説を務めているので画面越しではあるものの、スイングバナーが激しく揺られているのを見ていると、とても風が収まっているようには映らなかった。レギュラーのバックサイドからフロントサイド方向にかけて強風が吹いており、事実、戸塚優斗は1本目のラストヒットにFSダブルコーク1440を放つも、若干プラットホーム側に風であおられたのか、リップに乗り上げてしまい激しくボトムに叩きつけられるように転倒。2本目以降は棄権となったが、大事には至らなかったようでひと安心。バックサイドの壁でキャブスピンを繰り出す選手もボトムに返されるシーンがあったりと、ひと筋縄にはいかないコンディションだった。
ひとり3本のランを行いベストポイントで勝敗を決するおなじみのルール。男子は流佳が1本目からトップに立ち、コンディションを鑑みると1440を出さずとも逃げ切れるのではという空気が流れていた。しかし、2本目にチャウン・リー(韓国)がバック・トゥ・バック(連続)ダブルコーク1440を放ち、ラストヒットのFSダブルコーク1080で転倒するも、このランを皮切りに大きく流れが変わった。
予選3位通過の流佳はトップのまま、チャウンとヴァレンティノ・ギュゼリ(オーストラリア)を後ろに控えた状態で3本目のランを迎えた。チャウンの2本目のルーティンが成功する可能性を考えると、また、ヴァレンティノの実力を踏まえると攻めるしかない。スタート直後にバターのFS180でスイッチに切り替えるおなじみのドロップインから、スイッチBSダブルコーク1080インディ→BS900ウェドル→FSダブルコーク1440インディ→CABダブルコーク1080トラックドライバー→FSダブルコーク1260インディを決めて、自身のポイントを塗り替える88.5ポイントを獲得。
その直後、チャウンはバック・トゥ・バックのダブルコーク1440は成功するも、2本目同様にラストヒットで着地に嫌われていまい万事休す。秀一郎が3本目に素晴らしいランを披露し、FSダブルコーク1440インディ→CABダブルコーク1080ウェドル→FSダブルコーク1260インディ→BS900ウェドル→FS1440テールを決めて81.75ポイントを叩き出して2位につけていたため、チャウンは3位で最終出走のヴァレンティノを待つ格好となった。
そのヴァレンティノはスロープスタイルにも出場しており、予選ヒート2で2位につけている。近年のコンテストレベルを鑑みると、ハーフパイプとスロープスタイル&ビッグエアをともにファイナリストレベルで両立させることはとてつもなく難しく、加えて、連戦になることから17歳とはいえ体力と精神的にも疲労困憊に違いない。そんな状況で迎えたラストラン、3ラン中もっとも高さがあるように映ったスイッチメソッドから入ると、CABダブルコーク1080ウェドル→FS1260テール→BS900ウェドル→FS1440テールを見事決めて82ポイントをマーク。秀一郎のポイントをわずか0.25ポイント上回り、逆転の2位に。この瞬間、今大会で自身を除いて3人のライダーから1440を引き出す立役者となったチャウンは、4位に沈んだ。
「今年目標にしていた年間優勝、そして3連勝できてとてもうれしいです。(最後に決めたFS1440は)練習のときは上手くいかなかったんですが、本番では決められました(笑)。公開練習では風が強すぎてダブルは1回も練習できなかったんですが、本番は少し風も弱くなったので、そこで全部つないだ感じですね。この後は世界選手権が控えているので、そこでも優勝したいです」
J SPORTSの番組中に流佳と言葉を交わす機会に恵まれたのだが、このように力強く語ってくれた。
女子は光希が1本目で記録した88ポイントで結果的には優勝できたのだが、2本目に1本目とファーストヒットのグラブを除いて同ルーティンを放ち、BSインディ→FS900テール→BS540ウェドル→FS720インディ→CAB720ウェドルを決めて89.75ポイント。
2位のエリザベス・ホスキング(カナダ)は1本目のランよりも難易度を上げ、BS540ウェドル→FS720ステイルフィッシュ→ハーカンフリップ・ウェドル→FS540インディ→FSアーリーウープ540インディという素晴らしいルーティンを披露するも86ポイントで光希の1本目に届かず。その直後に光希が先述した89.75ポイントを叩き出した瞬間、エリザベスは絶望したことだろう。光希は伝家の宝刀であるCAB900を出すことなく、圧勝だった。
3位には、クリップラー・インディ→BS540ウェドル→FS720ウェドル→CAB720メロンを決めたベレニス・ウィキ(スイス)が入った。
「言葉にならないくらいうれしいです。昨シーズンは総合3位になれて今シーズンも3位までにランクインできたらいいなぁと思っていたんですけど、まさかこんなに早くクリスタルグローブをもらえる日が来るとは思っていなくて、とてもうれしいです。世界選手権まであと10日くらいあるので、しっかり身体を休めてベストな状態で臨めるようにしたいです。あとはメダルが獲れるように頑張ります」
J SPORTSのインタビューにもこのように、清々しさの中に力強さを感じさせる口調で答えてくれた光希。大会直後には英語で流暢にインタビューに答えるなど、女子高生ライダーの進化は滑りだけではないことを証明してくれた。
冒頭で綴ったように、歩夢が日本スノーボード界の歴史を塗り替えてから1年後の今日、後輩たちは快挙を達成した。流佳と光希には心の底から祝福の言葉を贈りたい。
男子結果
1位 平野流佳(日本)
2位 ヴァレンティノ・ギュゼリ(オーストラリア)
3位 重野秀一郎(日本)
8位 戸塚優斗(日本)
10位 平野海祝(日本)
12位 片山來夢(日本)
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女子結果
1位 小野光希(日本)
2位 エリザベス・ホスキング(カナダ)
3位 ベレニス・ウィキ(スイス)
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