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スピードが出せない厳しい条件下でのW杯ビッグエアで岩渕麗楽が3位と強さ証明
2022.12.11
鬼塚雅や村瀬由徠など、予選から期待されていた日本人女子ライダーの欠場者が多く、何が起きているのかわからなかったが、蓋を開けてみると厳しいコース設定となっていることが露呈された。FISワールドカップ・ビッグエア第2戦はカナダ・アルバータ州のエドモントンで行われ、会場はカナディアンフットボールのプロチーム、エドモントン・エスキモーズの本拠地であるコモンウェルス・スタジアム。この会場でのビッグエアは初開催だったのだが、一般的な都市型ビッグエアとして造成されるコースよりも、明らかに斜度が足りていなかった。
女子ではファイナル進出を果たした村瀬心椛がDNS(Do Not Stat: スタートしない)となり、いわゆる棄権するほど。言うまでもなく、ビッグエアで飛距離を出すのにも回転力を生むのにもスピードが必要になるわけだが、軽量な日本人にとっては不利な状況で、脚力が劣る女子にとってはなおさらだった。
そんな厳しい条件下において、第1戦で優勝を飾っていた岩渕麗楽は予選をトップ通過。決勝はひとり3本のジャンプを行い回転数の異なるベスト2トリックの合算で争われるおなじみのルールだが、2本目にFSダブルアンダーフリップ900インディを決めて、ややスイッチスタンス時のテールでの着地となり後傾姿勢だったが、84.5ポイントを記録し、今大会女子の最高ポイントを叩き出した。
しかし、3本目に選んだバックサイドスピンは伝家の宝刀であるBSダブルコーク1080ではなく、BS720だった。それほどスピードが出しづらい状況だったのだろう。テイクオフでバランスを崩したのか、グラブすることができずにポイントは思うように伸びなかった。3位でフィニッシュ。
表彰台の頂点を射止めたのは、地元カナダのジャスミン・ベアード。1本目から他を圧倒するようなCABアンダーフリップ900ウェドルを決めると、ウイニングランとなった3本目には2本目と同じBS720ウェドルを放ちポイントをさらに塗り替えるという、攻めの姿勢で圧勝。見事ワールドカップ初優勝を飾った。2位はベルギーの新星、エヴィ・ポッペがワールドカップ初となる表彰台を獲得した。
男子は、セミファイナルから勝ち上がったクリス・コーニング(アメリカ)から始まったのだが、いきなり1本目からBS1800メロンを完璧に成功。大会のトップバッターは基準点となる傾向が強いためポイントが比較的伸びづらいのだが、なんといきなり93.5ポイントを叩き出した。
これにより、地元の英雄であるマーク・マクモリス(カナダ)や、高回転スピン時代を築き上げたと言って過言ではないマーカス・クリーブランド(ノルウェー)らは同じくBS1800にトライするも、やはりスピードが足りずにメイクすることはできず。マーカスが2本目でBS1440にトリックを修正していたことが、それを証明している。
日本からは國武大晃と木俣椋真のふたりが決勝に駒を進めたのだが、それぞれFSトリプルコーク1440を完璧に決めるなど善戦。特に國武は3本目に、1本目で激しく転倒して着地に嫌われていたBSトリプルコーク1620メロンを完璧に決めて一時3位に食い込むも、最後の最後で逆転を許して4位に終わった。「北京五輪のときもそうだったけど、4位はもうイヤだ」と大会直後のインタビューで、本音を吐露していた。
その國武を最後にマクったのが、カナダのニコラス・ラフランボワーズだ。3本目、地元の声援が後押ししたとはいえ大きなプラッシャーがかかる中、見事にBSトリプルコーク1620ウェドルを完璧に決めた。
優勝は、こちらも3本目に大逆転劇を演出したヴァレンティノ・ギュゼリ(オーストラリア)。クリスが2本目にFS1440メロンを決めて計170ポイントで最終走者として待ち構える状況で、ヴァレンティノは2本目にFS1440ウェドルを決めると、3本目には1本目で若干回転が足りなかったBSトリプルコーク1620を見事修正し、トラックドライバーを入れてパーフェクトストンプ。トータル172.5ポイントとして、クリスを上回った。
あとがなくなったクリスは2本目のトリックと回転方向・回転数は同じだが、グラブをトラックドライバーに変えてポイントの上書きを狙うも、ヴァレンティノにわずか0.5ポイント及ばずに万事休す。この瞬間、ハーフパイプが本職であるヴァレンティノが、ワールドカップ初優勝をビッグエアで飾ったのだ。
試合展開が面白すぎたため、J SPORTSの生放送で解説をさせていただいて筆者は、思わず叫びっぱなしだった。本記事を読んで気になったという方は、ぜひともご視聴いただきたい。
来週はついにハーフパイプが開幕。アメリカ・コロラド州カッパーマウンテンにて、ハーフパイプとビッグエアが行われる。オリンピック直後のシーズンにナショナルチーム入りしている平野歩夢が出場するのかどうかなど、見どころ満載だ。
女子結果
1位 ジャスミン・ベアード(カナダ)
2位 エヴィ・ポッペ(ベルギー)
3位 岩渕麗楽(日本)
8位 村瀬心椛(日本)
9位 枝松千優(日本)
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男子結果
1位 ヴァレンティノ・ギュゼリ(オーストラリア)
2位 クリス・コーニング(アメリカ)
3位 ニコラス・ラフランボワーズ(カナダ)
4位 國武大晃(日本)
8位 木俣椋真(日本)
14位 大塚 健(日本)
15位 飛田流輝(日本)
23位 長谷川帝勝(日本)
26位 濱田海人(日本)
39位 荻原大翔(日本)
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