BACKSIDE (バックサイド)

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MOVIE

世界初のロデオフリップに世界中が驚嘆した名作『THE MELT DOWN PROJECT』

2018.08.15

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90年代中盤からフリースタイルシーンのトレンドを左右してきた映像プロダクションと言えば、MACK DAWG PRODUCTIONSで間違いない。1995年10月にリリースされ、その立ち位置を確固たるものにした同プロダクションによる名作『THE MELT DOWN PROJECT』を紹介したい。この作品に感化されてスノーボードを始めたというベテランスノーボーダーも、きっと多いことだろう。

90年代前半まではスケートボードからの多大なるインスパイアを受け、スキーとの差別化を図るようにしてゲレンデ内でジビングやグラウンドトリックを中心に急成長を遂げていたスノーボード。このように発展途上の真っ只中にあったわけだが、1994-95シーズンに撮影された本作には独自の進化の道を歩みを始めたことが示されている。
パークやゲレンデ内で繰り出されていたスケートライクなアクションがバックカントリーで繰り出されるようになったことで、ジャンプは巨大化し、繰り出されるパフォーマンスも多様化。現在のマウンテンフリースタイルに繋がる、フリースタイルスノーボーディングの系譜を感じることができるはずだ。
また、当時のフリースタイル界を牽引していたノルウェーに出自を持つダニエル・フランクが、世界初となるロデオフリップ(フロントサイド・ロデオフリップ540。13:36〜)を本作で披露。フロントサイド方向への縦軸の強い3Dスピンは、それ以前にピーター・ラインが開発していたミスティフリップ(バックサイド・コークスクリュー540)を凌ぐインパクトの強さから世界中を席巻し、ロデオブームを巻き起こした。この瞬間が現在のトリプルコークなどの高回転3Dスピンが誕生する契機となっているだけに、本作がいかに貴重なムービーであるかということをご理解いただけるだろう。
さらには、テリエ・ハーカンセンがハーフパイプで放っているオーバーヘッドのエアの高さはこの時代からであり、ブライアン・イグチのフリースタイルとフリーライドを掛け合わせたライディングスタイルの原点も今作にあるのかもしれない。
そして何よりも、各出演ライダーたちが強烈なオーラや個性を放っていた。前出のライダー以外にも、ジェイミー・リン、ピーター・ライン、インゲマー・バックマン、デイブ・リー、トッド・シュロッサーなど元祖“ムービースター”たちが顔をそろえ、彼らに憧れを抱いた世界中のスノーボーダーたちがアクションやライフスタイルをコピーしようと躍起となっていた時代。
こうした価値観が確立されていたからこそ、1998年にオリンピックの正式種目として採用されて現在に至るわけだが、今もなお競技だけで推し量ることができないアーティスティックな側面を併せ持つスポーツであり、カルチャーであり、遊びとして、世界中に根づいているわけだ。
エンディングには当時8歳のショーン・ホワイトも出演。改めて、フリースタイルスノーボーディングが確立しはじめた当時のニオイを感じ取ってほしい。

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