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ただただブッ飛ぶ。それだけでカッコいい。平野海祝が体現するハーフパイプの美学
2026.09.05
オリンピックを頂点とするハーフパイプ競技では、トリックの高難度化が止まらない。回転数は増え続け、それに伴って複雑な回転軸が加わり、世界トップレベルのライダーたちは常軌を逸したライディングを繰り広げる。
しかし、ハーフパイプを滑る魅力は、決してそれだけではない。
「Who said halfpipe riding isn’t beautiful?(ハーフパイプライディングは美しくないなんて、誰が言った?)」
そんな言葉とともに公開されたのが、スワローテールのロングボードにまたがる平野海祝を主役に据えた映像作品『Maybe, No Money Crew』だ。
舞台はスイス・ラークス。タイトルには「one session in Laax」とあるように、ジェイク・ペイツ、ジョーイ・オケソン、ニック・ピュンター、そして日本から村上広乃輔らが、青空の下でセッションを繰り広げている。
映像は「飛ぶのが大好き」という言葉から始まり、空中にいる時間の静けさや解放感、そして再び現実の世界へ降りていかなければならないことが語られる。
この作品が描いているのは、高難度トリックの応酬ではない。作品タイトルのデザインには、こんな言葉が添えられている。
「別にクレイジーなことは何もない。ただ仲間たちとシンプルに滑っているだけ。晴れていて暖かい。深く考える必要もなければ、何かを装う必要もない。ただ、この空気を楽しんでいる。仲間たちとパイプでふざけながら滑っているだけだ」
その言葉どおり、映像から伝わってくるのは、ハーフパイプを滑ることそのものの気持ちよさだ。壁を駆け上がり、リップから抜け出し、青空へブッ飛ぶ。そして、重力に引き戻されるようにトランジションへ帰ってくる。
海祝の代名詞とも言える巨大なエアはもちろん、出演するライダーそれぞれのスタイルが際立つ。なかでも広乃輔が放つ巨大なフロントサイド・リーンは、回転数やトリックの難度とは異なる物差しで、ハーフパイプライディングのカッコよさを強烈に印象づける。
コンペティションで勝つためには、難しいトリックが必要だ。だが、スノーボードの価値は難度だけで決まるものではない。
どれだけ高く飛ぶのか。空中でどのように自己表現するのか。そして、どんなラインでつなぐのか。そこにはライダーそれぞれのスタイルが表れる。
ただただブッ飛ぶ。それだけで、ハーフパイプライディングはこんなにも美しく、カッコいい。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)




