MOVIE
金メダリストの歩夢と、世界一高く飛んだ海祝。平野家の愛が支える兄弟の在り方──MONSTER『BURAZĀZU』
2026.01.06
MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)から、平野歩夢・海祝兄弟の物語『BURAZĀZU』が公開された。
本来であれば “BROTHERS” と綴るところを、あえてローマ字表記の “BURAZĀZU” としている点がまず印象に残る。日本語の「ブラザーズ」という響きを、そのままタイトルに定着させる意図があるのだろう。歩夢&海祝ブラザーズのアイデンティティを、言葉の選び方から強調している。
内容は、弊誌ISSUE 5「WALK TO THE DREAM ──夢への歩み──」で触れた平野家の背景とも重なる。長男・英樹が父と二人三脚で、スノーボードとスケートボードの二刀流へ踏み出したこと。父の厳しい指導のもと、学校に通う時間さえ削り、横乗りに没頭する日々があったこと。その後に歩夢が続き、英樹とともに切磋琢磨を重ねていったこと。家族の歩みを起点にすると、『BURAZĀZU』は歩夢と海祝の映像であると同時に、“平野家の時間”を記録する作品でもある。
歩夢は、兄の夢と自分の夢を現実にするために突き進み、周知のとおりオリンピックで3大会連続メダルを獲得した。その最初のメダル獲得シーンをテレビで観ていた三男・海祝は、そこから本気でスノーボード競技と向き合うようになる。映像内で英樹が「そこからあの位置までよくいけたと思う。すごい」と語る場面は、弟の成長を“結果”ではなく“過程”として捉えている点で印象的だ。
ここで浮かび上がるのは、同じ家で育ちながらも、歩夢と海祝が異なる入口から競技へ入ってきた事実である。親の意向に沿い、英樹とともにストイックにスノーボードと向き合ってきた歩夢。対して海祝は、自らの意志で競技の世界へ飛び込んだ。その違いについて英樹は、「僕と歩夢は歪んだ感情でスノーボードに取り組んできたけど、海祝はシンプルにスノーボードが好き」と明かしている。兄弟の差異を言い当てるひと言だ。
いま、歩夢と海祝はタッグを組み、世界を飛び回っている。北京五輪で歩夢が悲願の金メダルを獲得したときもそうだった。その相乗効果もあってか、海祝は同五輪でファイナルへ進出し、さらにハーフパイプのハイエストエア世界記録を樹立した。対称的なふたりが、互いに引き上げ合う構図は、この兄弟を語るうえで欠かせない。
映像には、これまでハーフパイプ界を牽引してきたライダーたちの視点から、平野ブラザーズに対する言葉も並ぶ。2002年ソルトレイクシティ五輪ハーフパイプで銀メダルを獲得したダニー・キャスは、彼らが日本という国にある一種の「型」を打ち破ろうとしていると語る。また、2006年トリノ、2010年バンクーバー、2018年平昌と、オリンピックのハーフパイプで頂点に立ってきたショーン・ホワイトは、スタイルを「このスポーツの“心臓の鼓動”」に例え、誰かに教えられるものではないとしたうえで、ブラザーズのスタイルを称賛する。さらに、北京五輪ハーフパイプ銀メダリストのスコッティ・ジェームスは、彼らがスノーボードを本質的に理解していることに触れ、「存在そのものがスノーボード」とまで言い切る。ライバルの立場からこぼれる言葉として重い。

映像内のヒトコマ。天高く宙をを舞う歩夢と、バーチカルに当て込む海祝。息の合ったコンビネーション
そして、本作が映像作品として強いのは、超スローを駆使したライディングの映像美にある。ライディングセッションのシーンもふんだんに収録され、その中で海祝はFSダブルコーク1620テールを、歩夢は先日のワールドカップで初披露したFSダブルクリップラー1260ジャパン、そしてまだコンテストでは繰り出していないスイッチBSダブルコーク1440テールを見せている。トリックの難度を誇示するというより、ライディングスタイルを最大限に表現する編集だ。
平野ブラザーズを語るうえで、英樹、父、そして母を含めた家族の存在は欠かせない。歩夢と海祝は、個として突出しているだけではなく、家族という単位の中で育まれた価値観と時間の延長線上に立っている。
『BURAZĀZU』は、その背景を含めて映し出すことで、ふたりの現在地を説得力をもって物語っている。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




