
MOVIE
仲間たちと一緒なら、ボコボコでも転んでも楽しい。最高の笑顔がこぼれた「d0bunezumi」による“原点回帰”のセッション
2025.06.15
シーズン終盤を迎えた新潟・石打丸山のスーパーパイプには、もはや整備されたトランジションも、ボトムのフラットも存在しない。ただの“雪の塊”と化したその場所に、d0bunezumi(ドブネズミ)クルーが現れた。
フィルマーのDPこと平上祐太郎に連絡が入ったのは、前日の夜11時。撮影に合流したのは、平野海祝、山田悠翔、長澤颯飛の3人だった。クルーの中心人物である伊藤藍冬は前日のケガにより不参加となったが、学生時代の仲間たちで結成されたこのクルーは、ひさびさの再会を心から楽しんでいるようだった。DPの言葉を借りれば、「ひさしぶりに一緒に滑るうれしさがあふれていた3人は、ポカポカだった」
雪解けによってRには段差ができており、ボトムも波打ったパイプの残骸だったが、そこに立つ3人は、それをネガティブなコンディションとは捉えていない。ハーフパイプのハイエストエア世界記録保持者である海祝、NITRO SNOWBOARDS(ナイトロ スノーボード)のグローバルチームでも高い評価を受けている悠翔、スイッチを自在に操りストリートで存在感を示す颯飛。彼らほどのスキルをもってしても、何度も転ぶ。だが、そのたびに笑顔がこぼれ、歓声が上がる。それはまるで、スノーボードを始めたばかりのキッズのように──。
「思考は現実化する」(海祝)、「またさらにスノーボードが大好きになった日」(颯飛)とSNSに綴られた彼らの言葉が、セッションの空気を物語っている。d0bunezumiが描きたいのは、きれいなライディング映像ではない。かつて藍冬が弊ウェブマガジンのインタビュー(記事はこちら)で語っていたように、「思いっきり滑ってヤラれたシーン」こそ、スノーボーダーの生き様なのだ。完璧なランではなく、転んでも笑って滑り続ける姿。その不完全さにこそ宿る“リアル”が、このムービーにはある。
プロもアマも関係ない。カメラの前でも気どらずに、ただ仲間たちと滑る。崩れかけたパイプの跡地に、儚さとは裏腹な最高の笑顔が弾けていた。