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極寒で平坦な1万の湖を有するミネソタで生み出された湖上スノーボーディング
2021.04.24
2021年2月11日、アイキャッチ画像に使用している奇妙な写真が残された。米ミネソタ州チサゴシティの湖で撮影されたこの写真で主役を張っているのは、CAB270オンでレールを捕らえているこの地で生まれ育ったプロスノーボーダーのベニー・マイラムだが、アイスフィッシングに興じている釣り人も写し出されている。本記事で紹介するムービーを観るだけでは、英語とこの地に精通していない日本人にとって理解しがたいかもしれないが、この一枚の写真と動画には、アメリカ中西部に位置するミネソタの文化が色濃く映し出されているのだ。
アメリカの中央部北側に位置するため冬はとても寒い地域で、2月には1週間連続して氷点下を記録することも珍しくないミネソタ。そして同州には、なんと1万もの湖が存在するのだ。言い換えれば、冬になれば1万個のアイスリンクが屋外にできるということになる。
4インチ(約10cm)の氷が張れば人間にとって安全と言われており、12インチ(約25cm)にもなれば車やトラックもOKとのこと。そうなれば、アイスハウスやヒーターとともに湖に人々は向かうそうだ。冬のアウトドアアクティビティとしてアイスフィッシング文化が根づいているのだ。
また、ミネソタは全体的に平坦な州。もちろん雪は降るものの、ビッグマウンテンがあるわけではない。そう、ミネソタのスノーボーダーたちは標高100mにも満たない丘や人工的に造られたフィールドでライディングを楽しんでいる。だからこそ、スノーボードに適さない環境を補って余るほどの創造性を獲得したのかもしれない。
この地で生まれ育ったベニーは、幼少期からアイスフィッシングを目にしてきた。そして、可動式のレールとガス式のウインチを用意してアイスフィッシングハウスをアイテムに変貌させるという着想を得たのだ。
地元のプロアングラーであるトニー・キャプラ氏は「常に大物を狙おうという点では、スノーボーダーも釣り人も同じだと思う」と映像内で語っている。
ベニーはレニー・マゾッティら4人の仲間を招待し、地元の湖で数日間に渡りセッションを楽しんだ。最高気温0F°(約-18℃)、最低気温-18F°(約-28℃)の中で行われた極寒湖上スノーボーディング。地元の文化を介してフリースタイルスノーボーディングを表現するという、素敵なアウトプット術である。
photo: Ryan Taylor / Red Bull Content Pool