「オレはアイスランドの東フィヨルドで生まれ育った。思い出すかぎり、ずっとスノーボードをやっている。夏は漁業関係の仕事をしているので、冬はずっと滑り続けられるように頑張っているんだ。ボートに乗っているとき、自分の人生をどうしたいのか自問自答を繰り返していたことを覚えている。漁師を続けて裕福になりたいのか、それとも、好きなことをしたいのか。オレにとって、どちらを選ぶかは明らかだった。シンプルな生活をしてできるかぎりたくさん滑りたい、ただそれだけだった」
3分37秒あたりからこのように語っている本ストーリーの主人公、ルナル・ペートゥル。KORUA SHAPESクルーとともにアルプスの山々にターンを刻み込みながら多くの時間を過ごしてきたことで、地元が持つポテンシャルの高さを再認識した。アイスランド独特の風景に、自身のライディングスタイルを掛け合わせることで、美しいフィヨルドや連なる山々の魅力を世界中に発信したい。そのために、多くの人々に共感されるシンプルなスノーボーディングを表現することに重きを置いた。そして、できるかぎり海に近いローカルラインを選んだ。風によって形成された斜面に刻まれたトラックの数々は、海際から何時間もかけて登った証である。
バンの中で質素な生活を送っているルナルは、スノーボードに人生を捧げている。さながら、アイスランドのオレンジマンと言ったところか。数十年に一度という厳冬期に撮影が敢行され、本作品が誕生した。そんなルナルの生き様、ぜひご覧いただきたい。