BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

バックカントリーで「動き続ける」ために生まれたMYTHOGEN。水間大輔が語る、Mountain Hardwear史上“本当にヤバい”一着

2025.11.25

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1993年の創業以来、8,000m級の山々でも「行動し続けられる」高品質で耐久性に優れたウエアづくりを貫いてきたMountain Hardwear(マウンテンハードウェア)。その哲学をバックカントリースノーボーディングに落とし込んだ集大成ともいえるのが、今シーズン登場したMYTHOGEN GORE-TEX PRO JACKET / BIB だ。環境配慮型のメンブレン・GORE-TEX PRO ePE を採用しつつ、ハードな行動を前提に設計されたこのセットアップは、ブランドの新たな到達点といっていい。
 
その最終テストを任されたのが、Mountain Hardwearのサポートライダーであり、富山・立山を舞台にした映像作品『BIG DAY 大日』の主演としても知られる水間大輔。立山から長野・白馬まで、シーズンのほとんどをバックカントリーで過ごすスペシャリストは、MYTHOGENを「この価格帯でこれほどハイクオリティなものはまずない」と言い切る。
 
「ハードな環境で“動き続ける”ために作られたウエア」と語る水間の言葉をもとに、MYTHOGENシリーズの真価に迫る。

「ハードな環境で動ける」ことを突き詰めた、MYTHOGENという回答

「これまではBOUNDARY RIDGE(GORE-TEX JACKET / BIB)がMountain Hardwearのハイエンドモデルでした。GORE-TEXとしては生地が厚めなので、質実剛健な強さを持ち、ハードな環境にも耐えられるクオリティの高いウエアです。ここ3、4年くらいかけてその上を目指し続けてきた結果、本当にヤバいウエアが完成しました」
 
水間が最終サンプルのテストフィールドに選んだのは、富山・立山連峰の象徴ともいえる剱岳。3,000m級の稜線が連なり、滑落や雪崩のリスクも高い。一日に10時間近い縦横断を要するその山域での「登って滑る」テストは、ウエアの本質を問うにはこれ以上ない舞台だ。
 
「光栄なことに、グローバルライダーの数名で行う最終テスターに選ばれました。ウエアが届いたのが春先だったので、ベストなフィードバックをするために剱岳に登って滑ることに。そこで感じたのは、汗抜けのよさ、ハードな動きで擦れる生地の耐久性、動きやすいカッティング。まさにバックカントリーで行動するために作られたジャケット・パンツだと感じました」
 

製品化されたMYTHOGENのクオリティの高さを、春の立山で再確認する水間

 
Mountain HardwearがMYTHOGENでもっとも重視したのは、「ハードな環境でもどれだけ動き続けられるか」という一点だ。水間は、その設計思想をこう言葉にする。
 
「ウエアの一番の特徴として考えるべきことは、ハードな環境下で動けるかということ。“動く、汗をかく”っていう状況を想定して、汗抜けのよさだったり、動くことで擦れる部分の耐久性だったり、動きやすいカッティングだったり。行動できるように作ってあるジャケット・パンツっていうイメージですね」

 

春の立山でも高い透湿性のおかげで快適に行動できる

 

そのなかでも、水間が真っ先に挙げたのが透湿性だ。
 
「一番強く感じたのは、“汗とどう向き合うか”ということをすごく考えて作られていることです。ベンチレーションのジッパーがBOUNDARYよりも長く、ビブパンツを履いたままトイレを済ませられるように臀部にダブルスライダーファスナーが搭載されているんですが、これも汗をいかに効率よく発散させるかということにフォーカスしていますね」
 
その透湿性を支えているのが、新採用の GORE-TEX PRO ePEメンブレンだ。有機フッ素化合物を使用せず、従来のメンブレンより薄く軽量に設計されているため、製造・輸送時のCO₂排出量削減に貢献するサステナブルな素材でありながら、GORE-TEX PROの高い防水・防風性能と耐久性はしっかりとキープしている。

 

従来のGORE-TEX PROが持つ極限の耐久性を維持しながら、環境へ配慮した新素材を採用している点が最大の特徴
photo: Mountain Hardwear

 

「BOUNDARYより生地が薄くて透湿力が高いので、活動しやすいですね。そのうえで、めちゃくちゃ軽いんですよ。ゆったりめのシルエットがキレイに出るところも気に入っています。バックカントリーで活動するすべてのスノーボーダーが調子いいと感じられるウエアになっていると思います」
 
さらにMYTHOGENは、単体で完結するウエアではないというところも重要なポイントだ。
 
「MYTHOGENだけで完成ではなく、その中にKOR AIRSHELL WARMやAIRMESHを着てほしいんだと思うんですね。レイヤリングさせることを考えての薄さであり、軽さ。強さと軽さと汗抜きっていうのを、すべてMountain Hardwearのものを使いながら完成させていくイメージで作っているウエアだと思います」
 
高い透湿性で発散された汗を、アクティブインサレーションが適切に受け止め、汗冷えを抑える。MYTHOGENは、Mountain Hardwearが提案する“ウエアリングシステム”(レイヤリング設計)の中核に位置づけられたジャケット/ビブなのだ。


4つのポケットとジッパープル。ライダー視点で磨き抜いた「使い勝手」

実物を手にとると、多くの人がまず驚くのはその軽さだが、水間が真っ先に語り始めたのは、意外にもポケットの配置だった。
 
「ジャケットのチェストポケットは大型で使い勝手がいいですね。ガイドとして持ち歩いている野外活動帳や雪温計も簡単に入りますし、左のポケットはスマートフォン用の断熱ポケットになっています」

 

滑り手のニーズに合わせて多様な持ち物を収納できる大型チェストポケット

 

ビブパンツに目を移せば、特徴的な4つのポケットが目に入る。
 
「ビブパンツには4つのポケットがあって、下のポケットにゴムバンドがついているのでビーコンストッパーとして使って、左上のポケットにはケーブルリールを装着してスクレーパーを接続しています。右下のポケットにはゴーグル拭き、その上には財布を入れたり、リップや日焼け止め、地図を入れてもいい。多様な使い方ができるポケットの配置は抜群です」

 

山行でこの4つのポケットが大活躍する

 

雪山での行動に必要なツールが、すべて身体の正面で完結するレイアウト。細部へのこだわりは、ファスナーの引き手にも及ぶ。MYTHOGENの最終サンプル段階では、BOUNDARY同様に細引きが結ばれた仕様だったが、水間はそこに強い改善要望を出した。
 
「ヒモの先端にプラスチックでもシリコンでもいいから付けることで、外れないようにしてほしいと強く求めました。脱落防止パーツ付きのタイプに変更されて、厚手のグローブでも操作しやすくなったので、見た目も含めてものすごくよくなりましたね」

 

こうしたきめ細やかなブラッシュアップが、バックカントリーでの行動を大きく左右する

 

フロントファスナーや胸ポケットには、グローブのままでもかけやすい大ぶりのリング状プルを採用。襟元にはレーザーパンチングと開閉式センターフラップが配置され、口元に風を通しつつ、呼気の湿気でゴーグルが曇りにくい構造になっている。止水ファスナーを採用した脇下ベンチレーション、取り外し可能なパウダースカート、ブーツにフィットする裾のシンチ、そして3段階の調整が可能なフードと、きめ細かい機能が満載だ。

 

通気性を高める襟のレーザーパンチング

 

「吹雪のときにフードをかぶったまま滑ることがよくありますが、視界を確保しづらかったり、首の動きが制限されることがあると思います。MYTHOGENのフードはそんなことはなく、とても動きやすいんです」

 

3段階の調節が可能なヘルメット対応フード

 

ゆとりのあるワイドシルエットながら、動きに対する追従性は高い。
 

高い防水透湿性や耐久性など、高性能であることはMountain Hardwearにとって当たり前。そのうえで、動きやすさを追求し、“使い勝手のよさ”にとことんこだわった。ライダー目線のディテールワークの結果、Mountain Hardwear史上、最高傑作のスノーウエアが誕生した。


「信頼できるから命を預けられる」。バックカントリーで着るべき一着

バックカントリーというフィールドでは、ウエアは時にライフラインそのものになる。だからこそ、最後にあえて率直に聞いてみた。
 
このMYTHOGENに、命を預けることができるか。
 
「もう完璧だと思います。AIRMESHやKOR AIRSHELLなど、レイヤリングができていることが前提になりますが、しっかり汗抜けしてくれるし、圧倒的にウエアも早く乾く。活動するうえでもっとも怖いシチュエーションは、大汗かいて汗冷えで低体温になること。そのリスクはかなり低減します。AIRMESHが空気の層を作ってくれて、保温力を確保してくれる。MYTHOGENを身にまとい、レイヤリングも含めてひとくくりで、Mountain Hardwear最高レベルの完成度を誇ります」
 

極寒でも強風でも豪雪でも、MYTHOGENが滑り手の可能性を広げる
photo: Mountain Hardwear

 
水間の日常は、立山や白馬のバックカントリーにある。低温、強風、吹雪などの厳しい環境下で、長時間行動をともにするウエアに求められるのは、数字やスペックを超えた“信頼”だ。
 
「今の時代、いろいろなブランドにハイクオリティなウエアがラインナップされています。その中でも、MYTHOGENのクオリティをもってしてこの価格帯で買えるのは、奇跡に近いんじゃないかな。バックカントリーで登って滑る、すべてのスノーボーダーに自信をもってオススメできる逸品ですね」
 
では、既存のBOUNDARY RIDGEとの違いは何か。使い分けるとしたら、どんなイメージなのか。
 
「耐久性というか、生地の強さと、行動しないときの保温力はBOUNDARYのほうが上です。ゲレンデでリフトに乗っている時間が長いなら、裏地の起毛感もあってBOUNDARYのほうが暖かい。いっぽうMYTHOGENは、透湿性が高くて風も通るぶん、ゲレンデメインだと中間着をしっかり着込む必要があります。本当にバックカントリーに特化したウエアですね」
 

バックカントリーを目指すならMYTHOGENを相棒に選びたい

 
ゲレンデやサイドカントリーをメインとする滑り手にはBOUNDARYを、ハイクアップを繰り返しながら山を深く味わいたいスノーボーダーにはMYTHOGENを。
 

Mountain Hardwearは、そんな明確な住み分けを提示している。
 
「MYTHOGENを使う理由をひと言で言ってください」と投げかけると、水間は間髪入れず、こう口にした。
 
「信頼できるから」
 
スペック表では伝わりきらない、“現場での信頼”という価値。それこそが、Mountain Hardwearのバックカントリーラインが目指してきた場所であり、MYTHOGENが到達した答えなのだ。


MYTHOGEN™ GORE-TEX PRO JACKET

MYTHOGEN™ GORE-TEX PRO JACKET

▷サイズ: S〜L

▷カラー: 430 MOON BLUE BLACK(掲載モデル)、746 DESERT YELLOW OLIVE GOLD BLACK

▷価格: 132,000円

過酷なコンディションで信頼できる一着

MYTHOGEN™ GORE-TEX PRO BIB

MYTHOGEN™ GORE-TEX PRO BIB

▷サイズ: S〜L

▷カラー: 010 BLACK(掲載モデル)、255 OLIVE GOLD

▷価格: 110,000円

スノーラインの最高峰ビブパンツ

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Kenta Nakajima

Mountain Hardwear | 公式ページはこちら

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