BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【連載Vol.3】“MADAPOW”がなくても「斑尾高原」は面白い。人工地形✕自然地形で遊べる春シーズンがオススメの理由

2025.03.06

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日本最大級と言われる広大なツリーランコースに、トップシーズンは極上のフレッシュパウダーがコンスタントに降り積もる斑尾(まだらお)マウンテンリゾート。管理の行き届いたコースでお手軽&お気軽にバックカントリー体験を味わえるため、今シーズンも多くのパウダーフリークが訪れている。事実、2024年12月の売上が昨対比137%、2025年1月の売上は昨対比156%を記録したほどだ。
 
ただ、“MADAPOW”やツリーランのイメージの強さゆえに、「斑尾はパウダーがあってこそ」と考える方も多いのかもしれない。だが、実は降雪が落ち着いたスプリングシーズンも斑尾は非常に魅力的なリゾートなのだ。特にフリースタイルに遊びたい人にとってはなおさらである。それを証明するべく、降雪が落ち着いたタイミングを見計らって、本連載Vol.2に登場してもらった阿部祐麻とともに、再び斑尾を訪れた。
 

「滑る」「当て込む」「飛ぶ」が自由自在の人工地形パーク

前日からの降雪はまったくなかったが、雲ひとつない快晴に恵まれた3月初頭。フレッシュパウダーはどこにも見当たらないものの、リフト運行の開始時刻前には何人ものスノーボーダーがリフトゲート前に並んでいた。彼らの足下を見るとフリーライド系のボードに乗っている人も少なくない。
 
「妙高エリアのゲレンデって滑走距離の長いコースが多いんですけど、斑尾のように幅の広いバーンって意外と少ないんですよ」と第2クワッドリフト乗車中、左側に広がるジャイアントコースを見ながらユウマが呟いた。斑尾の圧雪クオリティは非常に高いので、面ツルの圧雪バーンは自分の思いどおりにターンを描きやすい。そのため、朝イチの締まったバーンには、心地よいロングターンを楽しむ人や鋭いターン弧のカービングで滑走する人たちによって次々とラインが刻まれていった。これからの時期、板がよく走る軟らかいザラメ雪にでもなろうものなら、パウダーに匹敵するほどの快楽を得られるということも覚えておこう。

 

リフト降車直後、コース脇に飛べるポイントがあったので迷わずフルオーリーからのシフトをかます

 

そんなターン愛好家たちが描くラインを横目に、この日、ユウマが最初に向かったのは、第2クワッドリフト乗車中に右側に見えるゾーン。今シーズンから新たに複数の人工地形が設置されたエリアだ。

 

どんなラインを描くか妄想中

 

もともと、そのコース脇は自然の壁地形になっているのだが、そこに人工的なバンクと壁を追加で造成。それらをターンで繋ぎやすいように片斜面を雪盛りして補正したり、第2クワッドリフトの架線下をくぐった先に連続した人工的なウネリを用意。ライダーズライトにもバンクが盛られていた。

 

地形パークをボトムから撮影すると、こんな感じ

 

その地形パーク(「フリーライドパーク」とう名称のパークが3箇所あるのだが、地形を活かしたゾーンを「地形パーク」と呼ばせていただく)でユウマは、バンク特有のGを活かしてテールに乗り込んだターンを繰り出し、壁地形ではボードスライドからの270アウトやジャンプ、ウネリでも飛距離のあるエアや当て込みを披露するなど、滑るたびに新しい遊び方にトライしていた。
 
「地形パークのあるゲレンデって斜度がないところが多いけど、斑尾は斜度もあってスピードを出して遊べるのがよかったですね。ウネリもタイミングを合わせればけっこう飛べますし、壁も当て込みやすかったです。あのゾーンは子供から年配の方まで、世代やレベルを問わず誰でも流して楽しめると思いました」

 

ターンのラストでテールに乗り込んでスタイルを出した

 

ボードスライドからの270アウト直前の1カット

 

壁地形を活かしたジャンプで浮遊感を味わう

 

また、この流せる人工地形パークの仕掛け人である、営業戦略部ディレクターの小林翔さんに造成した理由を聞いてみた。
 
「新雪が降りづらくなる3月に入っても、人工的に造った壁地形やウネリ、バンクなどを流せて楽しめるエリアを設けることで、パウダーがない時期も“斑尾って面白い”と思っていただけるように、今シーズンから新たに取り組み始めました。最近は、白馬五竜の『GORYU WAVES』や山形にある湯殿山の『R天国』など、人工地形コースが注目を集めています。斑尾には『SAWAコース』を筆頭に自然地形の面白いコースはあるんですが、こういった人工的な地形も楽しめるというのを、これからの強みにしていきたいんです。斑尾によく来ていただいているお客さんは、フリースタイルな動きを織り交ぜたフリーライドを楽しみたいという方も多いですし、そのニーズにも応えたかったんです」
 
この時代の流れを汲みとった地形パークは、すでに来場した多くのスノーボーダーたちの心をガッチリと掴んでいるそうだ。実際、本記事の撮影当日も多くのスノーボーダーたちが千差万別のラインを描いていた。


初級者からレベルアップできるフリースタイルパーク

地形パークだけでなく、やはり雪が緩むスプリングシーズンはフリースタイルパークでトリックを繰り出したくなるもの。根っからのフリースタイラーであるユウマも、キッカーやレールが設置されているパークが気になっていたので向かうことにした。
 
「フリーライドパーク」という名称ではあるが、スーパークワッドリフト乗車直後に左側に見えるエリアには、サイズの小さなテーブルトップやボックス、フラットレール、ダウンのドンキーレール、そして10m級のキッカーが並んでいる、まさにフリースタイルパーク。積雪量にもよるが、例年であれば1月の連休までにはパークの初心者レーンが造成され、その後にサイズの大きなキッカーが造られるそうだ。

 

スーパークワッドリフトから撮影したパーク

 

このパークは第2クワッドリフトでも回せるのだが、まずは全体像をつかむためにスーパークワッドリフトに乗車することに。すると、パークのアイテムをチェックをし終えたユウマは、その上部にある壁地形をしきりに気にしていた。
 
「普段よく滑っている妙高エリアのゲレンデって、天然の壁地形が少ないんですよ。その点、斑尾は至るところに壁がある。だから、リフトに乗っているときに、いろいろ見ちゃいますよね」
 
せっかくなのでリフト乗車中に気になっていたツリーランコースのラビットへ向かうことに。その出口部分はナチュラルパイプのような地形になっており、そこで華麗なエアをキメて気分をよくしたユウマは、そのままパークを流し始めた。

 

ラビットコースの沢地形で繰り出したステイルフィッシュ

 

ツリーランコースを流してからダウンレールでボードスライド(写真左)。からの、正面クォーターパイプでハンドプラント

 

「アイテムのレベル的には、初級者から中級者が楽しめるパークだと思います。正面クォーターやボウルなど、ほかのゲレンデにはなかなかないアイテムもあって面白かったですね。個人的には、森の中の沢で遊んでからパークを流すのが楽しかったです」

 

ファーストジャンプでフロントサイド360のテールグラブを放った。やや飛距離が出すぎたが、長いランディングの安全設計に助けられた

 

また、ジャイアントコースの上部は自然発生したコブ斜面があり、第2クワッドリフトを降りてキッカーに向かうまでには斑尾育ちの元オリンピアンのモーグル選手・野田鉄平氏がプロデュースするコブが続くコースがあるなど、フリーライドスキルを鍛えるのに適したエリアもある。多くのスノーボーダーが敬遠しがちなコブだが、ユウマはそこも颯爽と滑り抜けた。

 

「スノーボーダー的には、もう少し間隔があるコブ斜面が面白いかも?」と言いつつも、軽やかにコブを制覇した

 

コブが苦手だという人も多いかもしれないので、滑走時に意識していることを聞いてみた。「意識しているのは、ノーズのエッジから入れていくイメージで、あとはリズムよくエッジングできるように上半身をタイミングよく先行させていくことですかね」とのことだ。フリーライドスキルを高めつつ、フリースタイルパークで上達できる環境が斑尾にはあるのだ。


春はスピードを活かしてあらわになった自然地形を攻略せよ

地形パークやフリースタイルパークが設置されているのは標高の低いエリアなので、スプリングシーズンは日射しや気温次第では早々に雪がザクザクに緩みやすい。だからこそ、ユウマは朝イチのリフトに乗り込み、人工地形パークやフリースタイルパークを流しまくった。
 
「これからのシーズンは、朝イチにノートラックのグルーミングでターンを楽しんだり人工地形パークを流すのがいいですよね。ストップスノーになっちゃうと気持ちよさが半減するから。少し雪が緩んできたらフリースタイルパークで遊ぶのがいいと思う。それでも雪がザクザクになってきたら、いろいろなツリーランコースへ冒険に出たり、斑尾名物のSAWAコースへ行くのがいいと思うんですよ。ツリーランコースは日が当たりづらいので、メインコースの雪が走りづらくなっても滑りやすいことが多いので!」

 

迂回路ではフロントサイド180テールグラブを(写真左)。連絡通路でも地形変化を読みとりボードスライドを。どこでも遊び放題

 

SAWAコースに入るとユウマが再び目を輝かせ始めた。パウダースノーが降り積もっていたとき以上に、フリースタイルに遊びやすいことを瞬時に理解したからだろう。実際、ユウマは滑り終えて次のように語ってくれた。
 
「SAWAコースはパウダーのとき以上に楽しかったです。スピードを出しやすいし、踏まれていて地形があらわになっているからトリックも繰り出しやすいです。ひと言で壁地形と言っても寝ているところ、立っているところ、飛び越えられるところ、本当にいろいろな遊び方にトライできました。仲間と来て、『あそこで何かやろうぜ』って感じで撮影しながらセッションするのも面白いですよね。これからのシーズン、壁地形で遊びたかったら斑尾で間違いないっすね」

 

朝イチの地形パークで繰り出したアクションと同様の動きをSAWAコースでも織り交ぜて滑り去った

 

SAWAコースの出口付近まで遊び尽くすと誰もが汗だくになる。ユウマもそのひとり。だが、それでも遊びたくなる地形が連続するのがSAWAコースの魅力!

 

さらに付け加えるならば、斑尾はこのSAWAコース以外にも、ゲレンデ内に様々な地形が点在している。特に迂回路は地形の宝庫。ユウマが至るところでフリースタイルな動きをキメながら滑ったことは言うまでもないだろう。

 

リフト乗り場付近にある壁地形にて

 

ハイジ方面連絡路ですら、この地形!

 

3月に突入して降雪が落ち着いても、まだまだ斑尾は面白い。いや、むしろフリースタイラーにとっては待ちに待ったセカンドシーズンがスタートしたと言ってもいい。フリーライドしながらフリースタイルに遊べて、トリックの練習もたっぷりとできる。コブ斜面では総合滑走能力まで鍛えられる。パウダーのとき以上に、フリースタイル✕フリーライドなスノーボーディングを存分に楽しめる斑尾。このリゾートの面白さは、シーズンラストまで続くのだ。

 

阿部祐麻(あべ・ゆうま)
 

 
生年月日: 1993年1月13日

出身地: 新潟県南魚沼市

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text: HaruAki
photos: Gaku Hiramoto

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