FEATURE
【連載Vol.3】丸山隼人流「斑尾高原」の楽しみ方〈後編〉
2023.03.13
ターンの先にある楽しさ
この日はスーパークワッドリフトにすでに人が並んでいたこともあって、まずは第2クワッドリフトや第1リフトを利用して圧雪バーンでのカービングを楽しむことにした。
「面の整った圧雪バーンをただ気持ちよくターンするのも好きなんですが、自分たちはターンした先で遊びたいって想いが強いんです。だから、個人的にはカービングを楽しむなら、第13リフト乗り場から第15リフト乗り場のクリスタルが好きですね。そこは薄い段差や地形の“うねり”や“ねじれ”がけっこうあって、それを拾っていくとターンのGのかかり具合が変わったりします。もっと突っ込んで言うと、ひとつのターン、ひとつのラインのなかにボトムとトップの関係も作れる。ターンを繋ぎながらコース脇のバンク地形を当てていく。そういった滑りを日々楽しんでいます」
確かに前日もSAWAに向かう途中にそのポイントを通過したが、2人とも横移動の大きなターンを描きながら、とても楽しそうにカービングしていたのを覚えている。もちろん、この日も朝イチのジャイアントコースやパラダイスコースにある地形のうねりを拾いながら美しいエッジ跡をバーンに刻んだことは言うまでもない。
「斑尾は沢地形やバンクが多く、迂回路のジグザグだって面白い。アクセントになるポイントがたくさんあるんです。緩い斜面だったとしても、その日にキレイなグルーミングバーンを探すのも好きですしね。そして何より、オンピステ・オフピステを問わず、木々に囲まれた森の中で滑走できる環境が素晴らしいと思います。景色がよく、サイドカントリーのような里山の安心感もありながら、山にいるなって感覚で滑れる。より自然な地形を楽しむことができる、本当に楽しいゲレンデだと思いますよ」
滑り込めば上手くなる斑尾
第13リフト乗り場に到着すると、すでに人が並び始めていた。とはいえ、まだ運行開始まで時間があったので、ふたりはまずカービングをするのにお気に入りのバーンへとボードを走らせ、そこでのセッションがひと段落してから第13リフトで山頂へ向かうことに。
山頂に到着すると、ドロップポイントを目指してアドベンチャーアイルをレギュラーのヒールサイドでトラバース。ただ、ここはトラバースにミスした人たちで渋滞することの多いポイント。丸山と塚田のふたりは前方を滑る人との距離を十分に置いてからスタートしていた。そして、少々長めのトラバースを終えると、眼下には野尻湖と日本海を同時に望める絶景が待っていた。
その後はパウダーウェーブ2でのツリーランを楽しんだり、迂回路の壁に当て込んだり、沢地形を再び楽しんだり……。それぞれが思うがままのラインを描き続けた。これだけバリエーションが豊かな斑尾、滑り込めば絶対にフリーライドが上手くなる。滑れば滑るほどにそう思わされる、斑尾が秘めているポテンシャルの高さを改めて感じとることができた。
「上手くなろうと思って滑れば、きっとスキルは向上すると思います。斑尾はリフトの繋ぎとコースが横に広がるレイアウトで、トラバース要素が多く求められます。逆に言うとシンプルなトップ・トゥ・ボトムのコースはないのですが、例えば、アドベンチャーアイルでリッジを通ってツリーに向かうには、レギュラーのヒールサイドでのトラバースが必要で、コースとして考えると難易度はけっこう高いですよね。そういった行きたい場所に行けるようになることも含めて上手くなるんじゃないかなって。斑尾はツリーランがあって、パウダーもあれば、ボコボコのところも少なくありません。いろいろな経験ができたり、様々な滑りの修行ができるゲレンデだと思います。ピステンがかかったオープンバーン以外は地形はそこそこ複雑ですので、ある程度滑れる中上級者でも絶対に面白いって感じると思いますよ」
斑尾を120%楽しむための秘訣とは?
最後に、斑尾をもっと楽しむための秘訣を丸山に語ってもらい、「斑尾高原の楽しみ方」の短期集中連載の締めにしたい。
「自分の遊び方としては、ヒットポイントを上から見つけるだけではなく、滑りながら目線やラインを横に配っていったときに現れる地形を拾いに行くっていうことをよくやっています。壁地形や沢がまさにそうです。縦に落としてスピードや落差を求めるだけでなく、比較的安全なスピードの中でより重力と無重力を感じられるのが好きなんです。斑尾は圧雪バーンや迂回路でカービングができるし、至るところにサイドヒットがあります。トップシーズンには天気次第でいいパウダーも滑れる。集中して滑ると、足は確実にパンパンになりますよ(笑)。常に踏みっぱなしですからね。あと、道具に関してもアドバイスがあって……。ターンのキレ味がよくて、壁をよく上るようなボード、例えば、キャンバーがあまり強くないボードを選ぶと楽しめると思いますよ」
斑尾の地形ハントはこれからの季節が本番と言っても過言ではない。沢、壁、ギャップ、うねり……自身が描くライン次第では、まさに無数の楽しみ方が可能だ。丸山と塚田の滑り方や遊び方を参考にフリーライドの理想郷・斑尾を滑り込み、ライディングスキルや地形を見る目を養ってみてはいかがだろうか。きっと新たなスノーボードの世界が広がるはずだから──。
text: HaruAki
photos: Gaku Harada
edit: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)