FEATURE
【連載Vol.1】パウダーと自然地形が織りなすフリーライドの理想郷「斑尾高原」
2023.02.09
MADAPOWと称される極上パウダー
晴れた日には山頂から日本海が望め、ゲレンデのボトムが標高910mに位置するためコースの大半が1,000mを超える斑尾。トップシーズンともなれば、わずかに水分を含んだほどよくドライなフレッシュパウダースノーが、コンスタントかつ大量に降り積もる。シーズンにもよるが、年間積雪量は例年であれば最大3mにも達するという。だが、この地にパウダーフリークが多く訪れるのには、その積雪量以外にも明確な理由がある。
「積雪量で言うならば、妙高エリアに軍配が上がるかもしれない。だけど、斑尾にも十分な降雪があるし、何よりもコースのほとんどが北斜面で直射日光を浴びにくく、標高のわりに雪がいい状態のまま維持されるコースが多いんです。滑る面や人の流れを読むことで、パウダーを一日中楽しむことも可能です」
朝イチは極上パウダーだったのに、気がつけば太陽の光を浴びて重く扱いづらい雪に変わってしまった……といいう経験をこれまでにしたことはないだろうか。それが斑尾では、丸山が語るように雪はグッドコンディションのままキープされる。三度のメシよりパウダーが好きという人にはたまらない環境ではないだろうか。
だからこそ、降雪翌日にはパウダー愛好家たちが目をギラつかせて、ゲレンデ上部にアクセスするリフトに並ぶことも少くない。もし非圧雪のオープンバーンのコースをハイスピードで駆け抜けたいなら寝坊は厳禁だ。とはいえ、午前中であれば至るところにハジパウは残っているだろうし、午後になっても雪質が悪くなりづらいので、いろいろなコースを冒険しながらパウダーハントするのも、また一興だ。
飽きることのないコースバリエーション
斑尾は山頂に向かうほど斜度があり、さらに非圧雪コースが大半を占める。一方、山麓になればなるほどコース幅も広くて圧雪された緩斜面が増えてくる。それゆえ初心者にも優しく、山滑り師たちをも満足させるポテンシャルを持ち合わせているのだ。
斑尾にあるコースは全部で30。様々な表情をしたコースが揃っているが、非圧雪コースでパウダーを楽しむ以外にも、圧雪バーンは“うねり”や“ねじれ”のあるところも少なくなく3D感覚のターンを味わえ、迂回路であっても壁地形があちこちに点在しているのでフリースタイルに遊べる。とにかくフリーライディングが楽しい。それも斑尾の魅力である。
だが、斑尾を語るうえで筆頭に挙げられるのは、日本最大級のコース数を誇るツリーランだと断言していいだろう。現在でこそ、全国各地のリゾートがツリーランエリアを開放しているが、斑尾はその先駆者的存在なのだ。
今から遡ること14年前。バックカントリーの需要が高まるなか、管理されたコースとして自然に限りなく近い状態で提供する、をコンセプトに斑尾のツリーランコースの開拓は始まった。2009年、撤去したリフトの跡地と隣接する森を整備し、それをツリーランコースしとて開放。それ以降は1、2シーズンごとに1コースずつ増え、いくつかの統廃合を経て、今では10ものツリーランコースが存在する。しかも、緩斜面から急斜面までバリエーション豊かで、ツリーランデビューに最適なコースから、たとえパウダーがなくとも地形遊びを楽しめるコースまであるのだ。もちろん、すべてのツリーランコースはリフトでアクセスでき、ハイクアップは不要だ。
「個人的に斑尾の一番の魅力は、いいパウダーを当てやすいこともありますが、やっぱり地形の豊富さ。特に、ツリーランと沢地形にあると思います。さらに言えばコースのバリエーションが多いので、パウダーコンディションでツリーラン、自然地形、沢地形を楽しめるのが大きいですね。これはリゾートの運営、現場スタッフの方たちが、ツリーランや沢地形を滑りやすいように木をバランスよく間伐するなどして整えてくれているからだと聞いています。だからこそ、滑り手は安全かつ気持ちよく滑ることができる。そして、そんなコースがゲレンデの随所に散りばめられている。里山の森の中を身軽で快適に滑れる環境……これこそが、私たちが斑尾をホームマウンテンのひとつにしている理由です」
丸山隼人流・斑尾高原の楽しみ方
四半世紀以上もプロスノーボーダーとして活躍してきた丸山がホームマウンテンのひとつとしている斑尾。彼の話を聞いていると、そのポテンシャルの高さを実際に確かめたくなった。百聞は一見にしかず。彼が普段、どのように斑尾を滑っているのか、その楽しみ方や遊び方を共有させてもらうべく、密着させてもらった。
ということで、第2回目は、丸山が主宰する「SLOPE PLANNING」所属ライダーの塚田隆弘とともに、斑尾のパウダーと自然地形を滑り倒した日を振り返ることにする。彼ら流の滑り方を知ることで、今まで以上に斑尾が楽しくなるはずだ。
text: HaruAki
photos: Gaku Harada
edit: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)