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SPECIAL
あらゆるニーズに応える多様なパークをトップ・トゥ・ボトムで楽しめる【FREESTYLE MOUNTAIN Vol.4】
2023.03.22
コンセプトの異なるパークが連続する
今シーズンは昨シーズンほどの積雪に恵まれなかった川場だが、降雪機をフル稼働させるなどリゾート側の企業努力の結果だろう。現在は、昨シーズン同様に様々なコンセプトのもと造成されたパークが複数用意されている。
まずは川場のパーク全容について、パークとグラトリに特化したスクールを同リゾートで開校し、その校長を務めている高橋烈男に聞いてみた。
「大きなバンクが続くTHE SURF RIDE PARK、沢地形を活かして遊べるARBOR THE FREERIDE PARK、ジャンプやジブを楽しんだり練習できる長谷川篤プロデュースのFLUX PARKなど、今シーズンも多くのスノーボーダーが楽しめるパークが揃っています。スクールでもよく使うFLUX PARKは、上級者向けのアイテムもありますが、テーブルトップが中部と下部にあるので(3月15日現在)、昨シーズンよりも初級者が入りやすいレイアウトになっています。また、初心者にピッタリなハイクアップパークがFLUX PARKの上部にあるんですけど、昨シーズンまであった建物が取り壊されたことで、より広々としたスペースで練習できるようになりました。雪が少ないシーズンにも関わらず、様々なアイテムやセクションが造られているし、川場はもともと地形が豊富だから、シーズンラストまでゲレンデ全体を使ってフリースタイルな滑りが楽しめるはずです」
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レギュラー・フロントサイドの壁でクールなレイバックを仕掛けているのは、川場の支配人・坂本吉章氏。ARBOR THE FREERIDE PARKにて
photo: KAWABA RESORT
また、トップシーズンに川場のパークで遊んだ映像を、自身が手掛けるウエアブランド・BLUNTのInstagramにポストした戸田真人にも、そのインプレッションを伺った。
「いろいろな種類のレールがあるので、FLUX PARKは流して面白いっていう印象を受けました。BLUNTクルーで滑りに行ったときのエディットを観てもらえれば、その流して遊ぶ楽しさが伝わるかもですね」
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今年3月6日に撮影したFLUX PARKの上部はこんな感じだった
photo: KAWABA RESORT
このようにライダーをも満足させるFLUX PARKだが、高橋が説明するように、昨シーズンよりもパーク初級〜中級者がトライしたくなるようなアイテムが並んでいる。現在まっただ中のスプリングシーズンは雪が緩んでいるため、パークに対する恐怖心はトップシーズンよりも少ないはず。新たなトリックなどにトライするのも悪くない。
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高橋烈男プロ パーク&グラトリ スノーボードスクールでもFLUX PARKは使用される
photo: KAWABA RESORT
BACKSIDE的フリーライド×パーク攻略法
トリックの習得を目指すならば、同じアイテムに繰り返し入ることで、その動きを身体に覚え込ませるのがオススメだが、BACKSIDEの読者諸兄姉は、おそらくフリーライドもフリースタイルも欲張りに楽しみたい人が多いに違いない(そう信じている)。
そこで、BACKSIDEが推奨する川場でのパークの遊び方を紹介しよう。それは、トップシーズンの川場でフリーライドを楽しむときと同じように、趣向の異なるパークをトップ・トゥ・ボトムで流すというものだ。
さる3月15日。群馬・水上に拠点を置くアウトドアガイドサービス「ONE DROP」に所属する中山悠也と川場を滑る機会があったのだが、そのときの彼の遊び方がまさにそれだった。その日に撮影した写真とともに振り返ることにする。
まずゲレンデトップに到着すると、高手ダウンヒルでカービングターンを刻みながらライダーズライトの壁地形で当て込みまくり、THE SURF RIDE PARKへと向かう。このパークでキモになるのは連続するバンクをどう攻略するか。ターンでギュンと加速するもよし、レイバックやスラッシュを上げるもよし、だ。ただ、撮影日の朝イチはかなりバーンが締まっていたので、気温が低めの日はスピードに注意しよう。
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グーフィーフッターの中山は狙いを定めたラインでスピーディにバンクを駆け抜けた
ちなみに、かつて中山はここ川場でディガーをしていたこともあり、このTHE SURF RIDE PARKの印象を次のように話してくれた
「昔、この林道にバンクがあればなぁって思ってたところに、今はマクられず外にも飛び出さずっていういい感じのバンクがあることで、以前よりもコースの途中で立ち止まる人が少なくなったと思います。だから、けっこうスピードを出して滑れる。めっちゃ気持ちいいですね」
その後は、クリスタルコースに合流する直前にレイアウトされているCRYSTAL WAVEへ。ここは迂回路のような細いコースにウェーブが連続しており、独特の浮遊感を味わえるのが魅力だ。もちろん、ウェーブの起伏を利用してスピンやタップなどのトリックを繰り出すのもアリ。ただし、上手な人ほどウェーブ後半にかけて自然と加速しているので、速度調整は怠らないように!
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CRYSTAL WAVEで軽やかなシフティ・テールタップを織り交ぜながら楽しそうに流す中山
連続ウェーブを通過してクリスタルコースに合流し、左右にある壁地形を数回ほど当て込めば、すぐにARBOR THE FREERIDE PARKが待っている。
「壁地形をバンクとして使ってターンしたり、バター系のトリックを繰り出したり、ギャップで飛んで180や360を仕掛けてラインにアクセントをつけるなど、地形を活かして自分でラインを決められる楽しさがありますね」と中山が語るように、ここは滑り手の創造力が試されるパークとなっている。
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その名のとおりバターを塗るように壁地形を攻略
アグレッシブに遊べる季節はこれから
ここまでノンストップで攻め続けてきた人であれば、きっと脚がパンパン状態のはずなので、一度、FLUX PARKの上部で小休憩するのがオススメだ。もちろん、脚を休めている間に、これからドロップする先に待っているフリースタイルパークでどんなラインを描くか、どんなトリックを繰り出すか、をイメージしておこう。ほかのパークと同様に気温が低い日の早い時間帯はランディングが硬いこともあるので、いきなり攻めすぎないように!
FLUX PARKを滑った感想について、中山に聞いた。
「まさにザ・パークって感じ。最初のキッカーはちょっとアップ系で玄人向けかもしれないですが、そんなにスピードがなくても浮遊感があって気持ちよかったです。まだランディングが硬いときは、ジャンプに自信がなければファーストキッカーは避けたほうがいいかもしれないですね。それにしても、川場にあるパークを上から下まで滑ると、本当にいろいろな遊びができる。最高ですよね」
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縦回転や3Dスピンなども披露していたが、中山がもっとも気持ちよさそうに宙を舞ったのが、このメソッド・トゥイークだった
常に様々なスノーボーダーのニーズを満たすために試行錯誤を止めないホスピタリティが、川場にはある。これから雪解けが進んでも、積雪状況に合わせてディガーが最適なアイテムやシェイプに変更してくれるだろう。雪解けにより、残念ながら遊べなくなってしまう壁地形も出てくるが、川場は目を凝らせば至るところにヒットポイントがあるし、バンクは多くの人が入ることで育っていくだろう。
ただ、どんなコンディションであろうとも言えることがある。上から下までイメージどおりのラインやアクション、トリックで繋ぐことができたとき、その充実度はハンパないということだ。
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晴天率が高い春は、この中山のように“映える”写真も多く残せるだろうから、仲間と撮影会をするのも面白いはず!
首都圏から約2時間でたどり着くFREESTYLE MOUNTAINのシーズンは、まだ終わらない。いや、むしろ自分の限界に挑戦できるシーズンは、これからが本番。「あと1ヶ月しかない」じゃない。「まだ1ヶ月もある」のだ。
text + photos: HaruAki
edit: Daisuke Nogami(Chief Editor)