BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

首都圏から2時間の「川場」がアップデートを重ねる理由。今シーズンも“滑りたい山”であり続ける背景に迫る

2025.12.27

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首都圏からおよそ2時間という好立地。アクセスのよさや関東とは思えないドライスノーが魅力の川場スキー場だが、それだけでは本質を語りきれない。
 
シーズン序盤からトップ・トゥ・ボトムで3,300mを滑ることができるゲレンデ整備力、地形を活かすための圧雪技術、ハイエンドモデルを試すことができるギア環境、そして滑る時間を削らず、有意義な一日にするための施設設計。
 
今シーズンの川場を読み解くと、そこには“快適さ”の裏側にある、地道で一貫した思想が見えてくる。

3,300mを“気持ちよく”滑り切るために──降雪機とPistenBully 600が造る川場のバーン

群馬・川場スキー場の強みは、単に雪がいい、アクセスがいいといった表層的な話では終わらない。それをもっとも実感できるのが、シーズン序盤のコンディションのよさだ。
 
近年、川場では人工降雪機への継続的な投資が行われてきた。その結果、12月の段階からトップ・トゥ・ボトムで最長3,300mを一気にライディングできるポテンシャルを備えている。関東圏のゲレンデにおいて、この早い段階でのロング滑走は、決して当たり前ではない。

 

晴天の代名詞「川場ブルー」に恵まれた日のロングクルージングは格別

 

今季、そのベースをさらに引き上げる存在として導入されたのが、ケースボーラー社の圧雪車・PistenBully 600である。急斜面の整備や大量の雪出しにも対応できる高出力に加え、作業効率の向上、燃費性能の改善による環境負荷軽減、そしてオペレーターの負担軽減。数字やスペックの話を並べることもできるが、スノーボーダーにとってもっとも重要なのは、朝イチの一本目で感じるバーンの質だろう。
 
川場のロンググルーミングバーンは、ただフラットでキレイなだけではない。これまで弊ウェブマガジンで何度も触れてきたように、川場は地形の起伏が豊富なゲレンデである。その地形を“殺さずに”圧雪している点が、このゲレンデの特徴だ。圧雪バーンの精度が上がることで、地形のエッジがよりクリアに立ち上がり、自然な起伏を使ったターンや遊びが際立つ。

 

ドライスノーが降り積もったバーンを美しくグルーミング

 

スピードを出しても安心感があり、流しながらも遊べる。PistenBully 600の導入は、単なる快適性の向上にとどまらず、川場らしい地形遊びを、より楽しくするためのアップデートだと言っていい。
 
さらに、非圧雪ゾーン「OFF THE PISTE」は今シーズンから全5エリアに拡大。西峰ダウンヒルと高手ダウンヒルの間に新エリアが加わり、圧雪と非圧雪を行き来しながら、一日の中で滑りのリズムを組み立てられる。

 

この看板がOFF THE PISTEの目印

 

また、「FIRST TRACK CAT SERVICE」で使用されるキャット(雪上車)に、今シーズンからVOLCOM(ボルコム)のラッピングが復活した。VOLCOMファンに限らず、印象的なデザインのキャットに乗り込めば、朝イチの面ツルバーンを滑る高揚感も自然と高まるだろう。

 

VOLCOMらしさ全開のキャット

 

昨シーズンに引き続き開催される SNOWBOY PRODUCTIONS「MOCHIYORI」のような取り組みも含め、川場は“整ったバーン”と“自由な遊び”が同居するフィールドとして、着実に成熟している。


川場が“試せる場所”である理由──PREMIUM RENTALとライディング環境の進化

川場を語るうえで、もうひとつ欠かせないのが、ブランドとの距離感だ。ほかの多くのゲレンデと比べても、川場はスノーボードブランドとのタイアップに積極的であり、その姿勢は長年変わっていない。しかし、それは単なるロゴ露出や協賛の話ではない。
 
スノーボードシーンのトレンドをどう捉え、どんな滑りを楽しんでほしいのか。そうした思想が、施設やサービスの細部にまで反映されている。今シーズンからフルリニューアルされた「POWDER SHAPE PREMIUM RENTAL」は、その考え方を体感できる存在だ。このレンタルは、いわゆる“手ぶら対応”の延長線上にはない。むしろ、「気になっていたギアを、ベストコンディションの雪の上で試す」という体験に主眼が置かれている。
 
JONES SNOWBOARDS(ジョーンズ スノーボード)の常設展示をはじめ、BURTON(バートン)の定番モデルであるCUSTOMやSTEP ON、FLUX(フラックス)、DC(ディーシー)、LIB TECH(リブテック)といった主要ブランドの最新モデルが揃う。さらに今シーズンはSTEP ONだけでなく、話題のFASEシステムもレンタル対応している点は見逃せない。

 

まるでプロショップのような雰囲気のPOWDER SHAPE PREMIUM RENTAL

 


スペックだけでは判断しきれないシステムの違いを、実際のライディングで体感できる場所は、決して多くない。GENTEMSTICK(ゲンテンスティック)のテストセンターが常設されていることも含め、川場は「ギアを買う前に理解する場所」としての役割を担っている。これは、スノーボードを単なる消費物としてではなく、カルチャーとして大切にしてきた川場の姿勢そのものだろう。
 
加えて、今シーズンからは登山カウンターが常設化された。OFF THE PISTEや登山受付を一本化することで動線が整理され、滑る前の準備に余計なストレスがかからない。

 

新設された登山カウンターもオシャレ

 

PREMIUM RENTALと合わせて考えると、川場は今シーズン、「滑りそのものに集中できる環境」をより明確に整えてきた印象を受ける。

 

川場が誇るドライパウダースノーを、心ゆくまで楽しめる

 


“滑る時間を削らない”ための進化──川場が積み重ねてきた快適性

川場の進化は、ゲレンデやギアだけにとどまらない。ここまで触れてきたように、川場は「滑る時間をいかに削らず、有意義にするか」という視点で、施設全体をアップデートしてきた。
 
象徴的なのが、雪や風を気にせず準備できる立体駐車場だ。今シーズンはそこにゲートシステムが導入され、入庫時の混雑緩和が期待されている。朝や帰り際の数分。その積み重ねが、一日の満足度を大きく左右することを、川場はよく理解している。

 

混雑する週末の駐車場がより快適に

 

館内では、「BOARDRIDERS JAPAN OFFICIAL POP UP STORE」がオープンし、川場でしか手に入らないアイテムが並ぶ。女性専用パウダールームには、イラストレーター・AMI OTSUKAによる壁面アートが施され、無機質になりがちな空間に柔らかな温度が加えられた。

 

ゲレンデの面白さだけじゃない、川場ならではの進化

 

そして、川場の楽しみを語るうえで欠かせないのがゲレ食だ。これまでも個性的な店舗が揃っていたが、今シーズンは神奈川・厚木で人気のラーメン店「うまか丸」監修による、本場の博多豚骨ラーメンが新たに加わった。生麺を使用し、辛子高菜で味を変えながら食べ進められる一杯は、ゲレ食の域を軽く超えている。

 

冷えた身体を温め、ライディング後の空腹を満たしてくれる

 

NSDキッズプログラムの継続や、自動発券機SKIOSKの増設なども含め、川場のアップデートは派手さよりも実用性に重きを置いている。

それは結果として、「また来たい」と思わせる体験につながっているのだ。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

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