BACKSIDE (バックサイド)

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SPECIAL

若き表現者 久保田空也が衝撃デビューを飾るスキルを体得した川場スキー場の真価【KAWABA LIFE Vol.2】

2023.12.21

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2シーズンに渡り、「FREESTYLE PARADISE」「FREESTYLE MOUNTAIN」と銘打ち、内陸ならではのドライスノーや豊富な自然地形について言及した連載記事をお送りしてきた川場スキー場は、今シーズン、“滑り手”にフォーカスする。川場とゆかりのあるトッププロから一般スノーボーダーまでが“それぞれの川場ライフ”を語る連載企画がスタート。
 
Vol.2に登場するのは、國母和宏のお眼鏡にかなった若手ライダー集団「INK MOVIE』のメンバーに抜擢され、国内最強メンバーを揃えた『STONP OR DIE』の撮影に参加した若き表現者、久保田空也だ。彼は川場のディガーを務めていた経験があるため、この山を知り尽くしている。空也の言葉から川場の真価を探っていく。

川場名物の“壁地形”で培ったスキルをひっさげ衝撃デビュー

オリンピックを頂点としたFIS(国際スキー・スノーボード連盟)や、その傘下にあるSAJ(全日本スキー連盟)の大会に参戦しながらスキルに磨きをかける若手ライダーが多い中、本記事の主役である空也は、いわゆる競技の道には進まなかった。小学5年頃から、プロスノーボーダーを目指した。
 
「大会は大会でも、自分が好きなメーカーのイベントに出ていました。VOLCOM(ボルコム)の『PEANUT BUTTER AND RAIL JAM』やDRAGON(ドラゴン)の『D.D.S』みたいなイベントですね」
 
このようにして、メーカーの目の前で実力を示すことでスポンサーを獲得していった空也。現在、VOLCOMライダーである空也は奇しくも、同ブランドの大先輩にあたるヤットこと吉野康人がスノーパークを手掛けるゲレンデで幼少期は滑り込んでいた。ヤットの後押しはなかったそうだが、まだノースポンサーだった当時、PEANUT BUTTER AND RAIL JAMで優勝するなど活躍が目立つようになると、ヤットと同じくVOLCOMの大先輩にあたる浜直哉に目をつけられることに。気に入られた空也は、当時直哉が働いていた川場でディガーを務めることになるのだ。
 
「17歳くらいだったので免許をまだ持っていなくて、寮が川場と町の間くらいの中途半端な位置で何もなかったので、ひたすら滑り込んでいた時期です(笑)。その前はパークが有名な新潟のゲレンデにコモっていました。当時の川場のパークはポコジャンとジブがメインだったため、壁地形を利用して遊んでいました。毎日滑っていたので、クリスタルコースの壁にハイスピードでラインをつけて飛べるように育てていましたね。そのシーズン、初めて『AIRMIX』に一般の部から出たんですけど、招待ライダーが登場するトーナメントまで残れました」

 

クリスタルコースの壁は飛ぶだけでなく、パウダースノーを切り裂きながらも楽しめる

 

パークで培ってきたトリックのスキルに、川場の壁地形で磨きをかけたトランジションでの滑走力が掛け合わさり、増田塁揮や角野友基らトップライダーたちと同じ土俵に立つことができた空也。そこで、無名ながらも巨大なメソッド・トゥイークを決めた直後、自身が乗っていたLIB TECH(リブテック)を取り扱うアドバンスマーケティングの社長との衝撃的な出会いが待っていた。
 
「マイクさん(宮沢武久氏)直々に写真を撮ってくれていたんですけど、ランディングした直後に、「勝手にうちの板に乗ってんじゃねぇよ。うちと契約しろよ」みたいな感じで言われて(笑)。そこでLIB TECHとの契約が決まったんです」
 
「パークでトリックの練習をしたほうが身体の動きは覚えやすいと思うんですけど、パークのジャンプと自然地形で飛ぶことはまったくの別物だと思います。川場にいるとき壁地形を使って遊んでいたから、スノーボードそのものが上達したのかなって、今振り返ると感じますね」

 

壁ばかりでなくあらゆる自然地形が点在している

 

川場名物の“壁地形”が、空也の人生を変えたと言っても過言ではないのかもしれない。


北海道並みのドライスノーが楽しめるツリーエリア「OFF THE PISTE」

「川場の雪質は北海道並みだと思います」
 
先述したように、スロープスタイルやビッグエアなどコンテストの結果ではなく、己を表現することでスポンサーを獲得していった空也は、20歳でプロとしてスタート地点に立った。競技者に比べると遅咲きに聞こえるが、そのビジョンは明確そのもの。カナダ・ウィスラーへ2シーズン渡り、その間、レベルストークでも滑り込んだ。帰国後、北海道はもちろん、あらゆる雪山でバックカントリーフリースタイルに明け暮れている。
 
その空也に当時の川場を振り返ってもらうと、冒頭の言葉が発せられた。
 
「風が強い日なんかは、吹き溜まりがすごくて。昨日まではなかったはずの壁がいきなりできていたりする感じで、地形の変化も楽しめます。川場は雪質と風で楽しくさせてくれる場所ですね。(風に)叩かれて硬いところはめっちゃ硬いですけど(笑)」

 

都内から約2時間の距離に位置するとは思えない極上パウダースノーを撒き散らす空也

 

川場が解放しているツリーランエリア「OFF THE PISTE」は当時なかったため、空也はコソコソ楽しんでいたそうだが(笑)、その面白さを深く知っている。
 
「ツリーの中に入れば、風が吹いていてもめちゃくちゃいい雪が溜まってる場所がたくさんあります。そこまで雪が降っていなくても、『あれ、けっこう溜まってるなぁ。しかも、めっちゃ軽いじゃん』みたいなこともありますしね。パウダーハントのコツですか? そこまで大きいゲレンデではないので、全コース滑って探していました。逆に、それができる規模なところもいいですね」
 
小学5年時に思い描いた夢が実現し、現在はプロスノーボーダーとして、空也は世界中の雪山で己を表現している。本記事の写真は2シーズン前に撮影されたものだが、ディガーとして修行していた地にプロとして帰ってきた。
 
「OFF THE PISTEは、プロスノーボーダーになった気分で滑ることができるんじゃないでしょうか。一般的には滑走禁止のエリアを解放してくれているところが、特別感があっていいですね。当時はコソコソしていたので(笑)、解放してくれている今は最高だと思います。木を切ったわけでもないし、昔と何も変わっていませんでした。そう考えると、一般のスノーボーダーからすれば、本当に特別な場所ですよね」

 

空也はオーリーを仕掛けて、ハイスピードのままOFF THE PISTEに突っ込んでいく

 

OFF THE PISTEは4エリア解放されており、専用ゲートは5箇所ある。事前に講習動画を視聴したうえで、受付カウンターへ。合意書に署名し、ココヘリレンタルに申し込み(1,100円)、エリア入場腕章を受けとれば専用ゲートからドロップインできる。すでにココヘリに加入している場合は、講習動画を見て合意書に署名するだけだ。今シーズン、プロスノーボーダー気分を味わいに川場を訪れてみてはどうだろう。


個性的な4種のパークと贅沢な「FIRST TRACK CAT SERVICE」

これまでも川場には、フリースタイルに特化した「FLUX PARK」、地形を活かした「FREE RIDE PARK」、パークビギナーにも優しい「EASY PARK」、期間限定でオープンする「SURF RIDE PARK」と4種のパークが用意されていると弊ウェブマガジンではお伝えしてきた。空也はポコジャンとジブが多いと当時のパークについて言及していたが、現在のそれについては次のように評価している。
 
「壁に当て込めるパーク(FREE RIDE PARK)を滑ってからFLUXパークに入れるので、その流れがすごくいいですよね。FLUXパークは初中級者向けに感じるかもしれませんが、上級者でも楽しめると思います。ジブがちょっと多めですけど、アイテムを置いている台の側面がバンクになっていたので、ジブで遊びながらバンクにも当て込むなど、ラインを見つけながら滑ることできて、オレは楽しいなって感じました。コンパクトながら凝縮されていて、いろいろなジャンルの遊び方を上から一本のラインで楽しめるゲレンデだと思います」
 

春先に出現するSURF RIDE PARK

 
春になればバンクが連なるSURF RIDE PARKが出現するため、サーフライクに攻めてから地形遊びに興じ、最後にトリックを決めるという豪華ルーティンを組むことが可能になる。足腰パンパンになること請け合いの、充実した一本が約束されているのだ。
 
また、VOLCOMのラッピングがほどこされたキャットを利用したサービス「FIRST TRACK CAT SERVICE」も、空也はよく利用している。
 

誰もいないゲレンデにキャットから降り立つ瞬間

 
「VOLCOMがファーストトラックのイベントに呼んでくれるので、ちょこちょこ川場には来ています。名前のとおりファーストトラックなので、どこを滑っても気持ちいいですよね。もちろんツリーに入ってもいいんですけど、僕の場合はあえてコースを滑ることが多いかもしれません。雪質がいいので、朝イチのカービングターンがめちゃくちゃ気持ちいいんです」
 
フリーライディング力を磨くことができる壁地形、北海道に匹敵する極上のパウダースノー、充実した多様なパーク、そして、朝イチのゲレンデで誰よりも先にライディングを楽しめる贅沢なサービス。ディガーからプロスノーボーダーと立場は大きく変われど、空也にとって川場は、今なお特別な場所なのだ。

 

久保田空也(くぼた・くうや)
 

 
生年月日: 1997年5月9日
出身地: 滋賀県長浜市
スポンサー: LIB TECH、VOLCOM、DRAGON、UNION、VANS、LADE SNOW、ESPERANSA FUKUI
photo: HOLY

interview + text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: kuwaphoto

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