COLLABORATE BRANDS
自社開発工場「ARC」から生み出されたK2プロダクトの最高傑作たち
2021.12.25
開発したらすぐに試せる好環境がクオリティを高める
開発したらすぐに試せる好環境がクオリティを高める
ARCとは「Advanced Resource Collective(進歩的な技術資産を持つ共同体)」という意を持つ、米ワシントン州シアトル郊外に位置する40,000平方フィート(約3,716平方メートル)の施設である。スノーボードやスキーのプレス機、3Dプリンター、チューニングマシンなど、ボード製造に必要なすべての機械が完備されており、一度に一定量の製品を作ることができるバッチ生産が可能。すべての製品は生産に入る前、エンジニアとイノベーターによるコンピュータを利用したシミュレーションはもちろん、40フィートある低温テスト用の冷凍庫や、カスタムの強度&耐久性のテスト装置などを利用し、テストラボで徹底的に検査されている。
そして特筆すべきは、ARCから日帰り圏内にライディングテストに最適な、バリエーション豊富な自然地形に恵まれた雪山がいくつかあること。K2のグローバル・マーケティングディレクターを務めるトーマス・ジョンソン氏は次のように説明する。
「アルペンタール、クリスタルマウンテン、スティーブンスパス、マウントベイカーなど、日帰り圏内にワールドクラスのリゾートがあるK2の研究開発センターは、あらゆるスノーボードブランドにとって理想的な場所です。ARCではボードのシェイプやサイドカット、グラスファイバーのハンドレイアップ成形など、さまざまなテストを行うことができます。また、エンジニアやチームライダーが近郊の雪山で製品をテストし、この地球上で最高のスノーボードを開発するために変更を加えることができるのです」
ARCから1時間ほどの距離に位置するアルペンタールは、急峻な斜面と豊富な降雪量を誇る。1時間半ほど車を走らせれば、素晴らしい雪質と幾多の自然地形を有するクリスタルマウンテンがあり、2時間圏内にはサイドカントリーやバックカントリーに恵まれた地形が多く点在するスティーブンスパスが。さらに足を伸ばせば、スノーボーダーの聖地として知られるマウントベイカーが出迎えてくれるのだ。
こうした好環境で、K2製品はすべてライディングテストを行っている。そのテストにはグローバルプロ・アマチームはもちろん、ローカルライダーたちも参加。だからこそ、あらゆるフィールドに適応する幅広いボードラインナップを誇るばかりでなく、あらゆるライディングレベルのスノーボーダーにフィットするプロダクトが生み出されている。
ARCとチームの総力を結集させ完成した究極のフリーライドマシン
ARCとチームの総力を結集させ完成した究極のフリーライドマシン
ブランドストーリーをご一読いただければわかるとおり、スノーボードが商品化する四半世紀前からスキーを作り続けてきたK2。スキーのプロトタイプもARCで作られているため、その歴史ある技法はスノーボードの製造にもシェアされている。
こうして誕生したフリーライドコレクションの最上位ボードが「ALCHEMIST」だ。クモの巣状にコア材をカーボンで覆うことで、精密に調整されたフレックスとねじれを実現するスペクトルブレードを採用。縦方向のフレックスとは別に、ボードのねじれにあたるトーションを調整することができるのだ。これはK2の特許であり、可変角度補強を施すことで高い機動性を保ちながら、確実な安定性と操作性を発揮する。また、ノーズとテールを硬くしてもセンター部をリラックスさせることにより、ターンの始動が容易に。この圧倒的な駆動力はスキーからのフィードバックの賜物である。
そのうえで、スノーボードチームの協力を得てハードなライディングに耐えられる頑丈な構造にするため、幾度となくARCでテストと調整を繰り返して開発された。スペクトルブレードを施す芯材にはバンブーコアを使用し、耐久性の高い3種類の木材をブレンドして作られた新しいバンブーヤ・プロコアを使用している。バンブーとアスペンを足元に30°の角度で配置することで、両足間で作用するエッジングのレスポンス力をさらに高めた。
以外にも、スペースグラスやカーボンパワーフォークがコア材に加えられ、ソールにはカーボンインフューズド5500シンタードベースを採用。もっとも優れた最新テクノロジーを掛け合わせたことで、チームライダーのカーティス・シゼックが太鼓判を押すフリーライディングボードが誕生した。
「ALCHEMISTは、急斜面やディープパウダー、テクニカルな地形でも100%の自信を持って滑ることができる一本です。リゾートでもこのボードを愛用していますが、より大きなラインやバックカントリー、サイドカントリーでライディングするときにも欠かせない、あらゆる地形を完全に制覇できるボードなんです」
ALCHEMISTは、すべての上級者からエキスパートレベルのスノーボーダーへの贈り物である。
ムービースターが求める細やかなテクノロジーを具現化
ムービースターが求める細やかなテクノロジーを具現化
複数のチームライダーによるフィードバックをもとにALCHEMISTが誕生したわけだが、プロスノーボーダーである彼らのライディングスタイルは千差万別。ライダー一人ひとりのニーズに合わせたプロダクトを開発する際にも、ARCの強みが最大限に活かされる。彼らのフィードバックがダイレクトに反映されるからだ。
2018年、スノーボード界のアカデミー賞に位置づけられるライダー授賞式において、プロスノーボーダーたちがもっとも重要視しているビデオパートの年間大賞に選ばれたチームライダーのジェイク・クジック。ストリートを主戦場としているジェイクが求める高い基準に合わせて「MEDIUM」は開発された。
ジェイクはMEDIUMについて、次のように語っている。
「どの角度から見ても常に美しいボードを求めていました。それがもっとも重要だったんです。どんな環境でも上手くコントロールできる伝統的なシェイプが、まさにこのMEDIUM。このボードに乗ると何もかもを忘れて、ただ目の前にあるセクションで楽しく滑ることに集中できます。カーボンを加えたことでノーズとテールの切れが非常によく、そして、伝統的なキャンバーがボードにポップ力を与えているんです」
ハイオーリーが求められる場面が多いストリートだけに、ボードの反発力は欠かせない。オーリーバーと呼ばれる、キャンバーシェイプに形成された素材をインサート間に組み込むことでスナップ力が向上。また、カーボンファイバーを足元からコンタクトポイントまで絶妙に配することで、レスポンス力や安定感がアップし、パワー伝達が容易になった。このカーボンダークウェブと称されるテクノロジーの効果により、あらゆる建造物が入り交じるため細かいエッジ・トゥ・エッジを駆使したラインどりが要求されるストリートスポットにおいて、安定した操作性が提供されるのだ。
飽くなき探究心で生み出される独自のテクノロジー
飽くなき探究心で生み出される独自のテクノロジー
また、10年以上に渡りK2ブーツのアイコンとしてベストセラーを誇る「MAYSIS」も、もちろんARCから誕生した。耐久・防水・防寒などあらゆるテストがARCで繰り返される中、ライナーレーシングシステムであるBOA®コンダを開発。ライナーとヒールの締め具合を外側から調整することができる機能だ。ウレタン製のコンダハーネスチップが足首を優しく包み込み、熱成型可能なインチューションコントロールフォームライナーの効果も相まり、快適なホールド感を提供。10年以上前からBOA®システムをブーツに搭載していた先見性に加え、あらゆるニーズに真摯に耳を傾けながら妥協なき開発を続けてきたからこそ、独自のテクノロジーが生まれたわけだ。
チームライダーのティム・エディはMAYSISについて、「毎日、どんな地形でもMAYSISを履いています。BOA®コンダはかかとの浮きを抑え、箱から出して50日後のブーツでも同じようにフィットします。インチューションコントロールフォームライナーは贅沢そのもの。とても気に入っています」と述べている。
常にシーンを牽引していこうと努力を惜しまないハングリー精神あふれるエンジニアたちは、ボード、バインディング、ブーツと部門を問わず日々チャレンジし続けている。そして、あらゆるフィールドで活動しているチームライダーたちの理想を追求することで、プロダクトは日々アップデートされていく。ARCでの日常が、スノーボードの可能性を押し広げているのである。