INTERVIEW
役者が出そろう“五輪超え”の前哨戦で表彰台独占を示唆。「LAAX OPEN」の現場で村上大輔が語る、日本ハーフパイプチームの強さ
2026.01.15
ミラノ・コルティナ五輪への代表選考が最終局面を迎えるなか、スノーボードの聖地として知られるスイス・ラークスで伝統の一戦「LAAX OPEN」が開幕した。FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)として行われる今大会、その最前線で指揮を執るSAJ(全日本スキー連盟)スノーボード・ハーフパイプチーム(トップチーム担当)チーフコーチ・村上大輔に話を聞いた。
村上はソルトレイクシティ、バンクーバー五輪を日本代表として経験し、中井孝治や國母和宏らと同時代を滑ってきたトップライダーでもある。当時よりもはるかにトリックは高難度化し、巨大化した現代のハーフパイプにおいて、攻めるほどに高まるリスクとどう向き合っていくのか。
日本が世界最強チームであり続ける理由が、その言葉から浮かび上がってきた。
オリンピック以上にハイレベルな、世界最高水準のバトル
ラークスのハーフパイプは世界最高峰。しかも、国ごとの出場枠が制限されるオリンピックとは異なり、W杯は各国の精鋭たちが多数参加する。特に日本は常に6人前後が上位に名を連ねるため、ここでの戦いは“五輪予選”という枠を超え、世界最高濃度のバトルへと昇華する。
──公式練習2日目を終えました。今の日本チームの雰囲気は?
「『THE SNOW LEAGUE』も含めてラークスまでに4大会を消化してきましたが、男女ともに大きなケガもなく、全員がいいコンディションを維持できている。非常に手応えを感じています」
ハイリスク時代の「リスクマネジメント」という核心
トリプルコークや1620など、ハーフパイプの難易度は格段に上がった。ライダーたちの背中を押しながら、時にブレーキをかけなければならない。その繊細なバランスこそが、現在のコーチングの核心だ。
──トリックは著しく進化し、高さ約7mの巨大なハーフパイプで攻めなければ勝てない。そのため、リスクは非常に大きい。コーチングするうえでの難しさは?
「とても難しいですが、10、11月に海外で行ったエアマットのトレーニングで、相当高いレベルにまで仕上げてきました。(戸塚)優斗や(平野)流佳は両サイドでのトリプルを最小限のリスクで繰り出せている。(山田)琉聖らも含めて、技術的な不安は少ない。ただ、コンディションが少しでも怪しければ技の精度を落とすなど、スタッフとも協力して徹底的なマネージメントを行っています。最大限のパフォーマンスを引き出せるようにするための“引き算”も重要なんです」
「練習量」と「競争心」が日本のカルチャーになった
日本が強い理由を「才能」のひと言だけで片づけるのは容易だ。しかし村上は、チーム内に根づいた空気の変化を指摘する。
──コーチ就任以降、日本は世界トップに君臨しています。これまでのチームの変化をどう見ていますか?
「僕が現役の頃は『疲れたら休む』という感覚もありましたが、今の選手たちの練習量はすさまじい。こちらが『もう十分じゃないか』と思っても、誰かが滑り続けているかぎり、誰もやめようとしない。この練習に対する意識の高さは、間違いなく世界一だと思います」
平野歩夢という“基準”が、全員の意識を押し上げる
強いチームには、絶対的な基準が必要だ。村上は、その象徴として平野歩夢の名前を挙げた。
──歩夢の存在価値とは?
「とても大きいですね。歩夢がいることで、優斗や流佳、(平野)海祝、琉聖……全員が『歩夢に負けたくない』という強い思いで練習に励んでいる。特に男子は『自分が一番になりたい』という気持ちが強いですね。また、女子も(冨田)せなが北京五輪で銅メダルを獲ったこと、(小野)光希の安定した強さ、(清水)さらや(工藤)璃星といった若手の勢いもある。女子も非常に楽しみです」
決戦を目前に控えて
練習日は気温が上がりボトムが荒れたが、壁の状態は良好。ライダーたちの調整は最終段階に入っている。
──今日のパイプコンディションと、予選への展望は?
「暖かさで練習の途中からボトムが荒れてきたので、選手たちにはボトムランのラインどりを意識するように伝えました。ただ、壁自体の仕上がりはいい。明日の予選は、いいコンディションで臨めるはずです」
目標は表彰台独占
インタビューの最後に、村上ははっきりと口にした。男子は表彰台独占、女子はひとりでも多くのメダル獲得。採点競技という不確実な世界だからこそ、己の「最大のパフォーマンス」を発揮することにすべてを懸ける。
──今大会の目標を教えてください。
「男子は全員が最高のパフォーマンスを出せれば、表彰台独占も夢じゃない。そこを目指します。女子もベストメンバーがそろっているので、メダルをひとつでも多く獲りたい。誰が上位に来るか、どのようなジャッジングになるかはわからない。だからこそ、一人ひとりが自分にとって最大限のパフォーマンスを出すことが重要。それができれば、結果は自ずとついてくると信じています」
オリンピックを目前に控えた、FIS大会最後の大一番。日本チームは「ハーフパイプ大国」であることを、このラークスの地で再び証明しようとしている。
interview + text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




