INTERVIEW
「競合」から「協業」へ。BURTONと協力してUNION ATLAS STEP ONが誕生。その舞台裏とSTEP ONの未来に迫る
2024.11.25
先日お届けした、UNION BINDING COMPANY(ユニオン バインディング カンパニー)からUNION ATLAS STEP ONが2025年1月に発売されるというニュース(記事はこちら)は、大きな反響を呼んだ。2019年1月にDC(ディーシー)が、2021年12月にNITRO SNOWBOARDS(ナイトロ スノーボード)の両ブランドがブーツで、2022年1月にFLUX(フラックス)がバインディングでそれぞれ、BURTON(バートン)とライセンス契約を結びSTEP ONシステムを導入してきたが、バインディング専門ブランドとして不動の地位を誇るUNIONの参入だっただけに、インパクトが大きかったのかもしれない。
BURTONのCPO(最高プロダクト責任者)であるクリス・カニンガムが、「このプロジェクトがこれまでにない独創性を放っているのは、スノーボードバインディングの開発において、お互いが深く長い進化の歴史を持ち、それを推し進めてきた大きな情熱を双方が持ち合わせているから」と語るように、両ブランドが有するそれぞれの機能性や特徴を維持したうえで、STEP ONの接続部分のみが共通点となるように開発を進めたことに、これまでとの大きな違いがある。「競争ではなく協力することで、さらなるイノベーションに注力できる」というクリスの言葉にもあるように、BURTONとUNIONがパートナーシップを結んだことでSTEP ONをネクストフェーズへ昇華させることが狙いなのだ。
これを受けて近い将来、足回りのスタンダードがSTEP ONになる可能性を強く感じたというスノーボーダーは、世界中に数多いることだろう。だからこそ、STEP ONの今、そして、未来について詳しく知りたい。そして、伝えたい。前出のクリスと、UNIONのCEO兼ゼネラルマネージャー、マルティーノ・フマガリに独占インタビューを敢行した。
UNION ATLAS STEP ONの開発秘話
BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE: 2021年にUNIONとBURTONは初めて、プロダクト開発に対して双方が合意しました。STEP ONが2016年後半にリリースされてから4年あまりも経過してのことです。UNIONとしてそれまでの間、STEP ONに対してどのような見解をお持ちでしたか? 似て非なるシステムをオリジナルで作ろうとしていたのでしょうか。
マルティーノ・フマガリ: 自社も含め、さまざまなシステムを評価しました。最終的に、市場にはもうひとつのインターフェースではなく、ひとつのシステムに統合することが必要だと判断しました。ユーザー目線で考えたことで、方向性が明確になったのです。
クリス・カニンガム: UNIONとの提携は、STEP ONにとって重要な寸法や仕様などの技術を、彼ら独自のバインディングプラットフォームに統合することを目的としています。つまり、STEP ONシステムとシームレスに動作するUNIONのハイバックおよびベースプレートを開発したということです。そのためには単独で作業するのではなく、コラボレーションが必要でした。FLUXのSTEP ONはBURTONのベースプレートデザインを基盤としながらも、彼ら独自のパッドシステムを用いています。そのいっぽうで、UNIONの場合はSTEP ONのシステムを使って、ベースプレートやハイバックなどは彼ら独自の開発デザインを採用しているのです。
マルティーノ: 私たちは、独自のデザイン言語なくしてコラボレーションを行うことはありません。接続する部分のインターフェースは同じですが、それ以外はオリジナルです。より容易な脱着を可能にするシングルハイバックコンポーネント、クッション性を強化したアクセルパッドによりライディング時の快適性を実現し、UNIONベースプレートブッシングシステムを採用したことで、フロントとリアのエリアが拡張され、我々のバインディング特有の乗り心地を提供します。
BACKSIDE: 初めてとなるSTEP ONバインディングの開発を終えて、苦労したことや興味深かった点などがありましたら教えてください。
マルティーノ: STEP ONはサイズ範囲の広さに加え、厳密な許容誤差が要求されたので、予想以上に複雑でした。しかし、大きな障害はなく、開発プロセスはほかのUNIONプロジェクトと同様に順調に進みました。
クリス: 私たちは常に、UNIONバインディングのクオリティの高さに敬意を表しています。ATLAS STEP ONも例外ではなく、STEP ONに求められる厳格な要件と仕様に基づいて設計・開発されています。私たちはパートナーシップの一環として、このモデルの開発中、自社の開発ラボでの検証テストを含むサポートをUNIONに提供してきました。ですので、品質には絶対の自信があります。
STEP ONの未来
BACKSIDE: ライバルとして競い合うのではなく様々なブランドと協力し合うことで、STEP ONはどのような進化を遂げていくとお考えですか?
クリス: UNIONが採用しているヒールカップのデザインは、その好例です。彼らは常にアルミニウム製のヒールカップデザインを軸としたバインディングブランドであり、BURTONは常にエンジニアリングプラスチック製のヒールカップデザインを好んで採用してきました。もちろん、どちらが優れているのかについては議論の余地がありますが、それはライダーが決めることです。各ブランドのデザイン哲学は、乗り心地、パフォーマンス、フレックスなどにおいて独自性を提供しています。そして、ユーザーたちは各ブランドの特徴を理解しています。それぞれのブランドが有する独自の機能やデザイン性を制限することなく、STEP ONがブランドの垣根を越えて使われるようになることを望んでいます。
マルティーノ: 私たちとしましては、単に参加するのではなく、変革と革新を目指して取り組んでいます。今後もBURTONと協力し合いながら、STEP ONというカテゴリーを新たなる高みへと引き上げるために全力を尽くします。
クリス: STEP ONがさらに市場に浸透し、スノーボーダーたちのセットアップにどんどん採用されていくことを想像しています。また、ほかのブランドもこのテクノロジーを採用することに興味を持ち、彼らのバインディングやブーツにSTEP ONのテクノロジーを搭載した独自のプロダクトたちが提供されていく未来を描いています。各ブランドとテクノロジーを共有してパートナーシップを結んだ先の目標は、私たちが愛してやまないスノーボードシーンの成長です。
BACKSIDE: 今回のUNIONとのパートナーシップ提携のように、今後、ブーツブランドと同じような取り組みの可能性はありますか? また、バインディングとブーツの相性は非常に重要だと考えますが、同一ブランドにバインディング&ブーツのSTEP ONシステムを提供する可能性について教えてください。
クリス: 今後、STEP ONに参加するブーツブランドが増えていくことは間違いありません。そして、各パートナーシップについては、両ブランドにとってもっとも効果的なプロセスを構築しています。ですので、次にどのようなパートナーシップを結ぶことになるかについては、まだわかりません。バインディングとブーツの両方にSTEP ONテクノロジーを採用し、同一ブランドで展開する可能性については……もちろん可能です。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)