BACKSIDE (バックサイド)

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INTERVIEW

世界各地に根ざすバンクドスラロームイベントへと昇華した「BURTON MYSTERY SERIES」

2022.11.08

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世界最高峰のコンテストとして1982年にスタートした伝統の一戦「BURTON US OPEN」を打ち切ってまで、世界中の各地域に根ざしたスノーボードコミュニティを創出するべく動き出したBURTON(バートン)。それが、昨シーズンから始まった「BURTON MYSTERY SERIES」である。
ハーフパイプとスロープスタイルで構成されていたUS OPENや、かつて東京・六本木で行われていたストリートコンテスト「BURTON RAIL DAYS」は、プロスノーボーダーたちをフォーカスするイベントだった。しかしMYSTERY SERIESは、本記事を読んでいる一般スノーボーダーたちが主役である。
ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(一体性)に重きを置くDE&Iの考えに則り、年齢、性別、民族、人種、LGBT、国籍、宗教、そして、ライディングスキルに関係なく、すべてのスノーボーダーが楽しみを共有できる場を生み出すため、バンクドスラロームが採用されることになった。2022年12月から2023年5月まで、世界12カ国21エリアで行われ、日本では福島・アルツ磐梯、長野・エイブル白馬五竜の2箇所での開催が決定した。
そこで、BURTONの創始者・故ジェイク・バートンの長男であるジョージ・バートン・カーペンターを直撃。「スノーボードが貢献できる社会的可能性にフォーカスし、それを広めようとしている」とジョージが語る、MYSTERY SERIESの狙いや目的についてたずねてみた。

 

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亡き父の意思を継ぐジョージがMYSTERY SERIESについて語る

 

競うよりもベストを尽くす大切さを表現し、プロアマの垣根を越えて滑れる環境を提供

──US OPENからMYSTERY SERIESに移行して2シーズン目になります。改めて、その目的についてお聞かせください。
 
MYSTERY SERIESの目的はコミュニティを形成することですね。年齢やライディングレベルを問わず、すべてのスノーボーダーが参加できる草の根的なシリーズイベントを目指します。スノーボードはすべての人のものであるというビジョンを共有できる、リゾートや自治体と手を組んでイベントを開催しています。今シーズンは昨シーズンよりも、さらに多くのリゾートで開催される予定です。バンクドスラローム、アスリートデモ、あらゆるレベルのスノーボーダーが参加できるパークアイテム、そして、家族全員で楽しめる空間を演出します。
 
私たちは、あらゆる世代が共存するスノーボードの新時代に生きています。だからこそ、すべての人が愛してやまないスノーボードのコミュニティに属していると感じられるような空間を作っていきます。
 
──昨シーズンは開催地の特性を活かしたフリースタイルイベントでした。なぜ今シーズンはフリースタイルではなく、バンクドスラロームを採用したのでしょうか?
 
実のところ、パークアイテムとバンクドスラロームの両方が用意される予定です。バンクドスラロームは競技としての側面があり、年齢別の表彰も行いますが、順位やタイムを競うよりも自己ベストを出すことが重要だと考えます。さらに、子供たちが好きなプロライダーたちと同じ土俵に立つことができるフォーマットでもあります。
 
また、アスリートによるデモではフリースタイルを表現します。世界のトップアスリートたちが才能を発揮し、私たちにインスピレーションを与えてくれる空間を作り出すのです。初中級者向けのパークアイテムも設置し、誰もが新しいトリックを習得したり新しいアイテムに挑みながら、刺激を受けることでしょう。そして、憧れのライダーたちと一緒にセッションしましょう。これまでのように、巨大なコースでアスリートたちが競い合うのを観ているときに存在していた壁を取り払うのです。ジャムセッションのように、みんなで一緒にライディングできますよ。
 

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昨シーズン、米ミネソタ州スキーヒルで開催されたMYSTERY SERIESでのヒトコマ。ジョージも参加した

 
──一般的なバンクドスラローム競技だとすると、大会名であるミステリー感がなくなってしまうように感じます。例えば、コースの途中にキッカーがあるなど、従来のバンクドスラロームとは異なる競技になるのでしょうか?
 
MYSTERY SERIESという名称は、世界中のスノーボードコミュニティから共感を集めると同時に、私たちのブランドの伝統と結びついています。スノーボードは本来、ミステリーなのです。イベント期間中はミステリー賞も用意しています。また、バンクドスラローム以外にもミステリーなアイテムも用意する予定です。
 
昨シーズン、私たちはグラスルーツイベントの様々なフォーマットを試し、何が一番コミュニティに響くのかを学びました。バンクドスラロームの中にパークアイテムがあると、若かったり経験の浅いスノーボーダーにはとっつきにくいということがわかりました。MYSTERY SERIESのゴールはすべてのスノーボーダーから歓迎され、滑りに行きたいという気持ちを高める空間を作ることです。
 
──イベントのスケジュールを見ると、総合チャンピオンを決めるような形式ではないようです。今後、バンクドスラロームの世界一を決めるシリーズ戦にする考えはあるのでしょうか?
 
MYSTERY SERIESは自己ベストを出すためのもので、チャンピオンを決める大会ではありません。BURTONは「NATURAL SELECTION TOUR」や「LAAX OPEN」、「PEACE PARK」といった注目度の高いイベントをサポートし続けています。アスリートたちはこれらのコンテストのフォーマットを楽しみにしていますし、BURTONは常に最高レベルのライディングとコンペティションをサポートしていくつもりです。
 
──MYSTERY SERIESの中長期的なビジョンについて教えてください。
 
MYSTERY SERIESが掲げるビジョンは、スノーボードにインスピレーションを与え、コミュニティ全体が交流しやすく楽しめる環境を作ることです。私たちは学び、適応し続けています。例えば、障害者アスリートも参加できるようなイベントにするにはどうすればいいか、議論しているところです。
 
長期的には、開催地を増やしていく予定ですね。世界のどこにいても、このエキサイティングなシリーズイベントに参加し、スノーボードと私たちのコミュニティをもっと好きになってもらえる機会を提供していきます。このイベントに参加し、一緒にライディングできることを楽しみにしています。
 
BURTON MYSTERY SERIES 公式サイト

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Peter Cirilli

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