
INTERVIEW
布施忠と國母和宏が語り合った“これまで”と“これから”
2017.09.08
CAPiTAやUNION、DEELUXEなど、カスタムプロデュースが取り扱うブランドを一冊にまとめた「CPI SNOWBOARD BOOK 17/18」が9月7日にリリースされたことをご存知だろうか。当サイトですでに紹介したとおり(記事はこちら)、執筆に関しては当メディアが担当させていただいた。
その目玉コンテンツとして布施忠(以下タダシ)と國母和宏(以下カズ)の対談が掲載されているのだが、紙媒体にはページ数という制約があるため、予想以上に盛り上がって収まりきらなかった続きをこちらでご紹介。
1977年生まれのタダシ、そして、1988年生まれのカズ。10年にひとりの逸材たちの“これまで”と“これから”を語り合ってもらった。
BACKSIDE(以下B): 「なんで誰も海外のビッグマウンテンで滑ろうとしないのか?」という疑問からHEART FILMSを立ち上げ、カナダ・ウィスラーを拠点にクルーとして活動を始めたタダシ。カズは世界を舞台に活動して日本を俯瞰で見たときに一抹の不安を覚え、日本のスノーボードがナメられるのを嫌ってシーンの底上げを目論んでSTONPを始動。お互いに日本のスノーボードシーンを牽引しようと試みたわけだけど、そこまで突き動かした原動力は何だったの?
タダシ(以下T): たしかに、似てるところはあったよね。
カズ(以下K): 改めて考えると、中2のときにUS OPENで2位になったときは日本人ひとりで勝ち進んだことがうれしかったし、他の大会でも決勝まで残って日本人が少なくなって自分ひとりになったとき、ここからどこまで上にいけるかっていうのが楽しくて仕方なかった。身体も小さいし英語もしゃべれなくて、海外ライダーたちの中にあまり入っていけないけど、板に乗って滑っちゃえば立場を逆転できたのが気持ちよかったですね。そういう気持ちがキッカケとしてはあるのかも。
T: オレは海外のヤツらを見てきて思ったんですけど、例えばエーロ・ニーメラ。彼は小さい頃からROSSIGNOLで一緒だったんですよ。アイツはフィンランド出身なんだけど、当たり前のように北米のバックカントリーでみんなとセッションしてて。海外のヤツらってかなりハングリー。なのに、日本人はなんでそうならないのかずっと疑問に思ってたんですよ。だからHEART FILMSを始めました。そうやってハングリー精神を持って海外のデカい山で滑り込んだほうが絶対上手くなると思ってやってたんですけど、みんなから“そこまで求めてない”って言われちゃって……。それでオレは抜けることになったんですよね。

B: タダシは自分が活動していたウィスラーのバックカントリーに仲間たちを招いたけど、カズの場合はフィールドは問わずにクルー全体の活動として世界を目指した。やり方は違うけど、日本のシーンを底上げするという意味では、志は同じだよね。
K: そうですね。そこは一緒です。でも、STONPの場合はいきなり海外に連れていってもできるような感じじゃなかったから、まずは自分たちのできるベストな形で取り組んだ感じです。
T: アキくん(平岡暁史)は誰よりも積極的に活動してましたけどね。でも途中からは、周りに時間や能力を使うよりも自分のレベルを上げることに集中したかった。そこから(越路)太郎さん(LIFESTYLE PROJECT映像作家)と一緒にやるようになりました。プロとして、とにかく作品を創りたいんです。それはずっと昔から思ってることで、面白い作品を毎年創りたい。大会に出るわけでもないし、こうした気持ちがここまで頑張ってこれたひとつの要因だと思ってます。だから、オレはそこに集中したかったんですけど、周りには理解されなかったのでこういう形になった。HEART FILMSのときみたいに大きなクルーとして活動するんじゃなくて、自分が動きたいところへ行って誰かとセッションするような感じですね。カズはずっと海外のヤツらと一緒に行動してると思うけど、オレはだんだんつるまなくなっていきました。YESに乗ってた頃は、DCPやロメイン(デ・マルチ)たちと一緒にやってましたけど、結局は自分ひとりでやったほうがペース的にも伸び伸びできていいんですよね。人のペースに巻き込まれるのがイヤで(笑)。カズはそういうのないの?
K: その気持ちはわかりますね。でも、オレの場合はそれ以上にヘルプも必要だから。モービルがめっちゃ上手いライダーとはそういう撮影に行ったり、ヘリで行くんだったらギギ(ラフ)に同行してもらったりとか、そういう部分でヘルプしてくれるライダーとつるんでます。カメラマンも『DEFENDERS OF AWESOME 2 – STAY BAD ASS』からずっと一緒なんですよね。そのカメラマンと出会ってからは、オレのペースをわかってくれてるし、やりたいことも理解してくれてて。だから、大規模な撮影クルーに入ったとしても、オレとそのカメラマンで好きなようにやれるし、自分たちのペースでできるようになったから、今はすごくやりやすいですね。

T: そうだよね。オレは太郎さんとそういうクルーを作ってて、カズにもそれがある。オレはいろんなライダーたちにそういうクルーを作ってもらいたいと思ってるんですよね。自分たちのペースでできるクルーを。
K: それ大事ですよね。それがあったら絶対にいい映像を残せるから。
B: これまでそれぞれにはインタビューを何回もさせてもらってたけど、こうした対談は初めて。ぶっちゃけのところ、お互いのことをどう思ってたの?
T: カズのことはもちろん気になってたよ。でも、今までこうしてカズと絡む機会はまったくなかったですからね。こういうのはタイミングなのかなって、今ちょうど思ってました。
K: でも、なくてよかったのかもしれませんね。お互いが違うところを引っ張っていってるような感じだから、それでバランスがとれてる気がする。ふたりが一緒になって何かやってたとしたら、今よりも狭くなってた思うから。だから、お互いに違うところで活動していくほうが、ふたりのためにもいいと思います。
B: 交わることはなかったけど、お互いがそれぞれの道を歩んできて、それによって日本のシーンの幅も広がっていったよね。最後に、それぞれ今後はどのようなスノーボードライフを過ごしていきたい? タダシは今年で40歳になるわけだけど。
T: もうオッチャンなんで、ゆっくりやりたいですね(笑)。でも、今の自分のスタイルを貫けるかぎりは滑り続けます。
K: オレのことをサポートしてくれてるブランドのイメージとして、とんがってるライダーだったり攻めの滑りを求めてくれてると思うから、それに応えられるかぎりはやり続けたい。自分のスノーボードは荒々しい滑りだし、そういうのを求めてくれるブランドを選んでるつもりだから、それが求められなくなったり、自分で納得のいく滑りができなくなったら、もっとゆっくりしたスノーボードをしたいなと思ってます。でもそれまでは、できるかぎりやりたいですね。

T: オレの場合はもう求められてないから(笑)、ゆっくりスノーボードをやっていきたいかな。
K: ここ数年でタダシくんが出してる日本の映像は、見たことのないロケーションが多いじゃないですか。オレはそれをめっちゃ見たいし、見たいと思ってるライダーは多いと思う。それが広がっていくことで、求められるようになるんじゃないですかね。これまでも日本でずっと滑り続けてる人はたくさんいるけど、でも実際に、日本というロケーションを世界に向けて発信した人はいない。ガイドの人はいろんなロケーションを見てるだろうけど、それが表に出てくることはあまりないし。だから、そういう日本のロケーションですごくいい滑りっていうのは、今までなかったもの。オレはそれを見るのがすごい楽しみだし、それが世界的に求められるんじゃないかなと思います。トラビス(ライス)に白馬のすごい映像を出されても、それってなんか違うじゃないですか。海外のヤツらに先にやられてたのが、今までの日本だったわけだから。
T: そうそうそう。それが悔しいよね。だから、まだまだ頑張ります(笑)
photos: Takateru Yamada (GLOWZ)
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