INTERVIEW
『THE FOURTH PHASE』に学ぶ──“地球を滑る”トラビス・ライスの人間力
2016.10.01
さる9月15日。アクションスポーツ映画を代表する作品『THE ART OF FLIGHT』からおよそ5年の歳月を経て、世界中から大きな注目を集めている最新作『THE FOURTH PHASE』のプレミア上映会が東京・六本木で行われた。その試写はもちろん、主演を務めるトラビス・ライスが来日していたため、インタビュー取材を敢行。“地球を滑る”というキャッチコピーがふさわしい壮大すぎる映画が創り上げられた背景には、こうしたトラビスの想いが込められていた。
海水が蒸発して雲となり雪を降らせ、山に降り積もった雪が解けて水となり、川を辿って海へ還る───。
こうした地球の水循環に基づき、北太平洋を旋回する潮の流れに乗って追いかけるという壮大なストーリーが描かれた本作。その北太平洋旋回の流れに乗るべく、主演であるトラビス・ライスのホームマウンテンであるアメリカ・ワイオミング州ジャクソンホールから物語は始まる。長野・白馬、ロシア・カムチャッカ半島、アメリカ・アラスカを旅しながら、地球がもたらすあらゆる脅威に立ち向かい、命の尊さや大自然の偉大さ、仲間との絆、そしてスノーボーディングの秘めたる可能性を追求する彼らの姿が絶妙に表現された、ドキュメンタリー・スノーボード映画となっている。
150cmあまりの一枚の板に跨って、大自然が織り成す山々に降り注いだ雪の上を滑ることに魅了された男たちのドラマ。地球を滑り、地球と対峙する。そのすごすぎるアクションは前作『THE ART OF FLIGHT』から十二分に感じることができたわけだが、最新作『THE FOURTH PHASE』では、彼らがその可能性を広げるために限界に挑んだストーリー性に着目したい。そこには、一般スノーボーダーである僕たちにも、いや、スノーボードを履かない人々の心までを動かすヒューマンドラマが写し出されているから。
本作品の制作を通じて、その行く手にはあらゆる困難が待ち受けていた。命さえ落としかけたトラビス。それほどまでして彼が伝えたかったこと。その一端に迫った。
「これまで滑り続けてきたなかで発見したことがあるんだ。それは、何か上手くいかないことがあった場合、その場から逃れられる唯一の方法は、抱いていた“期待”を解き放つこと。期待とは落胆への入り口でもあるからね。何かに対する期待感を持ち、それが思ったとおりにいかないときに落胆へと繋がる。たとえば何か計画を練り、希望を抱いてそこに向かってアプローチしたとする。しかし、その夢はただの道標でしかないんだ。
物事は上手くいかないときもある。オレたちは常に計画を立てるが、ほとんどの場合、そのとおりにはいかない。スノーボーディングの映像を残す場合においては、数え切れないほどの要素が常に変化している。母なる自然は、いつだって母なる自然だ。彼女は必ずと言っていいほど変化球を投げてくる。上手くいかないときは自分の視点を変えなければならない。ここを滑るべきじゃなかった、コンディションが悪かった……理由なんて挙げたらキリがないよ。すべての物事には起こるべき理由があるわけだからね。だから、不都合が生まれたり高いハードルを越えなければならないときは、それに打ち克つだけのプランが必要になるわけさ。
それを打破するために唯一わかっていることは、自分たちができるかぎりの努力をすることだ。オレたちが持つすべてを注ぎ込んでいれば、たとえ結果が悪い方向に流れたとしても落ち込む必要はない。自分から投げ出してしまったり、諦めたりすることがあれば、結局は後悔することになる。この世の中、多くのことは自分でコントロールできない。だからこそ、ベストを尽くすのさ」
本作は10月2日(日)21時より、Red Bull TVにて無料限定配信される。残念ながら英語のみでの配信になるが、翌日3日(月)より販売されるDVD&ブルーレイ、iTunesにて配信される映像は日本語字幕付きとなっている。お楽しみいただきたい。
photos: Scott Serfas/Red Bull Content Pool, Hikaru Funyu translation: Kenji Kato(Scratch Paper Works)