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【連載Vol.1】磐梯山の表と裏に広がり、異なる雪質や地形を楽しめる。国内屈指のフリーライドの楽園・ネコママウンテン
2025.10.24
2023-24シーズン、それらふたつのゲレンデのピークに連結リフトを架け、多彩な表情の全33コースを13基のリフトで堪能できる東北屈指のスノーリゾートとして生まれ変わった。それが「星野リゾート ネコマ マウンテン」だ。本連載では表も裏も知り尽くす松浦広樹をナビゲーターに迎え、前編ではフリーライドをメインに、後編ではフリースタイルを軸に、異なる視点からネコマ マウンテンの魅力を余すことなく紹介していく。
裏へ奥へと広がっていく面白さ。北エリアと南エリアの雪質や地形の違い
表磐梯にある南エリア(旧・アルツ磐梯)は、晴天率が比較的高く、緩やかで開けた斜面も多いため、ファミリー層や初中級者にも優しいコースが揃っている。圧雪バーンでの爽快なクルージングはもちろんのこと、グラトリやラントリなどにも適した環境も整っている。トップシーズンには水分をやや含んだ踏み応えあるクリーミーな雪がたっぷりと降り積もるので、ボードコントロールがしやすい。はじめてのパウダーライドにうってつけだ。

アルツエクスプレスの両サイドに生えている針葉樹に、雪がどっさりと積もっていた
だが、南エリアのポテンシャルは、それだけではない。リゾートセンターのあるベースからアルツエクスプレスに乗り、ブラックバレーエクスプレスを乗り継いだ先に広がるエリアには、パウダー愛好家たちを満足させる雪と、本格派マウンテンフリースタイラーも思わず攻めたくなる地形が待っている。通称「ネコマボウル」だ。そのエリアはロックチェアと霧氷チェアで回すことができ、滑り応え十分のロングライドが味わえる。パークのイメージが強い南エリアだけでも、幅広い層のスノーボーダーがフリーライドを存分に楽しめるわけだ。

フローズンエリアがこのようなノートラックだったら、きっと誰もが歓喜の声をあげるだろう

ロックチェアの名称の由来にもなった名物ポイントでのクレイル。積雪が多すぎて岩肌がまったく見えないけれど(苦笑)
いっぽう裏磐梯にある北エリア(旧・猫魔)は、南エリアのベースが標高700mであるのに対して、ボトムで1,000mを超えている(山頂は1,337m)。そこに強烈な冷気が吹き込みやすい地形と気象条件が相まって、本州とは思えないほど軽くてドライな「ミクロファインスノー」と称されるフレッシュパウダーが降り積もる。そのうえで、トップシーズンは降雪が多い。コースの大半が北斜面なので、新雪が降ればグッドコンディションが長く続くことも特長だ。

ニャルツチェアで北エリアへ

北エリアの山頂付近は、細かな雪が強風によって木々に付着。幻想的な霧氷の風景が広がっている
コースは全体的にコンパクトながら起伏に富んでおり、沢地形や壁地形、ウネリ、天然バンクなどがあちこちに点在。滑り手の想像力が掻き立てられることは言うまでもない。それゆえ、パウダーラバーたちが各地から集まってくるわけだ。

ヒロキがターンをするたびに、細かな雪の粒子がふわっと舞い上がる。南エリアのそれとは質がまったく異なる
また、エキサイト1のような急斜面も随所に存在するが、フレンドリーゲレンデのような緩斜面の超ワイドバーンもあるため、ビギナーでも安心のスロープが用意されていることも付け加えておきたい。
このように南エリアも北エリアもフリーライドのポテンシャルは非常に高く、どちらも幅広いレベルのスノーボーダーが思い思いに楽しめる環境が揃っている。一日では滑りきることができないほどの広大なフィールドが待ち構えているのだ。では、いかにして楽しむべきか。次章ではローカルライダー・松浦広樹の言葉とともに、その最善策を探っていこう。
標高1,000m以上のエリアを往来しながら極上パウダーを楽しむ
トップシーズンに降雪直後のパウダーを狙うなら、より雪質のいい北エリアを朝イチから滑り、トラックが多く入ったら南エリアに移動して地形遊びや流せるパークをクルージング。そんなルーティンを考える人も少なくないはず。だが、ローカルライダーの動き方は少し違う。
「北エリアは、ハイシーズンに雪が降ると、いい雪質のまま保存されるんですよ。標高も高くて北斜面なので、探せばどこかにいい雪が残っていることも少なくない。なので、天気次第ですが、先に南エリアから滑ることのほうが多いんです。ネコマボウルのあたりは、北エリアに匹敵するくらいの軽い雪が積もるし、面白いラインもいっぱいあり、しかもロングライドで楽しめるから、すごく滑り応えがある。ただ、競争率はやや高めで、太陽の光を浴びる面は時間の経過とともにどうしても雪が重くなっちゃうから、バーンが荒れたり、雪が悪くなる前に攻めたい。自分は南エリアの中腹にあるThe Rider’sをベースに、両エリアのコンディションを見ながら調子のよさそうなところを狙う感じですね」

The Rider’sにて絶品のハンバーガーを食べ終え、午後の滑走をイメージしながら準備を整える
撮影に訪れた2月中旬も、南エリアは太陽が顔を出していたのに、北エリアへ向かう連結リフト・ニャルツチェアの奥は分厚い雲に覆われていた。さらに言えば、体感温度もまったく違う。ニャルツチェア乗車中(所要時間は約7分と意外と長い)は、ジャケットやグローブの下にインナーを1枚プラスしたくなるほどの寒さだったことを補足しておこう。
撮影当日のヒロキはというと、霧氷チェアやロックチェアでアクセスできるエリアを、まったりとパウダーライドや起伏を活かしたジャンプで遊び、ブラックバレーエクスプレスの迂回路の壁を当て込みまくり。さらには北エリアへと足を伸ばしてエキサイト1を超ハイスピードで攻めるなど、実にローカルらしいルーティンでフリーライドを堪能していた。

ピーク4のコース脇にあるギャップで繰り出したインディ(南エリア)

フォレスト3に残っていた非圧雪ゾーンでのパウダーバター(北エリア)
ここまではパウダーライドをメインに話を進めてきたが、ヒロキはグルーミングバーンにも注目してほしいと語る。
「ネコマ マウンテンは圧雪が上手いから、せっかく滑りに行くのであれば、ぜひファーストライドは利用してもらいたいです。まっさらなグルーミングバーンで描くカービングは、極上のパウダーを滑るくらいの快感が味わえるから。降雪があった翌日だと、コース脇に雪が溜まっていることも多くて、何発も当て込みながら滑れます。体験する価値は十分にある。あと、このサービスを利用することで、非圧雪エリアのファーストトラックも狙えますしね」

雲がかかった猪苗代湖を眼下にファーストライド

ファーストライドの途中に発見した吹き溜まりで豪快なスプレーを噴射
ファーストライドとは、通常のリフト運行開始時刻の15分前に、南エリアのアルツエクスプレスに乗車できるサービスのこと。通常料金は1,500円だが、シーズンパス購入者や南エリアに隣接する磐梯山温泉ホテルの宿泊者は無料で利用可能となっている。
極上のパウダーと丁寧に仕上げられたグルーミングバーン、その両方を一度に味わえるのがネコマ マウンテンの魅力。両エリアの地形や雪質の違いを知れば知るほど、楽しみ方の幅は無限に広がっていくはずだ。
今シーズンから新たに誕生したツリーランエリア
フリーライド視点からネコマ マウンテンの魅力を語るうえで、南エリアで展開される圧雪車を使った有料サービス「キャットライド」は外せない。リフトを乗り継ぐだけでは到達できない空間で、仲間と特別な時間を過ごしたい人にオススメだ。また、北エリアでもっとも雪が溜まる最奥地のディープエリアは、大雪予報が出た際はリフトをあえて運休させ、パウダーを溜め込んでから開放するという粋な試みも行われている。
こうしたサービスに加えて、2025-26シーズンは、フリーライド志向のスノーボーダーにとって待望の新たなトピックがある。ツリーランゾーンの開放だ。降雪状況にもよるが、1月上旬オープン予定で、場所は南エリアの霧氷チェアが架かっているフローズンエリア。そこに広がるブナ林が滑走可能になったのだ。事前講習も特別な装備も必要ないが、すべては自己責任であることをお忘れなく!

今シーズンから開放されるツリーランゾーンを視察。いや、満喫
「適度な斜度で、ほどよい間隔で木々が生えています。たまに密なところもあるけど、ラインを選べば沢地形にも行けるし、どこを滑っても必ずコースに復帰できるから、道迷いの心配がありません。すべて自己責任ですが、ツリーラン初心者が練習するのにも向いていると思います」
ツリーランゾーンを事前にチェックしたヒロキはこのように分析する。

ヒロキのラインを追って撮影クルーもツリーランを堪能させてもらった
また、ネコマ マウンテンのホームページを見ると、「2025-26に開放するツリーランゾーンは……」という一文があるため、今後はさらに拡大していく予定なのだろう。
極上パウダーから最高品質のグルーミングバーンまで。遊び心をくすぐる起伏に富んだ地形、さらには訪れるスノーボーダーを心から楽しませる数々のサービス。滑るたびに新しい発見があり、時間はいくらあっても足りない。「また来たい」ではなく、「まだ帰りたくない」と思わせるネコマ マウンテン。フリースタイルの側面を含めれば、その魅力はさらに広がっていく。

一日じゃ物足りない……いや、正確に言えば、一日じゃ滑り尽くせないスケールなので、南エリアに隣接する磐梯山温泉ホテルに宿泊し、心ゆくまでネコマ マウンテンを滑り倒そう。チェックアウトは14時なので、時間に追われることなく朝イチの最高の雪を満喫できるのは非常にありがたい。ファーストライドが無料になるなどオトクな特典もある。ちなみに、ホテルの出入り口のギリギリまで滑って行ける

ワックスルームも完備されている。なんとアイロンやワックス、ペーパーなどは無料で使い放題と超太っ腹
松浦広樹(まつうら・ひろき)

生年月日: 1984年3月8日
出身地: 福島県福島市
スポンサー: RIDE、DRAGON、AIRBLASTER、HOME MTN.、SWANY、TUBBS、SHRED-TUNE




