FEATURE
世代もスタイルも超えて、誰もが熱狂する雪上の大運動会。Mountain Hardwearとローカルが創り出す「極楽バンクド」の熱量
2026.02.26
2026年2月1日。富山・立山山麓の雪原に、世代もスキルもバラバラのスノーボーダーたちの歓声が響き渡っていた。今年で12回目を迎えた「GOKURAKU BANKED SLALOM(以下、極楽バンクド)」。立山エリアをフィールドに活動するバックカントリーガイドであり、Mountain Hardwear(マウンテンハードウェア。以下、MHW)所属ライダーの水間大輔が発起人として牽引し続ける、特別なローカルイベントである。
例年、極楽坂エリアで開催されてきた本大会だが、今年は舞台を「らいちょうバレーエリア」へと移し、新たな歴史のページをめくった。大会のコンセプトである「老若男女が、レベルを問わずに楽しめるスノーボード運動会」を体現するこの1日。コンペティション特有のヒリヒリとした緊張感よりも、ピースフルでアットホームな空気が漂うのが極楽バンクドの真骨頂だ。
今回は、この熱狂の渦に飛び込んだひとりの女性の視点を交えながら、極楽バンクドが持つ引力と、MHWがこのイベントに寄り添う理由を紐解いていく。

開会式でマイクを握り、参加者を笑顔で迎える発起人の水間。和やかな空気感が会場を包み込む
初めてのバンクドスラローム。雪山に現れたMHWの「ベースキャンプ」
大会当日。事前の雪予報どおり若干の降雪があったものの、開会式のタイミングでは雲間に日が差し込んでいた。初めての大会、見知らぬ土地。スタート地点で緊張の面持ちを浮かべている女性がいた。ブランドの世界観を伝える国内唯一の路面店「MOUNTAIN HARDWEAR HARAJUKU」のスタッフ、武田さんだ。スノーボードは大学時代に少し経験した程度で、バンクドスラロームの大会に出場するのはこれが初めてである。

原宿店でもお客さんからの評判がよく、「店の顔」的存在の武田さん
「最初めっちゃ緊張したんですけど、隣に並んでいた子が『どこの方ですか?』って話しかけてくれて。東京から来た話をすると、「やっぱり。富山っぽくないから」って言われて和みました(笑)。上手い人が多そうで緊張しましたけど、話しかけてくれてよかったです」
彼女の緊張を解きほぐしたのは、ローカルたちとの温かいコミュニケーションだった。「学生時代の徒競走前みたいなドキドキを思い出しました」と語る彼女の言葉どおり、ここは誰もが童心に帰れる場所なのだ。

ローカルとの他愛のない会話が盛り上がる。初対面でもレベルを問わず、自然と笑顔で繋がれるのがこの大会の醍醐味だ
そして、その「スノーボード運動会」をボトムエリアから力強くサポートしているのがMHWである。受付を済ませた参加者たちにはMHWの特製ステッカーが配られ、会場にはブランドの世界観を体現するふたつの特設ブースと来季のギアたちが鎮座していた。過酷な自然環境に耐えうるハイスペックなプロダクトを、実際に雪山というフィールドで見て、触れることができる贅沢な空間だ。

エベレスト登山でも使用される巨大なドームテントが極楽バンクドに出現。内部には来季モデルのギアがズラリと並ぶ

ギアに使用されているテクノロジーや素材に関する熱いスノーボード談義がスタッフと来場者の間で交わされていた
バンクドを滑り終えた参加者たちがブースに立ち寄り、「このウエア、めっちゃ調子よさそうですね」とスタッフと語り合う。また、会場を見渡せば、水間の影響力とローカルからの信頼の厚さを物語るように、MHWのウエアに身を包んだ参加者が数多く雪上を駆けていた。ハードコアなアルパイン環境だけでなく、こうした草の根の「遊び場」にも等しく寄り添い、現場でユーザーと直接コミュニケーションをとる。それこそが、MHWというブランドの奥深さである。

水間の背中を追うように、当日の立山山麓にはMHWのウエアを着用しているスノーボーダーの姿が数多く見られた
レジェンドからキッズへ。継承される「滑る喜び」
極楽バンクドの磁場に引き寄せられるのは、一般スノーボーダーだけではない。水間の旧友であり、日本のスノーボードシーンを牽引してきたレジェンドライダーたちも、この日のために富山へ駆けつけていた。群馬から参戦した瀬山寿弥は、昨年に続き2回目の参加だという。
「ここで滑るのは、タイムを出したいからじゃないんだよね。気持ちいいから滑っちゃう。天神(TENJIN BANKED SLALOM)はかなり気合いを入れないと大ケガするくらいハードコアなコースだけど、ここはピースな感じだった。大輔やローカルが作る空気が優しいんだろうね。大人からキッズまで参加して遊んでいるのは、やっと日本にフリースタイルスノーボードの文化が根づいてきた証拠だと思うな。そのうち家族3世代で参加とかもあるんじゃない?(笑)」

コースの起伏を舐めるように、そして力強く駆け抜けていく瀬山
photo: Kenta Nakajima
瀬山も言及した、このイベント独特のファンな空気感。その象徴とも言えるのが、大人と同じコースを果敢に攻めるキッズたちの姿だ。
水間の息子・岳くんもそのひとり。1本目は緊張してしまったらしく「もうちょい行けた」と悔しさを滲ませつつも、「お父さんと同じコースで滑れてうれしい」と笑顔を見せた。

水間と息子の岳くん。世代を超えて同じコース、同じ感動を共有できるのがこの大会の醍醐味だ
高1から小4までの4兄弟で参加し、父親もエントリーしているという生粋のスノーボード一家、荒井さん。待機列でひときわ楽しそうにコースを眺めていたキッズたちがいたので声をかけると。
「コースがめっちゃおもしろいんです! 踏みやすくて、どんどん加速するから」と長男の羚夢(れいむ)くんが答えてくれた。
「小さい頃から、家族みんなで滑るっていうのが夢だったんです。もう叶っているけど、このイベントは雰囲気が明るくて、居心地がいいから、いつもすごく楽しいです。ファミリー感があって、ウェルカムな感じ」

羚夢くんと長女の夢逢(むうあ)さんはそれぞれ、公式大会未経験者が集う「エンジョイ男子」「エンジョイ女子」クラスで見事優勝。家族で大会に挑み、最高のリザルトと笑顔を手にしていた
ハードコアなだけがスノーボードではない。踏めば踏むほど加速し、誰もが笑顔になれる極楽バンクドのコースは世代を超えて、「滑る喜び」を継承していく装置として機能している。
転倒すらも讃え合う雰囲気と、MHWが描く未来
大会はひとり2本の滑走でベストスコアを競う。午後にかけて天候は曇り空へと変わり、気温の変化も相まって、2本目のほうが板が走るグッドコンディションとなっていた。
その良好なライディング環境の根底にあるのは、間違いなく裏方たちの血の滲むような尽力だ。らいちょうバレーエリアでの初開催というプレッシャーの中、ディガーチームは連日連夜コース造営に奔走した。

らいちょうバレーエリアに初めて造営された極楽バンクドのコース。巧みなRの連続はディガーたちの汗の結晶だ
photo: Kenta Nakajima
「毎日雪が降って排雪など大変だったんですけど、みんなで協力してかなりいい状態に仕上がっていると思います」と語るのは、ディガーの三宅順。
「滑る人が気持ちよく滑れればいい。小さい子供はあまりスピードが出ないのでボトム近くを滑る。そこはならしてあげて、転んでも進めるように起伏を残さない。かつ、上手い人は壁にバッと張りついて滑れるようにRをしっかり出してあげる。そういう指示を大輔さんから受けていました」
ただ掘るだけではない、参加者全員のレベルを想定し、緻密に計算された優しさが、このコースには宿っていた。
そして1本目を無事にコースアウトせず滑りきった武田さんは、そのディガーたちの想いが詰まったコースで2本目に挑んだ。
「みんなが壁の側面を使って滑ってるのを見て挑戦しようかなと思って。攻めたんですけど、コケちゃいました(笑)。でも、本当に楽しかった!」と、朝の緊張はどこへやら、イベントを満喫していた武田さん。スノーボードの技術ではなく、純粋に「挑戦する楽しさ」を味わっている姿があった。

みんなからのアドバイスを胸に2本目へ挑んだ武田さん。転倒すらも楽しい思い出に変わる

攻める姿勢を見せた武田さんに、MHWスタッフをはじめとした来場者からは歓声が上がっていた。おつかれさまのグータッチ!
すべてを包み込むこの空間について、発起人の水間はこう語る。
「音楽が常に流れていて、飲食も出て、試乗会もやっている。ビレッジみたいな空間を作りさえすれば、参加者もビジターも関係なく、みんなを巻き込めると思ったんです。12年かかりましたが、いい形が一旦作れました。ひとりでも多くの人に富山県を知ってほしいし、遊びに来てほしい。バンクドスラロームという遊びに、アルペンからトップフリースタイラーまで一緒に参加する。ダボダボパンツからタイトなウエアの人までが一緒に遊ぶ。それが面白いじゃないですか」

マイクを握り、自らも滑走し、参加者を鼓舞し続ける水間。「富山を好きになってほしい」という願いが形になった空間。イベントのトリとして彼が滑るころには、再び晴れ間が見えていた
photo: Kenta Nakajima
MHWがこの極楽バンクドをサポートし、ともに歩む理由もここにある。過酷な自然に立ち向かうためのギアを提供するだけでなく、自然と戯れ、世代やスキルを超えて人々が交わる「豊かなスノーボードカルチャー」を全力でサポートすること。武田さんが体感した高揚感や、初対面の人々と交わした温かい言葉の数々。それらすべてが、ブランドがユーザーに届けたいスノーボードの価値なのだ。
富山・立山山麓に生まれた、1年に一度の大運動会。読者諸君も来年の冬はぜひ(もしくは、再び)、MHWのウエアを身にまとい、極楽バンクドのスタートラインに立ってみてほしい。そこには間違いなく、あなたのスノーボードライフをさらに豊かにする、文字どおり“極楽”が待っているはずだ。
text + photos: Yuto Nishimura
eye-catch photos: Kenta Nakajima




