BACKSIDE (バックサイド)

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人気モデル「PXV」とともに“最高の視界”を作り上げたDRAGONの歩みに迫る

2023.11.22

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2018年に発売が開始され、現在まで続く人気モデルとなっているDRAGON(ドラゴン)の名作「PXV」。2011年に世界で初めて完成させた「完全フレームレス形状」とこのモデルのために開発された新形状レンズ「PANOTECH™ LENS (パノテック レンズ)」が採用されている、DRAGONを代表するモデルだ。PANOTECH™ LENSは人間の視野角よりも広い、左右200°をすべてレンズ面で開放した形状となっており、それはすなわち、ライディング中の視界に左右のゴーグルフレームが映り込まないことを意味している。アイキャッチ画像を飾るチームライダーの南谷孝太郎も「PXVにしてからは視界に関するストレスがない」と太鼓判を押すこのモデルの真価を紐解きながら、DRAGONが追い求めてきた“最高の視界”をもたらす製品が完成するまでの歴史に迫る。

DRAGONの最高傑作はどのように生まれたのか

DRAGONの最高傑作はどのように生まれたのか

前述の完全フレームレス形状とPANOTECH™ LENSというふたつのテクノロジーが、PXVという革新的なモデルの根幹を支えている。これらそれぞれのテクノロジーは、どのような経緯で生まれたのだろうか。

2011年、標高4,000mに位置する米コロラド州シルバートンに開発ロッジを構えたDRAGON。これをキッカケに開発からテストまでのプロセスにかかる時間が短縮され、本当にいい製品を追い求める商品開発が加速した。「ADVANCED PROJECT」と銘打たれたそのプロジェクトから生み出されたのが、世界で初めて完全フレームレス形状を採用した「APX」というモデルだ。

フレームレス形状は見た目のスタイリッシュさだけのために開発されたのではなく、ライディング時の視界に明確なメリットをもたらす。ゴーグル前面の凹凸が少ないため、フレームとレンズの接続部分に雪が溜まりづらいのだ。これがスノーボーダーなら誰しも一度は直面するであろうレンズの曇りを軽減するとともに、視野を最大限確保することにひと役買っている。今では数々のゴーグルブランドからフレームレスのモデルがリリースされているが、前述のAPXや平面レンズを採用しながらフレームレス化に成功したNFXといったモデルたちが、その火付け役であることは間違いない。今回紹介するPXVにも、そのDNAが受け継がれているのだ。

 

APXが発売された当時の広告。左下に記載されているキャッチコピーの「LESS IS MORE」には、「最小限のゴーグルデザインにより最大限のパフォーマンスを得る」というコンセプトが打ち出されている

 

PXVを形作るもうひとつのテクノロジー、PANOTECH™ LENS。こちらは厳冬期の雪山を舞台に戦う数々のスノーアスリートのフィードバックにより、雪山で理想とされる視野を求めて設計された、球面でも平面でもない、新たなレンズ形状だ。人間の視野角より広い左右200°を確保することにより、レンズフレームが視界に映り込まないという話は前述したとおりだが、この視野を実現するために乗り越えなければならない課題がふたつ存在した。
 
まずひとつが、平面レンズだと200°の湾曲を持たせることが技術的に不可能であるということ。ならば湾曲させやすい球面レンズで実現しようにも、今度は肝心のレンズ越しの視界に強い歪みが生じてしまう。この課題を解決すべく、球面比率を最小限に抑えた新たなレンズ形状として、PANOTECH™ LENSが開発された。その形状を実際に正面から見ると、ほとんど平面のよう。サイドから見てはじめて、微細なカーブを描いていることがわかる。

DRAGONのモノ作りにかける情熱が形となったテクノロジーが、フレームレス形状とPANOTECH™ LENSというわけだ。この両方を搭載しているPXVが発売された2018年からベストセラーを記録し続けていることこそが、DRAGONのプロダクトがスノーアスリートにとって“最高の視界”をもたらす製品であることの証明なのだろう。

南谷孝太郎がPXVの魅力について語る

南谷孝太郎がPXVの魅力について語る

「やっぱり視界の広さには驚きましたね。これまで着けたことのあるゴーグルの中で一番広かったです」

こう語るのは、DRAGONのチームライダーでありPXVをリリース当時から使い続けている、南谷孝太郎。北海道・ニセコエリアをホームとして活動している彼を虜にしている視界の開放感について、教えてもらった。

「例えばスティープな斜面にアタックする場合、下から見たときとドロップ地点から見下ろすときで、斜面の見え方が全然違うんですよね。障害物や壁の位置など、実際にドロップしてみないとわからない情報も多いんです。そうしたときに、PXVは左右の視界が確保されている分、ライディング時に集められる情報が多い。見えてくる障害物などから、これ以上右に行ったらヤバいなと察知できるタイミングが早い気がします。同じ理由で、滑っている途中でもラインをある程度変更しやすくなりました。視界が広い分、ドロップしたあとの対応能力が高くなる感じですね」

 

視界の自由さはそのまま表現の自由さに繋がる。フリースタイルスノーボーディングを高次元で楽しむために必要な要素だ

 

前述のPANOTECH™ LENSのおかげで広い視野を得られるPXVは、ライディングにおける自由度を底上げしてくれるようだ。また、撮影でアタックするようなテクニカルな斜面を滑るときだけでなく、ゲレンデライディング時のメリットについても教えてくれた。

「ツリーラン中に左右がしっかり見えるというメリットについては想像しやすいと思います。安心感が違いますよね。加えて言うと、左右が広く見えているということは、ゲレンデライディング中に死角から近づいてくる人がいたときに、そのシルエットが早めに視界に入ってくる、ということ。安全にライディングを楽しむという意味で、一般のスノーボーダーにとっても視界が広いことによるメリットは大きいと思います」

豪雪地帯をホームマウンテンとする彼のライディング写真をチェックしていると、ビーニーやウエアなど全身に雪が付着しているにも関わらず、ゴーグルには雪がついていない写真を見つけた。興味深かったので、その理由について聞いてみることに。

「ゴーグルのまわりに雪が付着するっていう感覚があまりないんですよね。この写真の撮影時は雪質がウエットで、雪がビーニーにつきやすいような状況でした。顔からスプレーをかぶるシーンもあったんですが、ゴーグルに雪がついて視界が塞がれるようなことはなかったですね。PXVにしてからライディング中に余裕が持てるようになりました」

まさにフレームレス形状のメリットが発揮されたのだろう。凹凸が少ないため雪の付着が最小限に抑えられる。結果として、PANOTECH™ LENSで確保された視界を最大限活かすことができるのだ。

 

ヘッドオーバーのスプレーに突っ込んでも、その後、ゴーグルから雪を払うアクションは不要だ

 

「ゴーグルのベンチレーション部分のスポンジに雪がつくと、寒いときだと凍っちゃって、それを無理やり取ろうとしてスポンジごと剥がれてしまった、みたいな話を聞いたことがあるんですが、PXVだとそういうことはないですね。付着しづらいことに加えて、雪がついてしまったとしても落としやすい」

PXVのベンチレーション部分は「アーマードベント」と呼ばれ、カバーで覆われていることによって積もった雪を取り除きやすい配慮がなされている。ベンチレーションが塞がれてしまったら、レンズが曇る原因になるからだ。DRAGONの誇るテクノロジーがこれでもかというほどに、視界不良によるライディング時のストレスを軽減してくれる。

「視界が悪いっていうストレスは、今はもうほとんどないですね。PXVのおかげで安心して突っ込んでいける。攻めた滑りができるんです」


PXV

PXV

▷ストラップ: 30YEARS

▷レンズカラー: LUMALENS J.RED ION

▷価格: 29,700円

PANOTECH™ LENS採用のベストセラー。設立30周年を記念して発表された特別なストラップが採用されたモデル

text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
portrait + riding photos: Junichiro Watanabe

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