BACKSIDE (バックサイド)

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SPECIAL

<対談> 藤森由香×岩垂かれん【後編】「ライフスタイルの変化によるスノーボードとの向き合い方」【CUTE GIRLS Vol.9】

2022.02.24

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“Cute”と聞いてかわいらしさを連想するのは間違いないが、本企画のそれは色に例えるならピンクではなく濃いレッド。“New Cute”という価値観をガールズシーンに提唱する。
 
女性ライダーたちの血が滲むような努力の末に発展したトリックたちは、ハーフパイプでは1080、ビッグエアでは1260が繰り出されるまでに至った。リスクを顧みることなく己の限界と格闘し続けている「CUTE GIRLS」たちのリアルな姿を本連載では紐解いていく。
 
Vol.9は、スノーボードクロス日本代表のチームメイトとして、ともに過ごしていた藤森由香と岩垂かれんによる対談の後編。変化していくスノーボードライフや人生観、 本企画のテーマでもある “CUTE” な生き方などについて語り合った。

競技からの引退後に見つけた新たなスノーボードの楽しみ

──身を置く環境によってスノーボードライフは変化していくと思いますが、最近はどんなことを考えていますか?
 
岩垂かれん: 由香さんはこのままライダーとしてやっていきたいって考えていますか?
 
藤森由香: “やれるだけやりたい”って思っているんだよね。年齢や環境で「やれること」や「やりたいこと」というのは当然変わってくるかもしれないけど、人生の流れに乗って、自分の “こういうことがやりたい” と思うことは続けたいな。
 
岩垂: 競技を引退したあとのスノーボードライフは、環境や年齢によっても活動が変化していくから、目標の設定が難しいですよね。
 
藤森: それは今、すごく考えている部分かもしれない。競技を引退した後も楽しめるところがスノーボードのすごくいい部分だと思っていて、実際に私自身も (競技から) 引退した後にさらにその楽しさを知ることができた。出会いやつながりが広がっていくから、30代を過ぎても10代の子と一緒に滑ったり、年齢関係なく楽しめるスポーツっていうのは魅力だよね。
 

YukaFujimori

 
岩垂: 私もそれはすごく感じます。ナショナルチームにいたときは家族と一緒に滑りになんて行けなかったから、今はそういう時間をすごく大切にしています。昨日は白馬でお父さんと一緒に滑っていましたから(笑)
 
藤森: かれんに連絡したときにお父さんと滑っているって聞いたから、 (白馬で撮影していた) インスタの写真、お父さんが撮影していると思ったら、めっちゃ微笑ましかったよ(笑)
 
岩垂: 競技から引退したあとも、冬がきたらやっぱり「滑らなきゃ!」っていうスイッチが入るんですよね。夏は16年連続でニュージーランドで滑るというのがルーティンだったけど、ここ数年はコロナの影響で行けていなくて……。由香さんは結婚されて、ポルトガルと日本の2拠点を行き来したライフスタイルを送っていることも魅力ですよね。
 
藤森: ポルトガルは海が近くてきれいな街並みで、海外のスノーボーダーの友人たちもオフシーズンにサーフィンをしに来たりするような場所。すごくいいところだよ。ただ雪は降らないから、オーストリアなど他国も行き来しながら生活しているんだ。だから2拠点というよりも、ポルトガルにいるときはベースがないよう感じの生活を送っているかな。結婚生活って考えるとちょっと特殊なのかもしれないけど、長い人生を考えると、今は自分のやりたいことを優先するのもいいかなって考えているよ。
 

KarenIwadare_YukaFujimori

 
岩垂: そういうアクティブなところは、本当に由香さんらしいです!
 
藤森: かれんもすごくアクティブだと思うよ。 かれんのことを知らない人は見た目も華奢でかわいらしいイメージかもしれないけど、実際にはムチャぶりにも応えてくれるタイプで、ツルむとめちゃくちゃ面白いんだよね(笑)
 
岩垂: 由香さんは昔からいつも私のことを「面白い」って言ってくれますよね。 アクティブに見えるかもしれないですけど、実際は家でゲームするのも大好きです。でも最近はテレビ番組の仕事で、八ヶ岳を登山したり、極寒のテント泊、狩猟について行ったり……。いろいろアクティブなこともやっています(笑)


ライフスタイルに寄り添って変化し、進化する“CUTE” な生き方

──本企画のテーマである “CUTE”とは、ふたりにとってどんなことだと思いますか?
 
岩垂: 由香さんみたいに世界を股にかけてシーンの第一線で活動していくことは、技術の高さもメンタルの強さも持っているからこそできること。きっと将来は子育てとかもあるかもしれないけど、一生現役というか……ずっと滑り続けているイメージなんですよね。それこそ、“CUTE”というテーマに合うような生き方だと思います。最近の私は、現役時代よりも滑る時間が減ってアフタースノーを楽しむ、みたいな感じになっていますから……。
 
藤森: それがいいんだよ! 今はもちろんライダーとしてやらないといけないことがあるけど、私も将来はそういうスノーボードの楽しみ方をしたい。とりあえず2、3本滑って「楽しいね」って言ってビールとか飲んで、午後の計画を立てる。そして、夜は女子たちと一緒に温泉街! だって、それってすごい楽しいことじゃん。そういうスノーボードライフを過ごしてこなかったから、憧れでもあるよ。
 
岩垂: 女子旅とかって楽しいですよね! スノーボードは一般の人にとっては旅行という感覚の方が大きいですもんね。
 
藤森: そうなんだよね。ただ寒いところへ行くだけでもなく、ガツガツ練習するだけでもない。そこに仲間がいて、滑る以外のコンテンツもたくさんある。そのすべてがスノーボードだから楽しいんだよね。
 
岩垂: スノーボードをライフスタイルにしている人たちは、“行動力が普通じゃない”って感じることが多いです。旅の計画を立てて、長時間運転して雪山へ行くなんて女性は、スノーボーダーじゃないとなかなかいないですから。知り合いに50代でスノーボードにハマり、ニセコに移住をした女性がいるんですが、「まだまだ上手くなりたい!」と言って滑っていて、本当にキラキラしているんです。そんな風にいつまでもアクティブに行動している女性こそ、今回のテーマでもある “CUTE” なライフスタイルを送っていると感じますね。
 

KarenIwadare

 
藤森: 確かに行動力はすごいよね。スノーボードをやっていると、自分で決めて、それを実行に移している女性と出会うことが多い。
 
岩垂: (コロナ禍以前に) 都内で飲んでいるときに「明日何するの?」ってスノーボーダーではない友達に聞かれて「白馬へ行く」って答えると、「信じられない」って言われていました(笑)。私にとっては特別なことではないんですけどね。これから先の人生もいろいろな環境の変化があると思うけど、自分が楽しむための時間は変わらずに大事にしていきたいです。
 
藤森: そうだね。私は“こういうスノーボードがしたい”とか、自分の軸で“こういうことをやりたい”っていう考えを持っている人がすごく好き。歳を重ねていくなかでも、周りに流されないでしっかりと自分らしさを持っている女性でありたいと思う。

 
藤森由香(ふじもり・ゆか)
出身地: 長野県
生年月日: 1986年6月11日
スポンサー: BURTON、ほか
 
岩垂かれん ( いわだれ・かれん)
出身地: 東京都
生年月日: 1993年12月24日
スポンサー: ROXY、ほか

text: Rie Watanabe
photos: Nobuhiro Fukami

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