BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

720までしか回してはいけない。THE SNOW LEAGUEが新ルールで問い直す“スタイル”の価値

2026.08.16

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“回しすぎたら勝てない”──高難度化を続けてきた競技スノーボードにおいて、そんな逆説的なルールが導入される。

ショーン・ホワイトが主宰するハーフパイプのプロリーグ「THE SNOW LEAGUE」では、9月18日(金)、19日(土)にニュージーランド・カードローナで初の「WORLD CHALLENGE」を開催する。そのセミファイナルで、1エアにつき720を超える回転技を制限する新ルールが採用されるのだ。

THE SNOW LEAGUEが公式Instagramで発表した内容によると、720を超えて回転したトリックは転倒扱いとして採点される。つまり、900や1080、1260、1440といった高回転トリックは使えない。

競技スノーボードは長年、より高く、より難しく、より多く回る方向へ進化してきた。その世界最高峰の舞台で、なぜ今、あえて「高回転スピン禁止」をルールにするのか。

今回、その新ルールが採用されるWORLD CHALLENGEは、THE SNOW LEAGUEとして初となるチーム形式の特別イベントだ。North America(北米)、Europe(欧州)、Asia-Pacific(アジア太平洋)、Challengers(チャレンジャー)という4チームに分かれ、それぞれ男女のスノーボーダー&フリースキーヤーの4名、合計16名が出場する。

日本からは、本記事のトップ画像を飾っている山田琉聖と清水さらがチームChallengersのスノーボード代表として参戦。通常のTHE SNOW LEAGUEにおける個人ランキングとは切り離された形で、ライダー個々の結果をチームポイントに換算し、初代WORLD CHALLENGE王者を決める。

この新たな地域対抗戦についてはBACKSIDEでも6月に紹介している(記事はこちら)が、今回発表された競技フォーマットを見ると、単なるチーム戦以上の意味を持つ大会になりそうだ。

まず注目したいのは、前述した「720 SPIN CAP」である。公式発表では、その目的を「よりクリエイティブなランとトリック選択を促すため」と明確に説明している。いわゆる“SPIN-TO-WIN(勝つために回転数を増やして高得点を狙うスタイルのこと)”と呼ばれる問題がある。

回転数が増えれば増えるほど難易度は当然高くなる。競技として、より難しいことに挑戦したライダーを高く評価するのは自然な流れだろう。

しかし現在、トップライダーたちが繰り出すトリックは1620やそれ以上という領域にまで到達している。スノーボードに精通していない観客からすれば、何回転しているのかを肉眼で瞬時に判別することは決して簡単ではない。

さらに、回転数が増えれば増えるほど、ライダーそれぞれの個性をライディングに投影する難易度も高くなっていく。

今大会にチームNorth Americaの一員として出場するブルック・ドントは、8月14日に米「SNOWBOARD」誌が公開したインタビューで、この720制限について興味深い考えを明かしている。

「1440とかになると、自分自身のスタイルを出すのは難しい。だから720まで戻すのはすごくクールだと思う。それぞれが持っている本来のハーフパイプスタイルや高さを見せられるから」

高回転トリックでは、複雑な回転を成立させること自体に大きな技術と集中力が求められる。その中でグラブをどう見せるのか、身体をどう動かすのか、空中でどれだけ余裕を生み出すのか。そうした“魅せる”要素を加えていく難易度も当然高くなる。

そこで回転数を制限することで、新しくもあり、古きよきフリースタイル競技の価値を改めて引き出そうという試みに映る。高さ、グラブ、ポーク、トリックの選択、回転方向、ラインどり、ストレートエアやアーリーウープなどを含め、「どう滑るのか」という部分がこれまで以上に問われることになるだろう。

言い換えれば、ライダーの“スタイル”が裸になる。

しかし、これは高難度化著しい、現代の競技スノーボードを否定するものではない。今回のルールで面白いのが、720制限はセミファイナルだけに適用されるという点だ。ファイナルでは、その制限が解除される。

THE SNOW LEAGUEは公式発表で、セミファイナルを720上限による“CREATIVE”なラウンドと位置づけ、その先のファイナルでは“FULL PROGRESSION”へと開放すると説明している。セミファイナルでは、回転数という武器を一度封じることでクリエイティビティやスタイルを競わせる。そして、勝ち上がったライダーたちはファイナルで、その制約から解放され、世界最高峰の高難度トリックを含めた“進化”を存分に表現する。

つまり、この新ルールは「スタイルか、進化か」という二者択一ではないのかもしれない。その両方を、ひとつの大会の中で明確に見せるための試みとも捉えられる。

さらにWORLD CHALLENGEでは、競技の見せ方そのものを変える新たな仕掛けが用意されている。ひとつが「ONE-HIT BATTLE」だ。

通常のヒートは3本勝負で行われるが、勝負が3本目までもつれた場合、その最終ランはフルランではなく、両者が1トリックずつを繰り出す一発勝負へと変わる。昨シーズン、戸塚優斗と琉聖が繰り広げた戦いを引き合いに出し、「彼らの本から1ページ借りる」とSNSで表現している。

前出のブルックもSNOWBOARD誌のインタビューでワンヒットバトルについて、できるだけスピードをつけて一発にすべてを賭けられることに面白さを感じている、と話している。

そして、もうひとつが「TEAMWORK CHALLENGE」だ。本戦前にトレブルコーンで各チームがひとつの映像クリップを制作。全員による投票でベストクリップを決め、勝ったチームにはセミファイナルで戦う相手を選ぶ権利が与えられる。コンテスト本番のシードを、タイムやポイントではなく、自分たちが作った“映像”で決めるということだ。非常にスノーボーダーらしい発想ではないだろうか。

4地域によるチーム戦。720までのスピン制限。一発勝負のONE-HIT BATTLE。そして、映像表現によって対戦カードを決めるTEAMWORK CHALLENGE。これらの特別ルールはいずれも、今回ニュージーランドで行われるWORLD CHALLENGE限定で採用される。

9月のカードローナで初開催となるWORLD CHALLENGEは、勝敗だけでなく、競技スノーボードにおける“スタイル”と“進化”、そしてその見せ方の未来を見届ける大会になりそうだ。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
photo: THE SNOW LEAGUE

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