BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

ミラノ・コルティナ五輪銀メダリスト・長谷川帝勝が見据える4年後。「今回が奇跡で最後かもしれない」と語った理由

2026.06.09

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ミラノ・コルティナ五輪で、日本のスノーボード界は歴史的な結果を残した。男子ビッグエアでは木村葵来が金メダル、木俣椋真が銀メダル、女子ビッグエアでは村瀬心椛が金メダル。男子スロープスタイルでは長谷川帝勝が銀メダル、女子スロープスタイルでは深田茉莉が金メダル、村瀬心椛が銅メダルを獲得し、日本勢の圧倒的な強さを世界に示した。
 
その中心にいた帝勝が、意外な言葉を口にしたという。
 
「こんなに日本人がメダルを獲れるのは今回が奇跡。最初で最後だ」
 
そう明かしてくれたのは、米カリフォルニア州マンモスマウンテンを拠点にする元プロスノーボーダー、上田ユキエだった。帝勝はマンモスでトレーニングしていた時期、彼女の家にホームステイしていた。
 
この言葉は悲観論ではない。むしろ、日本の競技スノーボーディングがなぜ世界トップレベルに到達したのかを理解しているからこその危機感なのだろう。
 
2000年代以降、日本の競技シーンは世界に先駆けてアプローチに人工芝を用い、ランディングに傾斜のついたエアバッグ施設を導入した。失敗のリスクを最小限に抑えながら、着地まで高難度トリックを体得できる環境は、当時としては革新的だった。その恩恵を幼少期から受けてきた世代が、現在の日本代表の中心を担っている。
 
いっぽうで、海外でそうした環境が一般化したのは近年のことだ。今回の五輪世代に限って言えば、日本人ライダーたちは子供の頃からジャンプ練習施設で技術を磨いてきたが、多くの海外ライダーたちはそうではなかった。
 
だからこそ、帝勝はこうも語ったという。
 
「(ビッグエアでは)アジア人以外には負ける気がしなかった」
 
実際、ミラノ・コルティナ五輪のビッグエア表彰台はアジア勢が独占した。日本や中国を中心としたアジア勢は、幼少期から高難度トリックを習得できる環境を共有し、その優位性を結果として証明したのである。
 
しかし、その優位性は永遠ではない。ユキエはかつて、長野五輪出場を目指していたライダーだ。当時の北米や欧州のライダーたちとの実力差を肌で感じてきたからこそ、彼女の見立ては厳しい。
 
4年後のオリンピックでは、日本人ライダーたちと同じように幼少期からエアバッグで育った海外ライダーたちが登場してくるはずだ。かつて、日本人が到底追いつけないと感じていた北米や欧州の身体能力や才能を持つライダーたちが、日本と同じ環境で育ってくるのである。
 
では、そのとき日本は何で勝負するのか。身体能力か。才能か。練習量か。コーチングか。
 
日本の競技スノーボーディングは、環境整備という面で世界をリードしてきた。その先行者利益が現在の強さにつながったことは間違いない。
 
だが、世界が同じスタートラインに立ったとき、本当に差を生むものは何なのか。
 
帝勝の言葉は、日本の黄金期を祝福するものではない。世界が同じ環境を手に入れたとき、日本の強さは何によって証明されるのか。
 
その問いは、4年後のオリンピックに向けてすでに始まっている。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

 
※画像はイメージです

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