BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

スノーボードが音楽とともにあった、あの時代を振り返る。オジー・オズボーンの逝去に寄せて

2025.07.23

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1996年にSTANDARD FILMSからリリースされた『TB5』。当時のスノーボーダーたちが熱狂し、VHSテープが擦り切れるほど観返したであろう伝説の一本だ。なかでも脳裏に焼きついて離れないシーンとして語り継がれているのが、ノア・サラスネックによるアラスカ・バルディーズでのファーストディセントである。「SUPER SPINES」と名づけられた常軌を逸するロケーションで、彼はテクニックというよりむしろ、直感を信じて狂気の沙汰で滑り下りているように見えた。あれから四半世紀が経ったが、今観ても決して色あせていない。

このビデオパートに流れていたのが、メタルの帝王、オジー・オズボーンの『Over the Mountain』だった。鋭く切り込むギターリフ、疾走感のあるドラム、そしてオジー特有のあの声。映像と完全にシンクロして、ノアのライディングを永遠の記憶に変えていた。

そのノアは2017年4月、47歳の若さでこの世を去った。そして、今年2025年7月22日、オジーも逝った。76歳だった。死因は明かされていないが、2020年にパーキンソン病と診断されていたことが公表されている。

オジーは音楽史において確固たる地位を築いているが、スノーボーダーにとっての彼は、ただのロックレジェンドではなかった。『TB5』でのノアの滑りとともに、あの音が僕らの精神を貫いた。その時代、スノーボードムービーにおける“音”は、ただのBGMではなく、滑りを形づくる重要なファクターだった。

STANDARD FILMSの選曲のなかでも、オジーは象徴的な存在だ。今のようにショート動画が主流となった時代では、長尺のパートを音楽とともに“観る”という文化が薄れつつある。しかし、あの4分29秒──『TB5』の15:40〜20:09に刻まれたノアとTexことマイク・ダヴェンポート、ヴィクトリア・ジェラスのパートには、スノーボーディングと音楽が同義だった時代の空気が詰まっている。

時間が許すのであれば、50分近くに渡る本編全体を観てみてほしい。オジーの訃報をキッカケに、音楽が滑りに与える意味を、あらためて感じることができるはずだ。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

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