BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

「滑って」「書いて」「伝えて」──雪の上にいる時間が、僕にとってのリアル。「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL Vol.2」

2025.05.04

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本連載「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL」は、編集者でありスノーボーダーでもある僕(編集長)が、24-25シーズンを通じて感じたことを綴る全4回のコラム。滑り続ける意味、伝えるという仕事、仲間とのつながり──そして、人生そのものとしてのスノーボーディングについて。

 
1月から2月にかけて、いわゆる“トップシーズン”が本格化した。僕にとっては、もっとも多忙でありながら、もっとも充実する時期でもある。
 
地方創生事業への挑戦として秋田の某村まで往復1,500km超の旅、来シーズンに向けたスノーボードブランドの展示会、読者コミュニティ「BACKSIDE CREW」とともに極上パウダーを堪能した光ヶ原キャットツアー。福井・スキージャム勝山では藤森由香ファミリーの取材があり、その直後、2月に入ると新潟・妙高杉ノ原で「BACKSIDE SESSION」。さらに、富山・立山山麓で行われた「極楽バンクドスラローム」に顔を出し、北海道の星野リゾート トマムやルスツリゾートへも足を運んだ。ファビアン・ローラーをゲストに招いたBACKSIDE SESSIONを長野・栂池高原で開催するなど、全国津々浦々、雪を求めて移動する日々が続いた。
 
その間、ほぼ毎週末にワールドカップのライブ解説が入っていたので、羽田空港からホテルへ直行するような週末も多かった。日中は滑り、夜や飛行機での移動時間などに写真のセレクトや記事の執筆。1日に複数のリゾートをハシゴしての取材もあれば、ホテルのデスクで早朝や夜中に原稿を書く日もある。
 
身体的には当然ハードだ。でも、それでも雪の上にいたい。そう思えるのは、「滑ること」が“仕事”を超えて、“生きる感覚”に近いからだ。
 
たとえ左ヒザが痛くても──。

 
長年抱える左ヒザの爆弾は、この冬もくすぶり続けていた。荒れたバーンや着地の衝撃で、内部から引っかかるような感覚がある。13年前に粉砕骨折した箇所が関係していることは実感しながらも、この時点では病院に行っていなかった。
 
でも、滑れるなら滑る。強さやキレが昔より落ちていたとしても、それでも滑り続けたい。
 
編集者としての自分、ジャーナリストとしての自分、そして“誰でもない”ただのスノーボーダーとしての自分。そのすべてが、雪の上にいることで統合されていく。取材移動中に滑ることも、ライダーたちと笑いながらターンを刻むことも、僕にとってはすべて「最高の時間」だ。
 
スノーボード業界以外の人と会うと、たまに聞かれることがある。「なんでそんなに滑るんですか?」と。
いい歳したおっさんだし、ヒザを痛めているわけだから。
 
でも、答えは単純だ。滑りたいから。雪の上にいたいから。ただ、それだけ。
 
きっとこれから先もずっと、そう答え続けるんだと思う。
 
つづく

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
riding photo: Kenta Nakajima

 
【次回予告】亡き“父”と“友”へ。滑ることでしか伝えられない想いがある。「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL Vol.3」
 
【前回記事】滑る理由を、またひとつ思い出した──32回目の冬の入り口で。「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL Vol.1」

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