COLUMN
アラフィフなのに飛んで回してコスるフリースタイルなイケオジたち。MID LIFE CRISIS『CRISIS MODE』
2024.12.03
70年代に雪上でマニューバーを描きたいという想いから誕生したスノーボードは、バックカントリーでしか滑ることが許されなかったスノーサーフィンの時代を経て、ハーフパイプやアルペン競技が誕生。二刀流ライダーとしてコンテスト界の頂点に君臨した伝説のスノーボーダー、クレイグ・ケリーがバックカントリーに足を踏み入れようとしていた頃、80年代後半から90年代初頭にかけてスケートボーダーたちが雪上でトリックを生み出し、現在の礎となるフリースタイルスノーボーディングが確立した。
その時代を切り拓いた重要人物たちは現在、50歳前後に差しかかっている。筆者はそんなライダーたちのビデオテープを擦り切れるほど観て今日に至るのだが、彼らは今もなお、飛んで、回して、コスって、滑りまくっているのだ。本記事で紹介するムービーは、40代以上のスノーボーダーにとっては胸アツすぎる中身。弊ウェブマガジンでもおなじみ、51歳になったブレイズ・ローゼンタールと48歳のチャド・オッターストロムが中心のクルー「MID LIFE CRISIS」が放つ5作目『CRISIS MODE』をご覧いただきたい。
そのブレイズがオープニングを飾っており、現役時代の20歳だった1993年の映像から31年もの年月が一気にワープするシーンは、当時を知る者にとって感慨深い気持ちになること請け合いである。その滑りはいまだ健在だ。チャドはかつてのFORUMチームの一員であり、奇想天外なライディングスタイルが魅力のゼブ・パウエルを発掘した男でもあるわけだが、バックカントリーからパークに至るまで年齢を感じさせないフリースタイルな滑りには、ただただ驚かされる。
以外にも、北京五輪ハーフパイプで平野歩夢の低すぎる点数に吠えた解説者として日本でも知られるトット・リチャーズ(54)や、福井・スキージャム勝山のツリーランコースを開拓したレジェンドライダー、デイブ・ダウニングの妻であり90年代のハーフパイプ女王、シャノン・ダン・ダウニング(52)もハーフパイプのシーンで登場する。こうしたベテランたちに入り混じり、片山來夢が同じくハーフパイプでワンカットだけ出演しているのも、北米での彼の存在感を示している。
筆者も含め、こうした時代にスノーボードを始めたベテランたちは、ライディングスタイルやトリックの進化とともにスノーボード人生を歩んできた。プロダクトの進化も相まり、その結果として前例はなかったが、50代に突入しても自由に雪上を駆けることができのだ。本作は、若手スノーボーダーたちにもぜひ観てもらいたい。近年はパークではなくパウダーライディングに注力するという若手も少なくないが、フリースタイルスノーボーディングは長きに渡って楽しめるということを肝に銘じておいてほしい。
こういうお題は書き出すと止まらなくなるので、このあたりで失礼。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)