COLUMN
18歳の二刀流トップコンペティターが誕生する背景にあったスノーボードの本質
2023.08.16
現在のコンペティションシーンにおいて、ハーフパイプとスロープスタイル&ビッグエアは完全にセパレートされている。オリンピックを頂点としたワールドカップ(以下、W杯)を統括するFIS(国際スキー・スノーボード連盟)に加盟している各国のチーム編成もそれぞれ異なるため、練習内容やフィジカルトレーニングも完全に異なるわけだ。
しかし昨シーズン、W杯ビッグエア優勝、同スロープスタイル2位、世界選手権ハーフパイプでは、金メダルに値するCABトリプルコーク1440を含むルーティンを決めるも無念の2位だった、末恐ろしい二刀流ライダーが誕生した。オーストラリアの18歳、ヴァレンティノ・ギュゼリである。
ハーフパイプではトリプルコークがないと勝てない時代に突入し、ビッグエアではクイントコーク(縦5回・横6回を同時に回す技)が実在する今。種目を限ることはもちろん、365日かけてパークや練習施設で勝つために必要なトリックに磨きをかけなければならない時代かと思いきや、22-23シーズンに突入する目前の夏、ちょうど1年前のオーストラリアの冬にヴァレンティノは、バックカントリーやサイドカントリーで撮影に明け暮れていたのだ。
天賦の才があったからこそ競技と並行して撮影活動することができるのか。はたまた、競技にとらわれることなくあらゆるフィールドで自己表現することで前人未到の二刀流ライダーが誕生したのか。
2018年からFIS大会に参戦しているヴァレンティノは、13歳当時からフリースタイル全種目に出場していたが、ハーフパイプで頭角を現すも、スロープスタイル&ビッグエアではW杯に出場するまでには至らなかった。20-21シーズンからスロープスタイルでもW杯に出場することが許されるようになり昨シーズン、ようやく開花したことからも、間違いなく後者であることがわかる。
こうしたバックグラウンドを見ていくことで、フリースタイルスノーボーディングの奥深さが理解できるはずだ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)