COLUMN
X GAMESスーパーパイプ新女王誕生。韓国のチェ・カオンはクロエ・キムを超えるか
2023.02.03
米コロラド州アスペンで行われた「X GAMES」スーパーパイプ女子で彗星のごとく現れ新女王に輝いた、韓国のチェ・カオン。14歳3ヶ月での快挙達成は、絶対女王として君臨しているクロエ・キム(アメリカ)の14歳9ヶ月という記録を塗り替えたのだ。男子では平野歩夢が14歳2ヶ月でシルバーメダルを獲得したのが最年少メダリストの記録になることからも、チェのすごさを理解できるだろう。
降雪による影響で減速が強いられる中、チェは全ラン転倒することなくルーティンを完遂。しかも、4ランともに異なるルーティンを披露した。以下に全ランの内容を記したので参照してほしい。
1本目: スイッチBS720メロン→BS540ウェドル→FS720インディ→CAB720ステイルフィッシュ
2本目: スイッチBS540インディ→CAB720ウェドル→FS900メロン→BS900ステイルフィッシュ→FSメロン
3本目: スイッチBS900インディ→CAB720トラックドライバー→FS900メロン→BS900
4本目: スイッチBS720メロン→BS540ウェドル→FS1080メロン→CAB720トラックドライバー
※ノーマルスタンス時のグラブ名で表記
3本目のラストヒットで放ったBS900だけグラブが入らずに頭を抱えていたが、それ以外はすべてミスなくグラブを成功させていた。14歳とは信じられないほどの完成度を誇る滑りだ。3本目のランでトップに躍り出て優勝を飾ったが、彼女のベストポイントは4本目のランだった。頭ひとつ抜き出た格好で勝ちとった金メダルということになる。その結果、WINTER X GAMES史上初のメダルを韓国にもたらした。
4方向のうちCAB以外はすべて900以上の大技を持っていること、スピードが出しづらい状況でもFS1080を完璧に操れること、同じ回転方向のスピントリックでもグラブのバリエーションが複数あること、これらが特筆すべき点だろうか。コンディションが芳しくない状況でこれだけの滑りができるということは、パイプ内でのパンピングやテイクオフといった動作の精度が非常に高いということだ。
絶対女王クロエはアメリカ国籍ではあるが、両親は韓国人。「Forbes」の記事によると、1982年にアメリカに移住したクロエの父は、チェがマンモスマウンテンのチームで練習するために渡米するのを手伝ったそうだ。X GAMESでの優勝をチェがInstagramにポストすると、クロエは拍手とハートの絵文字でコメントしている。親子そろってチェの活躍を後押ししているようだ。
バック・トゥ・バック(連続)1080を唯一成功させた絶対女王の背中が、チェには見えているのかもしれない。FIS(国際スキー・スノーボード連盟)が主催するワールドカップには15歳以上でないと出場できないため、チェが参戦できるのはいわゆるプロ大会のみ。次の大会は2月24日(金)にコロラド州カッパーマウンテンで開幕する「DEW TOUR」だ。
松本遥奈は今大会で競技からは引退となるが、今シーズンは休養としている北京五輪銅メダリストの冨田せな、その妹のるき、小野光希らにとって、絶対女王が不在の中、新たなる大きな壁が長きに渡り、日本人の前にそびえ立つことになる。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)