
COLUMN
16歳 柿本優空の夏休み「サマーキャンプの聖地で起こしたミラクル」Vol.1
2022.07.31
90年代初頭から20年近くに渡り、プロスノーボーダーはもちろん、上達を志すアマチュアライダーも含め、夏になると米オレゴン州マウントフッドに多くの日本人スノーボーダーたちが集結していた。世界各国から感度の高いスノーボーダーが一堂に会するため、ライディングスタイルやトリックはもちろん、ファッションなどの流行発信基地と化している。
それは今も昔も変わらないのだが、日本人ライダーの数は減少の一途をたどった。サマーキャンプの日本代理店がなくなってしまったことが最大の要因だが、日本のオフトレ施設が充実していることも、その理由のひとつだろう。コストをかけて残雪や氷河を求めなくても、人工芝でトレーニングができる。それはそれで、スノーボーダーにとって恵まれた環境であることは間違いない。
しかし、暖かくリラックスした雰囲気の中、世界レベルを肌で感じながらフリースタイルマインドあふれるグローバルなライダーたちとのセッションを通じて得られる価値は、かけがえのないものである。そうした環境に初めて身を投じたのは、16歳ながら技術と表現力を併せ持つ期待のルーキー・柿本優空(ゆうあ)。彼が見て、感じてきたものを綴ってもらった。
いつもスマートフォンの画面を通して見ていた大好きなライダーたちが目の前に
2022年夏。僕はアメリカの地に降り立った。場所はマウントフッド。サマーキャンプの聖地である。
滞在期間は3週間。前半の2週間はRIDER WORKS(スノーボード育成プログラム)帯同のもとでライディングし、最後の1週間は僕が小さい頃から好きでたまらないブランド、RIDE SNOWBOARDS(ライド スノーボード)とのチームキャンプが控えていた。
山に上がってパークに行くと、まず最初に驚かされたのはスノーボーダーたちの攻め方だ。名が知られているライダーはもちろん、それ以外のスノーボーダーも含めて、みなが自由に自分の限界をプッシュしていることがわかるようなトリックをチョイスして、ライディングを楽しんでいた。
また、ファッションにも各人の個性や感性がにじみ出ているのだ。暑い日には半袖半パンでサングラスをかけて滑っている、まるでサーファーのような人もいて、まさに自由の国・アメリカ。そして、フリースタイルカルチャーが詰まっている場所なのだと感じた。
しかし、驚きはそれだけではない。駐車場まで滑って下りると、そこには日本ではありえない景色が広がっていた。さきほどまで滑っていたスノーボーダーたちみんなが駐車場にイスを置いて、大勢の仲間たちとトークセッションをしているのだ。あんな光景、日本では見たことがない。
2週目に入ると、心身ともにアメリカの生活に慣れてきた。そうしたタイミングで、僕にとって大きな出会いがあった。RIDEのプロチームのひとりであり、MONSTER ENERGYのライダーでもあるジル・パーキンスとセッションすることができたのだ。ほかにも、同じチームであるマイク・ボグスやダニマルズがいて、もはや、その空間は僕にとって天国だった。

爆発力のあるオーリーから繰り出されたBS540でオレゴンの青空をバックに空中遊泳
photo: Peter Herrick
僕は英語がまったく話せないが、そんなことは関係なく、一目散にライダーたちのもとに駆け寄っていき「一緒に滑ってください」、そう頼んだ。みなは優しい笑顔で了承してくれた。ここが、僕のアメリカ生活での転機だったように感じている。
アメリカ生活の最終週、RIDEチームと合流した。与えられた期間は4日間。初日からチームライダーは勢揃いで、いつもスマートフォンの画面を通して見ていた大好きなライダーたちが自分の目の前にいる。その状況に、僕は興奮を抑えられなかった。
毎日ライダーたちとセッションし、誰かがイカしているトリックをメイクしたら全員で喜びを分かち合う。そんなスノーボードが本当に楽しかった。自分の心を解放して楽しみ、喜び、そして本気になれる。そんな毎日が続いた。
宿泊先もライダーたちと同じところに変更してもらい、言葉の壁を少なからず感じつつも、みんながジェスチャーをたくさん使ってくれたり、ゆっくりと英語を話してくれたおかげで、ストレスは一切なく心の底から楽しめたキャンプとなった。
最終日になると、この時間が終わってほしくないという、なんとも言えない感情が込み上げてきた。みなに「I will be back next year! Promice!!」とつたない英語で伝え、夢のようなサマーキャンプ生活は幕を閉じたのだった。
Vol.2に続く
柿本優空(かきもと・ゆうあ)
生年月日: 2005年9月5日
出身地: 奈良県五條市
スポンサー: RIDE SNOWBOARDS、ほか
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