BACKSIDE (バックサイド)

BACKSIDE (バックサイド)

https://backside.jp/column-127/
22993

COLUMN

最先端フリースタイルの極み。BEYOND MEDALS『RELAPSE』を観るべき理由

2021.12.13

  • facebook
  • twitter
  • google

シーンのメインストリームではあるが一般的には知られていない、バックカントリーやストリートを舞台として滑りで自己表現を追究するスノーボード。対して、オリンピックシーズンということで一般的にも目にする機会が増えている、ハーフパイプやスロープスタイル、ビッグエアで順位を決するスノーボード。どちらもフリースタイルマインドを有するスノーボーダーたちが没頭している世界であることに違いはない。
 
しかし、オリンピックの正式種目として7回目を数えようとしているスノーボード競技は、いまなお加速度的にトリックのレベルは上がり続けている。よって、冒頭で述べた双方を両立できるスノーボーダーは激減の一途をたどった。そうした中、コンテストを通じて磨き上げられた卓越した滑走技術を、バックカントリーやストリートなど無限大のフィールドに落とし込んだらどうなるのか──それらを実践しているクルーがいる。2014年のソチ五輪出場を目論み活動していた生粋のスノーボーダーたち、ケビン・バックストロムとトア・ランドストロムが立ち上げたBEYOND MEDALSだ。彼らから発信されるムービーも6作目を迎え、今作『RELAPSE』はこれまでの作品以上にフリースタイルの深みが増している。
 
まさしく、先述した表現と競技の世界を両立させているレネ・リンネカンガスと、バックカントリーとストリートそれぞれの舞台で高次元のパフォーマンスを発揮するルードヴィグ・ビルトフトというふたりの“二刀流ライダー”が加わったことが、その理由のひとつ。ストリートで撮影活動に勤しむ傍ら、スロープスタイル&ビッグエアにコンペティターとして参戦しているレネだが、本作ではトッププロでも魅せられる者が限られるほど総合滑走力が問われる天然クォーターパイプのみのフッテージで構成されている。その上手さとスタイルは圧巻だ。
 
また、北欧ライダーをフィーチャーした映像作品『SCANDALNAVIANS』で脚光を浴びたルードヴィグの滑りは衝撃的である。バックカントリーとストリート、どちらかのジャンルに集中しないと近代フリースタイルのレベルでフッテージを残すことは困難とされているわけだが、トリを飾った7分あまりに渡るビデオパートには次世代のフリースタイルスノーボーディングが映し出されている、そう言っても言い過ぎではないだろう。
 
元来はバックカントリーとストリート、はたまたバックカントリーとハーフパイプなど、複数のロケーションで撮影されたフッテージがひとりのビデオパートに収められていたのだが、フリースタイラーたちの飽くなき探究心がそれぞれのジャンルを劇的に進化させたことで、先述したようにそれぞれの専門家が増えた。そうした現況に身を置きながら、本質的な価値観を現代のレベルで体現しているルードヴィグの滑りは、絶対にお見逃しのないように。
 
さらに特筆すべきは、本作のエディットも担っているケビンの滑りだ。個人的にもっとも刺激的なビデオパートである。なぜならアーサー・ロンゴ同様に、
バックカントリーやストリートではなく、一般スノーボーダーが滑るフィールドでハイパフォーマンスを繰り出しているからにほからならない。異次元な空間での話ではなく、誰しもが滑ることが許されているゲレンデでのアクションがこれほどまでのスケールとなれば、観ている者の感情が揺さぶられることは間違いない。
 
オープニングを飾っているセッベ・デ・バックのスタイリシュなライディングや、トアの優雅なパウダーライディング、高回転スピンを牽引してきたウルリク・バダーシャーの滑りなど、語り尽くせないほど内容が濃い本作品。ケビンとトア、ルードヴィグはスウェーデン、セッべはベルギー、ウルリクはノルウェー、レネはフィンランドと、北欧勢を中心とした欧州のフリースタイルスノーボーディングが超絶クールだ。
 
タイトルに綴ったように、“最先端フリースタイルの極み”を観て、そして感じとってほしい。

RECOMMENDED POSTS