BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

裏山と街中と競技の最前線で魅せる世界屈指の男。レネ・リンネカンガス『SUGARED』

2021.11.23

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スノーボードはInstagramだけでは語れない。そうしたメッセージが込められた映像作品『SUGARED』はバックカントリーとストリートの2部構成になっている。主役はフィンランドのレネ・リンネカンガス。平昌五輪スロープスタイル&ビッグエアに出場した22歳だ。
 
バックカントリーとストリートでの撮影活動を両立することができるライダー自体が少ないわけだが、そのうえでコンテストの第一線で活躍している。今シーズンの開幕戦、スイス・クールで行われたW杯ビッグエアで2位、昨シーズンのX GAMESスロープスタイルでは3位で表彰台を射止めるなど、トップランカーとして君臨。バックカントリー、ストリート、コンテストの最前線で魅せることができる稀有なライダーなのだ。
 
90年代は競技からパーク、さらにはバックカントリーやストリートに至るまで、スノーボードのすべてをひとりのライダーがビデオパートに収めることが求められていたからこそ、“遊びの幅が広い”フリースタイルスノーボーディングが主流だった。しかし、加速度的に各ジャンルのレベルが高まっていくと、それぞれのカテゴリーのスペシャリストが誕生するように。現在進行形のライディングレベルを踏まえるとそれは必然だったのかもしれないが、観る側もジャンルを絞ってスノーボードムービーを選択しなければならなくなった。雪やロケーションのコンディションに合わせてあらゆるライディングスタイルを楽しむことがフリースタイルスノーボーディング最大の魅力であるとすれば、それは半減する格好でアウトプットされていたのかもしれない。
 
競技のシーンは収録されていないが、先述したコンテストでの活躍の裏では、バックカントリーで巨大キッカーやクリフ、クォーターパイプなどあらゆる地形を攻略して宙を舞い、ストリートでも複合的にトリックを絡めながら縦横無尽に駆け巡る。『SUGARED』に描かれているレネの“ザ・スノーボーダー”な滑りに興奮を覚えてほしい。これこそがフリースタイルスノーボーディングの極みなのだ。
 
「世界中を旅しているうちに、いつでも戻れる場所であるホームの重要性に気づいたんだ。でも、オレにとってのホームは世界のどこにもない場所。ホームとは、すべての騒動を放り出す方法を学んだ場所であり、オレの創造性の基礎となっていることに気づいたのさ。オレにとってのスノーボードは、不可解な方法で自分自身を表現する方法。スノーボードには不文律や行動規範がたくさんあるけど、オレはそれらを少しずつ捨てていこうとしている。そして、それらを手放すことで、自分自身の創造性が開花することを理解したんだ。スノーボードはすでにオレに多くのものを与えてくれているから、スノーボードを通して学んだことに一生感謝することができるのさ」
 
このようにオープニングで語られているレネの言葉に耳を傾ければ、ここまで綴ってきたことが説得力を増すのではないか。レネ・リンネカンガス。彼のように伝統を重んじながらアップデートを繰り返す素晴らしきライダーたちに、これからも注目していただきたい。

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