COLUMN
プロが認めた日本一の大学サークル「SHUFFLE」を知る
2021.08.22
メンバーの平均年間滑走日数は30日以上、オフシーズンはジャンプ施設や屋内ゲレンデで滑走力に磨きをかけ、毎年20分超えのシーズンエディットを制作すること8年。これは雪国を拠点に活動しているチームの足跡ではない。関西の大学スノーボードサークル「SHUFFLE」の活動内容である。
今年6月、プロスノーボーダーら有識者が審査員となり、各部門にエントリーされた映像作品をランキングするオンライン大会「COWDAY AWARD 2021」が開催された。そのひとつとして大学サークル部門が用意されており、彼らの雄姿が表現された映像作品が日本一に輝いた。
この短編作品はシーズンエディット動画より選りすぐられたフッテージで制作。岐阜・奥美濃エリア、新潟・湯沢エリア、長野・白馬エリアを舞台に繰り広げられたパークライディングで構成されている。彼らの住む関西圏から高速道路を利用して片道約3時間の距離にある奥美濃エリアへは足しげく“通い”、1週間のうち3日ほど車中泊で過ごし、滑る。湯沢エリア、白馬エリアではそれぞれのゲレンデにコモって、滑る。
そんな学生ならではのフットワークの軽さを活かした彼らのライディングには、一切の妥協が見られない。雪がある限り、メイクできるまで挑戦し続ける。雪がある限り、各々がスタイルを追求し続ける。雪がある限り、最高の画角を探して撮り続ける。シーズンの最後までこだわりぬいて残した、魂が込められたフッテージたちで構成された作品なのである。
大学生とは思えないその魅せ方へのこだわりもさることながら、同じアイテムでも遊び方は様々に、それぞれのスノーボーダーが自分らしくトリックを繰り出すその様子。また、カットの合間に挟まれるメイクした仲間への「いいね!」の声。これらはお互いのスタイルを尊敬し、刺激し、高め合うという初代からのマインドが、10年たった今も受け継がれていることを意味するのだ。
だからこそSHUFFLEには、ジャンプ、ジブ、グラウンドトリック、フリーライドなどの垣根が存在しない。それぞれの好みに従って、スノーボードをただ楽しむことに集中している。加えて、スケートボードやサーフィンに精を出すメンバーもいれば、フィルマーチームに所属し先述のシーズンエディット制作のために奮走するメンバーもいる。そうした先輩たちに習うことで、自ずとクリエイティビティが磨かれていく。
さらに、コロナ禍前に盛んだった冬季の合宿では、好きなライダーやスタイル、ムービーの話に花が咲くことでメンバー全員の好みが”SHUFFLE”され、よりジャンルにとらわれる必要性がなくなっていく。大学サークルでありながらも、フリースタイルスノーボーディングのすべてを楽しむという文化がそこに築かれていると言えるのではないだろうか。
スノーボードの楽しみ方は多様化の一途をたどっている。オフシーズン練習施設の充実によって一年中自分のトリックを磨くことができる環境があり、ギアの技術進歩も目覚ましい。フリースタイルスノーボーディングのすべてを楽しむ地盤は、私たち全員の足元にあるはずだ。「雪上では自由」とスノーボードを愛する人々は口を揃えてこう言うが、果たして本当に、みなが自由に雪上を楽しめているか?
悩みぬいて買ったそのスノーボードには、思っているよりたくさんの遊び方があるのだ。
text: Yuto Nishimura